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第1話 ルーカが見た日常

  この世界には地球の常識では説明ができないことが沢山ある。魔物と呼ばれる化け物が人々の生活を脅かしている。

 そんな魔物がいる世界で人類は冒険者ギルドなるものを立ち上げた。冒険者は魔物の討伐や未開の地の踏査などで生計を立て、冒険者ギルドはそういった依頼の斡旋や魔物の素材などの買取を行っている。

 そしてルーカ・スードリッグはそんな世界の未踏を旅する冒険者の名前である。そんなルーカはある町の宿で目を覚ました。

「おはようございます、ルーカ様。おはようのチューをしますか?」

「しないよ」

 ベッドの上で寝ているルーカに抱き着いてくる少女がいた。名前はルナといい、元々三人パーティで活動していたルーカらのところに後から加入してくる形で冒険に同行することとなった少女だ。

 ルーカの五つ下で、魔物と戦っているとは思えないほど細く小さな体をしている。顔は小さいというのに目は大きく、まさに絶世の美少女と呼ぶに相応しい見た目をしている。

 ルナはルーカが体を起こすや否やギュッと背中に抱き着いてきた。ルナはルーカに好意を持ってくれている。それ自体はルーカも喜んでいる。ただ、正直ルーカは別にルナに対して親愛の念はあっても恋愛感情は微塵もない。どれだけ引きはがそうとしてもついて来ようとするのは困るが、これ以上乱暴にやるのは可哀そうに思い、あまりキツく言えないでいた。

「っとメシだな」

 ルーカはルナを連れて……というか背負ったまま部屋を出て宿屋の食堂へと向かう。

「わるいわるい。遅れてしまったよ」

「まったく、遅いよ」

 食堂にやってくると一人の女がルーカに向かってブンブンと手を振るのが見える。そしてその女の隣に座る男とも目が合う。

 ルーカと目が合った男の名前はオル・ドッフォリアン。ガッチリとした体で、キズだらけの顔からはかなりの威圧感がある。見た目は強面だが、仲間のことは絶対に見捨てない男だ。

 オルの隣で手を振る女の名前はメーディ・ロージー。スタイルのいいポニーテールの女性で、バカをするオルとルーカを止めてくれて、なんやかんやで付き合ってくれる。

「よぉ!ルーカ。それと……ルナもな」

「おはよ、二人とも」

「ああ、おはよう」

 ルーカは二人と挨拶を交わす。しかしルナは無言のままでいた。ルナが加入してから三ヵ月が経とうとしているが、ルナと二人の間にはいまだ溝があるように見える。

「今日はどこまで行くか?」

「そうだね、今日は……」

 二人が今日の予定について話し始めた。ルーカとルナは席について目の前にある朝食に手をつける。

「ルーカ様。はい、あーん」

 ルナが千切ったパンをルーカの口の前に持ってくる。

「はぁ、一人で食えるって」

 どれだけ止めるように言ってもルナは食事のたびにトライしてくる。

「ふふっ、恥ずかしがらないでください」

「別に恥ずかしさで拒否してるわけじゃない」

 ルーカはそう言いながら目線を前に向ける。目の前に座るオルと再度目が合う……というより睨まれていた。朝っぱらからこんなことをしているからだろう。

 朝食を終えたルーカたちはそのまま町の近くの森で適当に魔物を討伐することになった。

「……ふぅ。今日はこんくらいで終わるよ」

 日も傾いてきた頃、メーディが魔物からはぎ取った皮をバッグに詰め込みながらそう宣言した。

「やっと終わりましたね、ルーカ様。さ、手を繋いで帰りましょう」

 ルナが魔物の血でついた手を服で拭いながらルーカに差し出す。

 これくらいならいいかとルーカはその手を繋いだ。

「フフッ、嬉しいです。やっと、わたくしたちは結ばれたのですね」

「あまりそう重く考えないでくれ。仲間としてだ」

 いつもは拒否して駄々をこねられていたが、拒否しないほうが面倒になりそうだとルーカは感じていた。

「今夜のディナーはどこに行きましょうか。二人きりで、綺麗な月の下で、愛の言葉を囁き合いましょう」

「ダメだ。なんであの二人をハブる前提なんだよ。夕飯はあいつらとも食うぞ」

「……ルーカ様は、仲間想いなんですから」

 ルナは頬を染めながら顔をギューッとルーカの腕に押しつける。

「はぁ、とにかく飯はみんなでだ。それでいいか?」

 その後もルナはかなり文句を言っていたが、最終的に四人で酒場に行くこととなった。

 ◇◇◇

 翌日の夜、またいつも通りの日常を送っていた中、ルーカはメーディとともに人気のない広場でオルに呼び出されてしまった。

「ワリィけどよ、お前らを追放させてもらうわ」

 唐突過ぎたその言葉にルーカは固まる。さっきのさっきまではそんな気配もなかった。

「…はぁ?俺とメーディを追放ってどういうことだ!?」

 ルーカがオルに詰め寄ろうとするが、オルに強く押し飛ばされてしまった。

「ハッキリ言ってお前ら二人と旅する気がなくなっただけだ」

「はぁ!?意味分かんねぇよ!ガキのころから三人でどこまでも旅するって約束しただろ!?」

 ルーカは興奮した様子でオルに掴みかかるが、隣で見ていたメーディが止めに入る。

「…ルーカ、オルにも事情があるのよ」

「ッ!なんでメーディはそんな冷静なんだ!?今日までの旅はそんなにちっぽけだったのかよ!?」

 追放を宣言されたには落ち着いているメーディに詰めかかったかと思えば、涙を浮かべながらオルに視線を向ける。

「なんでこんな唐突にあっさり旅が終わんだよ!?昨日まで、上手にやっていったじゃないか!」

 かすれそうなくらいの大声で叫ぶルーカに対してオルは静かに言い放った。

「そう思ってたのはてめぇだけだ」

 その瞬間、ルーカの目から光が消えた。スッと頭が冷えたルーカは俯きながらオルに背を向けて言った。

「いいよ。出て行ってやるよ」

 ルーカはそのまま足早にこの場を去っていった。

「…ルーカ」

 メーディはルーカとオルを交互に見ながらその背中を追いかけていった。

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