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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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回復の朝

翌朝――。

カナはゆっくりと瞼を開いた。

体のだるさは消え、頭の重さもほとんどない。

窓から差し込む朝の光が、どこか優しく感じられた。


「……そうだ……わたし……」


ベッドからゆっくりと起き上がると、

隣の椅子に座っていたマーサが立ち上がり、柔らかな笑みを浮かべる。


「カナ様、お目覚めですね。

ご体調はいかがですか?」


「はい、もうすっかり大丈夫です。

ご迷惑をおかけしました……」


カナは深く頭を下げる。

マーサは首を振って優しく微笑む。


「いいえ、どうかお気になさらず。

今、何か食べられそうなものをお持ちしますね」


「……ありがとうございます」


カナが小さく頭を下げたその時、扉が軽くノックされた。

マーサが扉を開ける。


「……マーサさん……。カナは、大丈夫ですか?」


そこには、ミリアとサラが心配そうに立っていた。

マーサはにっこり笑うと、ふたりを招き入れる。


「カナ! 倒れたって聞いて、心配で心配で……!」


駆け寄るミリアに、マーサが軽い咳払いをする。


「あっ……と。すみません。

ごめん、カナ。大丈夫?

昨日倒れたって聞いて……心配で来ちゃった」


「きっと無茶をしたんだな……。

今は顔色も良さそうで安心したよ」


サラも眉を下げ、優しく声をかけてくれる。


「二人とも、来てくれてありがとう。

心配かけてごめんね。もう大丈夫だから……」


カナは微笑み、安心させるように答えた。


「……よかったぁ」


見舞いを終えて二人が帰り、軽い食事をとった後、

カナはそっとマーサに向き直った。


「マーサさん……。

学院長先生に、昨日のお礼とお詫びをしたいのですが……。

お伺いしてもよいでしょうか?」


マーサは一瞬考え、優しく答える。


「……そうですね。

午前中はまだお休みになったほうがよいでしょう。

午後になりましたら、私がお連れいたしますね」


「……はい、ありがとうございます。

よろしくお願いいたします」


カナは素直に頷き、小さく答えた。





午後――。

マーサに付き添われ、カナは学院長セレスタンの部屋へと向かっていた。


昨日、礼拝堂で倒れ、迷惑をかけたことを謝らなければならない。

歩く足取りはまだ少し心許ないが、気持ちは固まっていた。


扉の前でマーサがカナを振り返って微笑むと、軽くノックをする。

カナは深呼吸をした。


「カナ様をお連れしました」


「……お入りください」


中から声が響き、二人は執務室へ入った。

セレスタンは机から顔を上げ、カナの姿を見て柔らかな笑みを浮かべる。


「回復されたのですね。

もう動けるようになりましたか……無理はしていませんね?」


カナは深々と頭を下げる。


「昨日は……礼拝堂で突然倒れてしまい、

学院長先生だけでなく……殿下にもご迷惑をおかけしました。

本当に申し訳ありません」


セレスタンは椅子から立ち上がる。


「迷惑などと思ってはいませんよ。君が無事で何よりです」


その声はとても穏やかだった。



その時、ノックと共に扉が開き、やや早足のレイナルトが入ってきた。

王子としての礼節を崩さないまでも、その瞳には、隠しきれない焦りがにじんでいる。


「学院長、失礼します。……カナ!」


彼の視線がカナをとらえると、その表情がわずかに緩み、安堵の息が漏れた。


「もう歩けるまで回復したと聞いて、急いで来たんだ。

無事で、本当に良かった」


カナは慌てて立ち上がり、深く頭を下げる。


「レイナルト殿下……昨日は私のために……。

本当にありがとうございました。

そして、ご心配をおかけして申し訳ありません」


レイナルトは首を横に振った。


「謝ることじゃない。

君がこうして元気な姿を見せてくれて、安心したよ。

……本当に、良かった」



マーサが横で静かに微笑み、

セレスタンはレイナルトの焦燥ぶりに若干苦笑しながらも、二人を見ながら頷いた。


「こうして話せるようになったのだから、

あとはゆっくり元気を取り戻せばいい。

君が倒れたのは、祈りに全力で向き合った証です。

誰も責めたりはしませんよ」


カナは胸の奥がじんと温かくなり、改めて二人に向かって、深く頭を下げた。

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