学院祭前日
昼下がり――。
学院の中庭では、翌日に迫った学院祭の準備が進んでいた。
カナは精霊科の仲間たちと一緒に、噴水周りで”光の庭”の飾り付けをしていた。
「なあ、この辺り、もう少し花びらを散らしたほうがいいんじゃないか?」
「ごめーん! このランタン、ちょっと持ってくれる?」
みんなの明るい声に包まれ、カナも自然と笑みを浮かべながら動く。
小さな精霊たちがひらひらと舞い、飾り付けられたアーチやランタンに、柔らかな光を落とす。
「わぁ……なんだかおとぎ話みたい……すごくきれいね」
カナが呟くと、ミリアが隣で笑う。
「本番はもっとすごいよ! 夜になったら、光で庭が輝くんだから!」
セオも笑顔を見せる。
「カナが倒れたって聞いて、ほんと心配したけど……。
こうして笑ってる顔が見られて、よかった」
カナは二人に向かって照れくさそうに笑うと言った。
「ありがとう……明日、みんなで楽しもうね」
「うんっ!」
「……ああ、そうだね」
噴水の水面に揺らぐ光は、明日の学院祭を静かに祝福するようにきらめいていた。
*
放課後。
午後の柔らかな光が礼拝堂のステンドグラスを透かし、
カナは今日も祈りの訓練に臨んでいた。
セレスタンとレイナルトが立ち会い、祈りの言葉が静かに響く。
まずは導きの祈り。
精霊たちがふわりと現れ、淡い光を纏って応える。
しかし――
「……癒しの祈りを、やってみます」
カナは決意を込めて手を組み、祈りを紡いだ。
けれど光は揺らぐだけで、形にはならない。
「浄化の祈りも……」
同じように試みるが、結果は変わらなかった。
俯いたカナの肩がわずかに震える。
「……どうしても、できません……」
セレスタンは近づき、そっとカナの肩に手を乗せた。
「カナさん、君はもう十分に役割を果たしています。
導きの祈りが、どれほど尊く、どれほど人々を照らす力を持っているか――。
君の祈りは、必ず人々に届きます」
カナは顔を上げ、涙ぐんだ瞳でセレスタンを見つめる。
セレスタンの声は静かで、けれど力強かった。
「祝祷者とは、道を示し、希望を灯す者です。
君がすでにできているのは、その一番大切なことなのです」
カナの胸に、じんわりと温かな光が満ちていく。
彼女はそっと涙を拭うと微笑む。
「……はい、学院長先生……。
私、導きの祈りをしっかり捧げます」
レイナルトが横で安心したように頷く。
そのまま訓練は、導きの祈りを穏やかに繰り返した。




