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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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セレスタンの助言

セレスタンは執務机の脇に歩み寄り、カナの目線に合わせて少し腰を落とした。

その表情は穏やかで、どこか父親のような温かさがあった。


「カナさん。昨日の君の祈りは、確かに精霊に届いていました。

たとえ目に見える形で応えが返ってこなくても、

君の心は、もう十分に祝祷者(しゅくとうしゃ)として歩み始めていますよ」


「……でも、私は……祈りを続けられませんでした……」


カナは俯き、小さな声で答える。


セレスタンは首を横に振る。


「良いのです。

祝祷者にとって、祈りは精霊に届くだけではなく、

己の心と体を守りながら続けることが大切です。

焦る必要はない。むしろ、焦ってはならない」


ゆっくりとした口調で、セレスタンは続ける。


「祝祷者の祈りは、精霊だけでなく、

その場にいる人々の心にも届く。

昨日、君が祈っていたとき……君の願いは、確かにこの学院全体を柔らかく包んでいました」


カナは驚いて顔を上げた。

セレスタンは微笑む。


「祝祷者は、決して一人で立つものではありません。

君の周りには、守る者がいて、君を支える者がいる。

そのことを、どうか忘れないでください」


「……はい。わかりました……」





セレスタンはゆっくりと立ち上がると、机の上から予定表を手に取った。


「では、次の祈りの訓練についてですが……。

昨日の疲労を考えると、しばらくは休養を優先しましょう。

数日後、体が完全に回復した頃に、改めて行います」


「はい……ご配慮ありがとうございます」


カナが頷くと、レイナルトが横から口を開く。


「私も同席させてもらおう。

もし何かあっても、今度は絶対に見落とさない」


セレスタンは柔らかく笑う。


「……それは心強いですね。

カナさん、これからも殿下の支えを頼りにしなさい。

祝祷者は、祈りと同じくらい、共に歩む仲間を必要とするものです」


レイナルトが隣で頷く。


(えっ? 殿下が、仲間、って意味……?)


カナは内心で飛び上がりつつ、慌ててレイナルトに向かい、頭を下げる。


「……はい。

殿下……ご心配、ありがとうございます」


「……それでは今日はもう休みなさい。

学院祭の準備は、もし参加できるようでしたら、通常どおりでよいでしょう」


カナは頷いた。


「はい。ありがとうございます」





「ではカナ様、お部屋に戻られますか?」


マーサが一歩前に出て、穏やかに声をかける。


「……はい」


カナは頷いて立ち上がると、

セレスタンとレイナルトにもう一度深く頭を下げた。


「ご心配をおかけしました……本当にありがとうございました」




マーサと共に、レイナルトも執務室を出る。

レイナルトが少しだけ歩調を緩め、隣を歩くカナを気遣うように視線を落とす。


「……もう無理はしないって、ちゃんと約束できるか?」


カナは恥ずかしそうに頷く。


「……はい。お約束します」


その言葉に、レイナルトの表情がほんのわずか和らいだ。

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