【第4話:磔獄門ロードを回避せよ!「ほっかむり従姉妹作戦」】
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お咲ちゃんの神がかった医術で一命を取り留めた爺さま。
手のひらを返して大感動した爺さまの提案で、お咲ちゃんの本格的な「変装生活」が始まります!
「……お、おお? 胸のつかえが、綺麗さっぱり消えておる……!?」
たったいままで畳に這いつくばり、顔を紫色にして苦しんでいた隠居爺さまが、むくりと力強く起き上がった。
その目はらんらんと輝き、頬には血色がこれ以上ないほど健康的に戻っている。
爺さまは自分の胸を何度も叩き、確かめるように大きく息を吸い込んだ。
「爺さま! 本当に大丈夫なのかよ!?」
「ああ、次郎! 死ぬかと思ったが、身体が羽のように軽いわい!」
驚愕する兄弟の目の前で、爺さまはどさりと畳に膝をついた。
そして、太ももの上にまだ薬草の粉を少し残したお咲に向かって、涙をボロボロと流しながら地面に額を擦りつけたのだ。
「おお……おお、神様、仏様、菩薩様じゃ……! このお方は魔女などではない! ワシの命を救うために、海が遣わしてくださった本物の神様じゃ! 我が村にとって最高の恵みじゃ、拝めお前たち!」
「おいおい、ちょっと待てよ爺さま。さっきまで『海へ突き返せ』だの『磔獄門じゃ』だのって、大騒ぎしてたのは誰だよ」
太助が呆れ果てた顔で、極端に手のひらを返した最長老を見下ろす。
次郎も引きつった苦笑いを浮かべながら、爺さまの肩を揺さぶった。
「そうだぞ爺さま。このネエちゃんが凄い薬師だってことは分かったけどさ、異人だってことがお堅い庄屋さまや村の奴らにバレたら、俺たちが一発で御用になるのは変わらねえだろ?」
「う、うむ……。それは、確かにその通りじゃな……」
爺さまは涙を拭い、急に現実へ引き戻されたように白眉をひそめた。
異国人を匿うことは、幕府の掟に対する最大の反逆。
お咲の命を救う医術には心から感動したものの、冷酷な現実の壁が再び彼らの前に立ちはだかる。
「……とにかく、あの庄屋の鋭い目を完全に欺く方法を考えねえと、明日の朝には奉行所に訴人されるぞ。何かいい知恵はねえか」
太助の言葉を合図に、男三人はお咲を囲むようにして、狭い居間の真ん中で額を集めた。
床下の上で繰り広げられる、男たちの必死な密談。
お咲はすり鉢を持ったまま、その様子を不思議そうに青い瞳で見つめている。
時折、首を少し傾げて、豊かな髪をさらりと揺らす彼女のしぐさは、それだけで男たちの思考を狂わせるほどに魅力的だった。
「……そうだ! 隠せぬなら、染めてしまえばよい!」
「は? 何を言ってんだよ次郎。お前、頭まで潮水に浸かったか?」
「違うって兄ちゃん! このネエちゃんの最大の特徴は、その黄金の髪と青い目だろ? だったら、それが見えねえようにしちまえばいいんだよ!」
次郎は立ち上がると、台所の奥から村の漁師たちが使う、色褪せた大きな藍染めの手ぬぐいを持って帰ってきた。
「これで頭を深く包み込むんだ。外房の女たちがよくやる、日除けの『ほっかむり』さ。これなら、どんなに眩しい金髪だって、一本も見えなくできるだろ?」
「なるほど……! 一理あるな。よし、やってみろ!」
太助と次郎はお咲の前に膝をつき、手ぬぐいを広げた。
お咲は「な、何をするの?」と一瞬身を引いたが、太助が「すまねえ、ちょっとじっとしててくれ」と手を合わせるのを見て、観念したように大人しく頭を差し出した。
次郎の手によって、お咲の黄金の髪が、大きな手ぬぐいの中へと丁寧に、そして頑丈に包み込まれていく。
額から耳、うなじに至るまで、眩しい金色の輝きは完全に覆い隠された。
さらに太助が、お咲の着物の合わせをぐっと引っ張り、胸元がはだけないようにきっちりと整える。
「よし……。どうだ、爺さま。これなら遠目には、ただの不格好な田舎の娘に見えるだろ?」
「うむ、髪は見えん。だが、その吸い込まれそうな青い目はどうするんじゃ? 庄屋が見たら、一発で見破るぞ」
「そこは狂言で乗り切るんだよ」
太助はお咲の細い肩にそっと手を置き、彼女の青い目を真っ直ぐに見つめながら、大きな身振り手振りを交えて語りかけた。
「いいか、ネエちゃん。今日からおめえは、山奥の貧しい農村からやってきた、俺たちの従姉妹の『お咲』だ。いいな? お・さ・き、だぞ」
「オ、オサキ……?」
お咲は慣れない異国の言葉を、肉感的な唇を小さくすぼめて繰り返した。
その艶っぽい発音に、兄弟の胸はドクンと跳ね上がる。
「そうだ、お咲だ! で、村の奴らにはこう言い張る。『お咲は急な重病にかかっちまって、その驚きで髪が真っ白になっちまったんだ。おまけに病のせいで、目も変な色になって、言葉も一切喋れなくなっちまった』ってな! これなら、言葉が通じねえのも、目が青いのも全部説明がつく!」
「おおおっ! 太助、お前、普段は悪ガキのくせに、こういう時だけは悪知恵が働くなぁ!」
爺さまが感心したように膝を叩く。
お咲は、頭を深く包んだ「ほっかむり」の妙な感触に、何度も首を傾げていた。
着物が擦れる音に、少し照れくさそうな、それでいてどこか小悪魔的な表情を浮かべている。
しかし、彼女は言葉の意味を完全に理解できずとも、目の前にいる兄弟と爺さまが、自分をこの国から排除しようとしているのではなく、必死に守ろうとしてくれていることだけは、その熱い眼差しから十分に察していた。
「……分かったわ。私はお咲ね。あなたの従姉妹になってあげる」
お咲はクスッと微笑むと、手ぬぐいの上から自分の頭をぽんぽんと叩き、大人しく兄弟の「大隠蔽作戦」に従うことに同意した。
青い瞳を優しく細めるその姿に、太助も次郎も、完全にハートを撃ち抜かれてしまう。
「よ、よし! これで準備は万端だ! お咲のネエちゃんのお江戸生活、暮らしがいよいよ始まるな!」
「バカ言え次郎。暮らしどころか、命懸けの綱渡りだ。
昼間はこうしてほっかむり娘として大人しく過ごしてもらうが、怪しい役人や庄屋の目が近づけば、即座にあの芋つぼの床下へ潜ってもらうからな!」
こうして、前代未聞の「お江戸従姉妹生活」が本格的に始まった。
うら寂しい漁村の片隅で、昼間は手ぬぐいを深く被った大人しい娘、夜や危機の瞬間には暗い床下へと身を隠す、スリルと色気あふれる綱渡りの日々。
「お咲ちゃん、お水持ってきたよ!」
「お咲ネエちゃん、こっちの座布団を使いなよ!」
兄弟はお咲のボディガードを自任しながらも、気がつけば彼女のパシリとして部屋の中を忙しなく動き回っていた。
冷や汗を流しながらも、ふとした瞬間に彼女が見せるウィンクや、無防備な着物の擦れる音、そのえも言われぬ異国の魅力に、二人は確実に、そして深く絆されていくのだった。
ほっかむり姿のお咲ちゃん、素朴な可愛さと肉感的なプロポーションのギャップがたまりませんね!
しかし、変装した途端にまたまた庄屋さまがやってきます。
お咲ちゃんのハンドパワーが炸裂!?




