表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/669

花冠――レイナルトの想い

学院長室を出た二人は、長い廊下を並んで歩いていた。

高い窓から差し込む陽光が、白い大理石の床を金色に染める。


先ほどまでの緊張がまだ残るカナは、小さく息をつくと、

隣から聞こえる落ち着いた声に振り向いた。


「カナ。君の好きな花を聞いておきたい。

作るには時間がかかる――今のうちに選んでおこう」


レイナルトの穏やかな声が廊下に響く。

その瞳には、微かに柔らかい光が宿っていた。


カナはただ嬉しそうに頷いた。


「はい! ……って、お花、自分で選んでいいんですか?」


「……ああ。君に似合うものを、一緒に探そう」


その一言に、抑えているはずの想いがわずかににじむ。





中庭に出ると、柔らかな風が花々を揺らし、精霊たちが光の粒となって舞っていた。

さまざまな花が静かに咲き誇り、近づくと甘やかな香りが漂ってくる。


「すごい……どれもきれいで迷っちゃいます」


花壇の前で立ち止まったカナが瞳を輝かせると、

レイナルトはその横顔をしばらく見つめ、そっと視線を逸らした。


「焦らなくていい。君が笑っていられる花を選べばいい」


「笑っていられる花……?」


「……ああ」


カナは首を傾げながらも、夢中で花を選び始める。

その姿を、レイナルトは静かに、しかし誰よりも優しい眼差しで見守っていた。


花壇の前でしゃがみ込んだカナは、どの花がいいかと迷っていた。

ふと――横に立つレイナルトの肩あたりに、柔らかな光がふわりと寄り添っているのが見えた。


「……え?」


思わず目を瞬かせる。


金色に輝く小さな光の精霊が、まるで彼を護るようにそばにいて、今、確かにカナの方を振り向いた。

精霊はにこっと笑うと、羽をひらめかせ、中庭の一角に咲く、淡い桃色の花の上へと舞い降りる。


そして小さな手を振って、まるで「これを」と教えるように花びらを指した。


「……この花……」


カナはそっと立ち上がり、花の前に歩み寄る。

レイナルトが不思議そうに彼女を見る。


「どうした?」


「えっと……なんとなく、この花がいい気がして……」


言葉を濁しながらも、精霊の示す花を指差した。


それは、白に近い淡い桃色で、中心がほんのり金色の花だった。

光が差すと、花びらが透けて輝く。


「エルダーローズか……いい選択だな」


レイナルトは、少し驚いたように目を細め、淡い微笑みを浮かべて花を見つめる。


「実は、私も同じ花を考えていた。

……不思議だな。まるで光が、この花を照らして導いているように見える」


カナは、胸の奥でどきりとした。


(やっぱり……精霊が示した花を、殿下も……)


カナにはまだ見えていない想いを、光の精霊だけがそっと伝えているようだった。


ふたりは知らない。

エルダーローズの花言葉は<絆>。

そして――

<秘めたる想い>と、<守りたい存在>――だということを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ