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精霊たちと話せるので、転生先で聖女になりました  作者: 高梨美奈子


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自室にて

そして夕食もミリアとサラと一緒に済ませ、カナが自室に戻ったところで、控えめなノックの音が響いた。


「カナ様、失礼いたします。入ってもよろしいでしょうか?」


「あ、はい。どうぞ」


扉を開けると、管理者のマーサが立っていた。


「明日からの授業に向けて、こちらをお持ちいたしました」


その手には、上質な革装丁のノートと銀細工の羽根ペンを抱えている。

マーサは柔らかな微笑みを浮かべながら、続けた。


「明日の午前中は、精霊科のオリエンテーションから始まります。

学院の規則や、授業の流れを学んでいただきますが、特別に難しいことはございません。

安心して臨んでくださいませ。

……午後には、初めての感応練習も予定されております」


カナは、差し出されたノートとペンを両手で受け取ると、静かに頷いた。


「……ありがとうございます。少し緊張していますけど、頑張ります」


「そのお気持ちだけで十分でございます。どうか今夜はゆっくりとお休みください」


深く礼をして、マーサは静やかに部屋を後にした。





部屋に再び静けさが戻る。

カナは机に積まれた教科書を一冊手に取り、そっとページを開いた。


曲線的で流麗な文字が並んでいる。

見たこともないはずなのに――不思議と意味が頭に浮かび、読み進めることができた。


「……読めるんだ……」


小さく呟き、窓に映る自分の姿を見ながら苦笑する。


「……まあ、話せてるし……文字が読めても、おかしくないのかも」


再び教科書に目を落とす。

『精霊との初歩的感応』『属性と契約』『聖印術入門』『精霊史』――


ページをめくるごとに現れるのは、どこまでも異世界らしい幻想的な科目ばかり。

数学や英語の授業が当たり前だった前世の記憶が、ふとよぎる。


「……本当に、全然違う世界の学校なんだなぁ……。

でも、ちょっと面白そうかも」


心の奥で少しだけ高揚感が芽生える。

未知の世界で、これからどんな学びが待っているのだろう――そんな期待が胸を満たしていく。


ペンを手に取り、見慣れない単語を書き写していく。

不思議なことに、手の動きも自然で、インクが紙を滑る感触が心地よい。


窓の外では、学園の中庭に夕陽が差し込み、精霊樹の枝葉が金色に染まっていた。


カナはそっとペンを置き、深呼吸を一つ。

明日からの新しい一日を思い描きながら、静かにページを閉じた。

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