↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狛犬に娶られました  作者: 九条 睦月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
20/78

契約嫁としての務め(4)

「更紗」

「わっ」


 いきなり鏡に朔が映り込み、更紗は飛び上がりそうになる。


「何をしている?」

「あの、ちょっと……ついでに洗面所周りを片付けようかなと……」


 更紗の戻りが遅いので、様子を見に来たのだろう。こういうところも、何気に過保護だ。

 更紗は苦しい言い訳をしつつ、朔を見上げる。

 本当に綺麗だと思う。男性に対して綺麗だなんて思ったのは、朔が初めてだ。

 朔はいつものように、淡々とした表情でこちらを見ている。

 こうして見つめ合うと、毎回必ず更紗の方が視線を逸らす。朔の強い視線に堪えられなくなるのだ。身体が熱くなり、鼓動が激しくなる。まるで、好きな人に対する反応のように。

 だが、それにもちゃんと理由がある。


「済んだか?」

「はい」

「それじゃ、もう休もう」

「……はい。え、ちょっと!」


 いきなり朔に抱き上げられた。突然のことでバタバタと暴れるが、朔はものともしない。そのまま目的地に向かって歩き出す。


「放っておくと、ずっと入ってこないだろう。こうした方が早い」

「だって……」


 目的地に到着し、更紗は柔らかなベッドの上に下ろされる。そして朔はというと、そのまま同じベッドに入ってくる。

 ──これのせいだ。


 朔の家に更紗の部屋は用意されていたが、そこはいわば更衣室という感じになっていた。こちらの家にいる時はリビングにいることがほとんどで、眠る時は寝室だ。そこに、ベッドは一つしかなかった。

 嫁になる契約はしたが、こんなことまで契約に入っていない。

 更紗はあまりに驚いて言葉も出ないほどだったが、よくよく話を聞いてみると、一緒に眠るだけということだった。夫婦の予行演習みたいなものだろうか。

 しかし、それだけでも大変なことだ。まだろくに知りもしない男性と一緒に眠る、眠れるわけがないと思った。だが、半ば無理やりベッドに入れられ、抱き枕のように朔に抱きしめられると、不思議と心が落ち着き、ぐっすりと眠り込んでしまったのだ。

 朝起きて、そんな自分に衝撃を受けた。どれだけ神経が図太いのかと少しショックだったが、月読命に選ばれた狛犬の嫁なのだから、当然だと言われた。

 だが、いくら当然だと言われても、少しの抵抗、そして大きな羞恥心があった。毎夜、どれだけ時間がかかるんだと呆れられるほど、更紗はベッド入ることができないでいた。それで、ついに朔も強硬手段に出たのだろう。


「おやすみ」

「……おやすみなさい」


 朔が更紗を抱きしめる。広い胸にすっぽりと収まると、その前まであれほど暴れていた心臓は途端におとなしくなる。それがいつも不思議でならない。

 更紗はそっと目を閉じる。意識をゆっくりと手放しながら、愚痴のように心の中で呟いた。

 ──こんなの、絆されるに決まってる。

 その後、すぐさま深い眠りへと落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。