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婚約破棄されたら幸せを拾いました  作者: 夏つばき


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145 再会


(くそっ、くそっ、くそっ、なんで俺がこんな目に!!)


騎士団本部の廊下を、どかどかとわざと足音を立てながら歩く。

周りが驚いたように避けていくが、そんなことはどうでもいい。


どうも、ここ最近の俺はついていない。

いや、アンナとの婚約を破棄して以来、ずっとついていない。


アンナの結婚式が執り行われるやいなや、親父から勘当を言い渡された。

小心者の親父は、アンナが王弟を使って報復してくるに違いないと、怯えていたのだろう。


(絶対に、親父の頭は悪いよな)

俺がアンナと婚約を破棄したからこそ、アンナは王弟と結婚できたのだ。

感謝されることはあっても、復讐されるなんてあり得ない。


王弟は俺の披露宴で怒りを見せたが、結局のところ、アンナにいい格好をして見せたかっただけだ。


あの時はびびって思わぬ醜態を晒したが、よく考えればわかることだ。

現に、つい先ほどまでは騎士団で何事もなく勤務できていたし、ホランド家自体にも、何の咎もなかったのだ。

ヒューゴが法の裁きを受けたのは、自分が不正に手を染めたからだ。

王弟の不興を買ったせいなんかじゃない。


(・・・・・・でも、誤算だったよな)

まさか、長年子どもに恵まれなかったボビーのもとに、赤ん坊が生まれるとは思ってもみなかった。

ブレイクと名付けられたボビーの赤ん坊を見た途端、親父は迷いもなく爵位をボビーに譲った。


爵位を継ぐ望みは潰えたが、もらえる金にはまだ望みがあった。

俺の子どもさえ生まれれば、親父は家財を売り、せめて借金だけでも支払ってくれるものだと思っていた。

子どもが無事に育つ保証などない。

ブレイクの代わりとして、相応の金は出してくれるはずだと信じていた。


(けれど親父は、ハリソンをブレイクのスペアとしてさえ扱わなかったな)

ハリソンは、瞳こそホランド伯爵家の特徴である緑だったが、髪は見事なまでに赤毛だった。

ルナに似たであろう巻き毛を見て、親父は顔を顰めた。


『ヘンリーに、似ていないんだな』


ポツリと呟くと、親父はあっさり興味を失ったかのように、部屋から出て行こうとした。

ルナが震えながら、「赤ん坊は、亡くなった母そっくりだ」と必死に訴えたが、親父は一瞥もくれなかった。

気の弱いお袋は、一瞬だけ迷ったように俺を見たが、すぐに親父の後を追った。


『親父、ちょっと待てよ!』

『待つ必要はない。もうお前の子の顔は見た』

『他に何か言うことはないのかよ!?』

『儂の言うことを聞かずに、お前が自ら選んだ道だ。何も言う必要はあるまい』


ぺラム男爵家の血筋が色濃く出たことが、気に入らなかったのだろうか。

親父の機嫌を取ろうと、名前を親父からもらおうとまで話をしたが、それさえも拒否された。

祝い金と称して、薄っぺらい封筒を置いていっただけだった。


それでも、何度か顔を合わせれば情も湧くだろうと期待して、実家に連れて行った。

「俺の息子」を意味する名として「ハリソン」と名付け、血の繋がりを強く意識させた。

母だけは時々ハリソンを抱いてくれたが、親父がいるときは、容赦なく門前払いされる始末だった。

親父は、自分と同じ金髪碧眼だというだけの理由で、ブレイクばかりを溺愛した。


(くそっ、くそっ、くそっ)

何度も心の中で叫ぶ。

俺がこんな目に遭うのは、すべてアンナのせいだ。

アンナが王弟なんかと結婚しなければ、親父は俺を勘当しなかっただろう。

慰謝料のことだって、何とかしてくれたに違いない。


苛々しながら、支給された飴をポケットから取り出し、口に放り込む。

味わうこともせず、ガリガリとかみ砕くと、少しだけ心が落ち着いた。


(・・・・・・この飴だって、アンナへの忖度だよな)

今まで支給されていた煙草が、健康に良くないという理由で飴に替わったのは、何年前のことだっただろうか。

ふと気がつけば、騎士団のあちこちにサウスビー家由来の商品が目に入るようになっていた。


(王弟の妃となったアンナの周囲は、やけに潤ってるよな)

セオドアは王女に気に入られ、順調に出世の階段を上っているようだ。

オリバーは国費で留学させてもらい、帰国後は王立研究所で好きな研究に没頭して暮らしていると聞く。

領地は、どうやらやたら儲かっているらしい。

経営難に陥った貴族たちが、その手腕を参考にしようと列を成して教えを乞いにきているという。


アンナの周囲の者には、幸運が舞い込む。

きっとそれは、アンナを溺愛していると噂の王弟が手を回しているからだろう。


(・・・・・・俺も、アンナの側に行けばいいんじゃないか?)

アンナは、今や宰相になった王弟の妃だ。

権力も、金も使いたい放題だろう。

俺がちょっと頼めば、アンナに渡した慰謝料など、すぐに返してくれるに違いない。


親父からは、王弟の不興を買うから絶対にアンナに近寄るなと言われていたが、別に構わないだろう。

婚約を破棄してから、もう何年経っていると思っているのだ。


(そうだ!ついでに、カーターのこともチクってやれ!)

あることないこと、アンナに吹き込んでやろう。

そして、俺とカーターの首を挿げ替えてもらえばいい。

俺は、アンナの威光を背に、団長として権勢を振るうのだ。


自分の名案に胸を躍らせながら、王宮へと向かう。

騎士の制服のおかげで、途中で警護の者に呼び止められることもない。

明日になれば制服も返却を迫られるだろうから、今日が最後のチャンスだ。



(・・・・・・侍女どもが、きゃーきゃー騒いでるな)

アンナが通りかかったら声をかけようと、物陰から身を潜めていたところ、女たちの歓声が聞こえた。

黄色い歓声が上がる方へ視線を移すと、そこにいたのは、予想通りダニエルだった。

背が高く、ほっそりとしている身体の上に乗る顔は、いかにも貴公子と言ったもの優し気な顔だ。

まだ独身で、王家の信頼厚いアスター商会にいるあいつは、女たちの熱い視線を独り占めにしている。


(・・・見るだけで、腹が立つよな)

ダニエルは、笑顔の裏で俺をずっと馬鹿にしていたのだろう。

あいつの目の奥に滲む軽蔑に、最近になってようやく気づいた。

気づいていないと思っているかもしれないが、案外、人は無意識に本性を漏らすものだ。


だが、こいつを利用できるなら、こんなチャンスは逃せない。

アンナが通りかかるのをじっと待つより、あいつに頼んでアンナのところまで連れて行ってもらった方が早い。

サウスビー家と取引しているあいつは、アンナと仲がいい。

うまく頼めば、すぐにでもアンナに会わせてもらえるはずだ。


侍女たちがいなくなったのを確認して、親しげな顔を作りつつ、ダニエルに声をかけた。

これで話を進める足がかりはできたはずだ。


「よっ、ダニエル」


「・・・・・・ヘンリー?」

「ああ、そうだ。こんなとこで会うとは、奇遇だな」


怪訝そうに振り返ったダニエルは、俺の名前を確認すると、すぐに眉を顰めた。

次の瞬間には手を掴まれ、物陰に引き込まれていた。


「痛いって!おい、突然、何すんだよ!?」

「いや、何でお前がこんなとこにいるんだ?今は、勤務中じゃないのか?」

「俺がどこにいようが、いいじゃないか」

「ここは王宮でも私室に近い。お前が来るような場所ではないから、さっさと立ち去れ」


(お前は、王族の私室にも自由に出入りできるとでも言いたいのかよ!)

そういえば、アンナの元婚約者だからなのだろうか。

俺には、王宮への立ち入りがある仕事は一度も回ってこなかった。

これまで気にも留めていなかったが、もしかすると、巧妙に俺とアンナが出会わないよう仕組まれていたのかもしれない。


「固いこと言うなよ。アンナに話があって来ただけだ。なぁ、ダニエル、アンナに会えるように取り計らってもらえないか?」


ダニエルの瞳が、露骨な軽蔑を宿して、嫌そうに細められた。

いつもは柔らかい笑みを保っているくせに、どういう風の吹き回しだ。


だが、誰にでもいい顔をするこいつは、俺の頼みにも、きっと手を貸すはずだ。

下手に出て、頭を下げてやる。


「な、頼むよ」


「ヘンリー、何を言っているんだ?」

「えっ?だから、アンナと話がしたいんだよ」


「アンナ様、な。言葉に気をつけろ。いいか。昔のよしみで教えてやるが、アンナ様は王弟殿下の妃だ」

「そんなことは、わかってるよ」

「いいや、わかってないね。平騎士のお前が気軽に声をかけていい方じゃないんだ」

「だから、俺は親しいんだって!元婚約者だぞ!」


ダニエルは、まるで救いようのない存在を見るかのように俺を見た。

額に手を当て、ため息を漏らす。

さらに、出来の悪い子どもに諭すような口調で語りかけてきた。


「今の言葉、口が裂けても言うんじゃないぞ。お前はアンナ様を、自分勝手な理由で捨てたんだ。アンナ様が寛大で、殿下たちにとりなしてくださったからお前に咎めがないだけだからな。本来なら、王家から睨まれたお前なんて、王都にだって居場所はないんだ」


「はぁぁぁ?何を言ってるんだ?俺がアンナとの婚約を破棄したからこそ、あいつも王弟の妃になれたんだぞ。それこそ俺に感謝してほしいくらいだぜ」

「本気で言ってるのか?お前はアンナ様をぞんざいに扱ったんだ。自分の大切な人がそんな扱いを受けたと知ったら、どんな気持ちがするか、わかるだろう?」

「そんなの知るかよ。そんな気持ちになったことがないからな」

「ああ、そうか。じゃあ、最後の忠告だ。そのめでたい頭が、胴とくっついている内に帰れ」


呆れ切った様子で言い捨てると、ダニエルは俺に背を向けた。

まさかダニエルが断るなんて、まったく予想していなかった。


「おぉぉい、おい、おい、ちょっと待て!待てってば!」


今こいつに去られたら、俺はアンナに会うことができない。

慌てて肩を掴み、この場に押し留める。


だが、ダニエルの瞳は嫌そうに細められたままだ。

ホランド家の名が、ヒューゴの詐欺のせいで落ちたせいだろうか。

俺に気を遣わないその態度に、苛立ちと屈辱が同時に込み上げる。


「待てよ!お前は、俺に借りがあるはずだ!!その借りを、今ここで返せよ!!!」


「借り?」

「ああ、借りだ。俺がアンナを紹介してやったから、業績を伸ばせたんだろ?」


こいつは、アンナのしみったれた飴で、随分と儲けたはずだ。

しかも上層部に気に入られ、騎士団の物品も多く取り扱うようになったと聞く。

それも全て、こいつがアンナと知り合ったからに決まっている。


「悪いが、お前から紹介された覚えはない」


「なんでだよ。俺のおかげだろ?」

「お前が捨てたアンナ様の贈り物から、俺が価値を見出したんだ」

「それだって、俺がお前にやったからこそだ」

「勘違いするな。俺は貰ったんじゃない、買ったんだ。いや、正確には買わされた、だ。しかもお前は、紹介を頼んだ俺に、紹介状の一つすら書いてくれなかった」


(こいつ、昔のことをよくもここまで覚えていやがる)

きっと執念深いのだろう。

こいつは、誰もがその記憶力を頼るほど、些細なことまで覚えている男だった。

昔のことを再現しろと言ったら、一言一句正確に言えるだろう。


「だけど、俺がいたからこそ、だろ!」

「お前は、俺に『任せる』と言った。お前は、何ひとつ事業に関わっていないんだ。この業績は、俺とアンナ様、そしてご実家であるサウスビー家の努力だ。関係ないくせに、今さらしゃしゃり出てくるな」


「おいっ!さっきからこっちが下手に出てりゃ、いい気になりやがって!」


思わずダニエルの胸ぐらを掴むと、信じられない力であっさり引き剝がされた。

騎士団を辞めた今でも、まだ鍛えているのだろうか。

細くて貴公子みたいな見た目をしているくせに、ダニエルにこんな力があるとは思わなかった。


「いいか。アンナ様はアルバート殿下はもちろん、王家全員から信頼され、愛されている。しかも、それが異常なほどに、だ。私財を投じて教育に力を注ぎ、国民に寄り添うアンナ様は、国民からの人気もうなぎ上りだ。女の子が生まれれば、皆こぞってアンナ様にあやかり、『アンナ』と名付けるほどだ」


「はぁぁぁ?それがどうしたんだ!」

「だから、そんなアンナ様を勝手な理由で捨てたお前が、のこのこと顔を出してみろ。考えただけで、自分がどうなるか、わかるだろう?」


「何言ってんだよ!アンナは俺のことを慕っていたんだ!俺が会いに行けば、すぐ迎え入れるはずだ!」

「本当にめでたい頭だな。少しは物事を客観的に考えたらどうだ?どこをどうしたら、アンナ様がお前に好意を抱いていると思えるんだ?」

「お前に何がわかるんだよ!」


ダニエルなんかに、俺とアンナの絆がわかるわけがない。

俺は、3年間もアンナと婚約していたんだ。

アンナのことなら、誰よりもよくわかっている。

情に深いあいつは、人を見捨てることなどできない。


言い負かそうと口を開いた瞬間、背後から聞こえた、懐かしくも優しい声に、胸がざわついた。


「ダニエル様、どうなさったのですか?」


振り向けば、侍女を従えたアンナがいた。

婚約していた頃の芋臭い田舎娘の面影はなく、洗練され、見る者を惹きつける美しい女性になっていた。


侍女の横にいるのは、サウスビー家でアンナの世話をしていたクララだ。

昔とは違い、仕立ての良いドレスに身を包んでいるのが、どうにも癪に障る。

アンナのおかげで、あいつもうまい汁を吸っているに違いない。


ダニエルは、アンナの視線から俺を隠すように、素早く体を翻した。

アンナは俺の存在に気づくこともなく、花のように可憐な笑みをダニエルに向けた。

その笑顔に、胸がときめき、思わす見惚れる。


しかし、俺には向けられない笑みだと思うと、苛立ちが込み上げる。


(ダニエルには、あんな風に微笑むのかよ!)

俺の前では、こんな風に微笑むことはなかった。

微笑むアンナは、誰の目にも映える、美しい女に違いない。

こんなにも美しい女を捨てた、己の見る目のなさを、心底後悔する。


「ダニエル様が約束の時間に遅れることなんてないから、心配で捜しに来たんですよ」

「アンナ様のお手を煩わせてしまって誠に申し訳ありません。呼び止められてしまい、時間に遅れました」


(猫かぶりのダニエルめ)

この態度の差は、どうしたことだろう。

俺には見せなかった敬意を、アンナには本心から示している。

その光景に、苛立ちが止まらなかった。


「別に構いませんよ。では、お話がすんだら部屋に来てもらえますか?以前オリバーがお話していた商品のサンプルができたんですよ」

「オリバー様の提案はいずれも評判がいいから、楽しみですね。では、アンナ様のお部屋へ行きましょうか」

「あら、もういいのですか?」

「ええ。もう話は終わりましたので、大丈夫ですよ」


(おいっ、嘘だろう!?)

さりげなく部屋へと促されたアンナは、そのまま引き返そうとした。

アンナはダニエルのほうを向いたままで、クララだけが訝し気に俺の顔を見ていた。

まさかとは思うが、アンナはこの俺に気づいていないのだろうか。


「ちょっと待てよ!」


大声を出して呼び止めた俺を、アンナが不思議そうに振り返る。

クララは俺に気づいたのか、隣の侍女に小声で耳打ちをした。

侍女は静かに一礼し、その場をゆっくりと去った。


(・・・・・・へぇ、やるじゃねぇか)

王族の妃であるアンナが、元婚約者の俺と話すところを侍女に見られたくなかったのだろう。

俺がアンナに手を出そうとするたびに、さりげなく邪魔してきたクララだ。

場の雰囲気を読んで、侍女を追い出したのだろう。

関係者以外を追い出すとは、クララもなかなか気が利いている。

これでゆっくり話ができるというものだ。


「久しぶりだな」


俺が無理に笑顔を作ると、ダニエルは庇うようにアンナの前に出た。

アンナを庇うその姿に、横にいるクララは安堵の表情を見せた。


(・・・ちっ、カッコつけ野郎が)

昔もこうやって、こいつはアンナの前に立ちやがった。

こうしたさりげない仕草でアンナの心を掴み、今の地位を築いたに違いない。


ダニエルの後ろから俺の姿を見つけたアンナは、しばらく目を止めた後、ゆっくり頷いた。


「お久しぶりですね、ヘンリー様」


(くっそ、今になって気づいたって顔かよ。わざとらしい)

俺のことなど、もう忘れたとでも言いたいのだろうか。

確かにここ数年で多少太りはしたが、3年も婚約していた俺を見忘れることなど、あるわけがない。


だが、これで俺の望みも叶う。

昔と同じように、頭に手を遣り、照れたように笑って見せる。

こうすれば、アンナは仕方がないという笑みを浮かべ、大抵は俺の言うことを聞いてくれた。

アンナなんて、俺にかかればどうとでも操れる。


「実は、ちょっと頼みたいことがあるんだ」

「申し訳ありませんが、お断りいたします」


(・・・一瞬で断るのかよ!?)

ほんの少し眉を顰めたアンナは、俺の頼みをにべもなく断った。

昔と変わらぬ、落ち着いた丁寧な態度だったが、その瞳の奥に、確かな嫌悪が潜んでいるのがわかった。


「ちょっ、ちょっと待てよ」

「本日はダニエル様とお約束をしていて、時間がありませんの」

「はっ?」

「今後の予定も詰まっていますし、これで失礼しますね」

「えっ、何だよ?」

「ダニエル様、行きましょう」


(アンナは何を言ってるんだ!?)

言葉こそ丁寧だが、完全に拒絶されているのがわかる。

俺の言葉に耳を傾け、言うことをきいてくれるはずだったアンナは、俺の話をまったく聞かずに踵を返した。


「ま、待てよ!」

「聞こえませんでしたか?私は予定があります」


(・・・・・・今、アンナはなんて言ったんだ!?)

一瞬、言葉を失った。

こんなこと、あるわけがない。

アンナは俺に従い、俺に尽くすのが当たり前だった。

そしてそれは、今でもそうあるべきだ。


「ま、待てよ!お前の元婚約者だろ!」

「ヘンリー、諦めろ」

「おい!俺を誰だと思ってるんだ!?ホランド家のヘンリーだ!!!」


アンナは一度も俺を見ようとせず、背を向けた。

まるで俺など存在しなかったかのように、戸惑うクララを促し、前へと足を進めていく。

その背中に、言いようのない怒りと屈辱が沸き上がる。



お読みいただき、ありがとうございます。

ブクマ、評価をしていただき、ありがとうございました。


「ハリソン」」は、ハリー、もしくはヘンリーの息子(son)という意味を持つ姓・名前です。

姓として使われることが多いのですが、名前としても同じ意味で使える場合があるそうです。


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