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第2話 メーディが見た違和感

 メーディ・ロージー。彼女は学園時代からの友人であるオルとルーカとパーティを組み、冒険者稼業で生計を立てていた。

 「人助けに理由はいらねぇ」と言ってしまう、いい意味で考えなしのオルと、困っている人には無差別で手を差し伸べるルーカ。どちらもメーディにとって大切な仲間だった。

 冒険を始めてあっという間に三年が経った。はじめは死と隣り合わせの危険な職だと思い、やりたくなかった。だが、知らない間にオルやルーカに感化されたメーディは、本来やろうとしていた町での売り込みではなく、森での魔物討伐をすることになった。

 今となってはこの選択は大正解だったとメーディは感じている。本でも見なかったような世界を知り、魔物を殺せば近隣の人間にひどく感謝される。そして、心を許せる親友と共に過ごせる。

「……どうも、わたくしの名前はルナと申します」

 ルナと名乗る少女がパーティに加入してきた。理由は分からないが、妙にルーカになついていた。逆にメーディやオルとは一切会話をせず、ただ同じ空間にいるだけの他人のような状態だった。

 だからといって嫌というわけではなかった。ルナとメーディは馬が合わなかった、それだけのことであり、特に気にすることも、メーディから歩み寄る必要もないと考えていた。

 メーディがルナに不信感を持ったのは、彼女が加入してから二週間が経った時だった。遠出し過ぎた一行は野宿をすることになった。メーディは調理、オルは魔物の解体、ルーカは寝床の確保。そしてルナが薪の確保を担当することとなった。

 オルが食材を持ってくるまで時間があったため、メーディはなんとなく付近を見て回った。その時、彼女の目にルナの姿が映った。薪割りをしている途中で、斧を持ち上げるのに手こずっている様子だった。

「ルナ、大丈夫かい、手伝おうか?」

「……ッ!あー、大丈夫です。とっとと料理をお作りになられたら?」

「食材が来てない。遠慮せずに仲間を頼りなさい」

 メーディの指が斧の持ち手に触れた瞬間、頬に痛みが走った。

「ッ……?」

 最初は痛みの正体に気づかなかった。だが視線を落とすことで、その理由を理解する。

「……なんのつもり?」

 ルナがメーディに向かって斧を振り下ろしていた。メーディは無意識のうちに危機を察知し一歩下がっていたようで、頬にかすり傷を作る程度で済んだ。下がっていなければ、頭が真っ二つになっていただろう。

「……私は断ったよな、聞こえなかったか。随分と腐った耳を持っているようだな」

 ルナはメーディの耳を引き千切りそうな勢いで掴み、ドスの効いた声を響かせた。

「大丈夫だと、そう言った。遠慮だなんだの言って、恩の押し売りとは偽善者のクソ野郎らしい行動だよ」

 そう言い終えたルナはハッとした表情でメーディから離れ、地面に突き刺さった斧を持ち上げようとする仕草を見せた。

 その直後、ガサガサと草木が揺れる音が響く。音の方向へ目を向けると、ルーカがやってくるのが見えた。

「どういう状況だ?…メーディ!?顔怪我しているぞ!」

 怪訝そうに二人を見ていたルーカが声を上げると、ルナが猫なで声で困り顔を作り、話し始める。

「ルーカ様、斧が想像以上に重くてですね。バランスを崩してしまったのです」

「はぁ?お前いつも斧を…」

 ルナは斧を地面から数ミリだけ浮かせ、腕をプルプルと震わせる。…さっきは片手で振りかぶっていたにもかかわらず。

「…ルーカ、ルナを手伝ってやりな」

 きっとルーカ相手なら危害を加えることはないだろう。メーディはそう判断し、その場を離れた。あまり近づき過ぎれば酷い目に遭う。

 この時はまだ、ルナが嫉妬深すぎる、恋に盲目な女だとしか思っていなかった。深く踏み入れなければ問題ないだろうと考えていた。実際、それ以降メーディが被害を受けることはなかったため、安心していた。

 だがその考えは、オルのある発言によって覆されることとなる。

 ルーカもルナも寝静まったであろう深夜、メーディはオルに呼び出された。

「…こんな夜中に呼んですまねぇな」

「まったくよ。で、なんの用?」

 普段ならここで軽い雑談を挟むところだが、今回はすぐに本題へと入った。オルの表情は、これまで見たことがないほど真剣だった。

「…俺は近い未来で、ルーカとお前でヤツを追放する」

「…!理由を聞いても?」

 疑問だらけだった。なぜ追い出されるのか、なぜそれを事前に伝えるのか。

「お前はルナのことをどう思ってる?」

 メーディが情報の処理に戸惑っている中に、さらなる言葉を投げかける。

「…ルナ?まぁ、正直良い印象はないわ。そういえばルナの追放はないのね」

「あぁ、ルナは俺が殺すからな」

「へぇ、そう。…はぁ?」

 さらりと言ったため流しかけていたメーディは少し跳ね上がった。

「意味分かんねぇよな。だがアイツをこのまま生かしていると取り返しのつかないことになっちまう」

 オルは覚悟を決めたようにため息を吐きながら話を続ける。

「俺は人殺しのクズになるだろうな。んな姿を唯一の親友に見せるわけにはいかねぇ。特にルーカに事情を知られればきっと自分を責めるだろうよ」

 オルの言葉にメーディが何も言わずに立ち尽くしているとオルが悲しそうに笑った。

「んな顔すんな。お前ら二人で旅を続けりゃいい。もし牢の外に出れたら合流するからよ」

 メーディは聞きたいことでいっぱいだったが、オルの顔を見た瞬間言葉が詰まってしまった。

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