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外房漂着ブロンドちゃん 〜床下の菩薩、若者組と海女(アマ)になる〜  作者: 塩塚 蘭仮名


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34/44

【第34話:海女たちの白い壁】

お読みいただき感謝です!

若者組に続き、今度は外房が誇る海の女神「海女連合」が参戦!

白い磯着をまとった彼女たちが、磯ノミを手に兵士たちを圧倒する、最高に熱い一話です!

「ぬう……、

日ノ本の田舎者どもがどこまでも我が使節に刃向かうか! 

構わん、使節の威光を舐めおって! 


これ以上長引けば上意に基づき、

力ずくでその小癪な肉の壁をすべて排除せよ!」


「へい! 全員、銃を構えろ! 

引き金に指をかけろ! 

逆らう日本の野郎どもは一人残らず蜂の巣にしてくれん!」


「撃てるもんなら撃ってみやがれ、異人の糞野郎! 

この外房の激しい荒波に、

お前らの死体をまとめて沈めてやらあ!」


 太助たちの地鳴りのような凄まじい怒号が

朝靄の狭い路地に幾重にも響き渡り、

異国の頭領が冷酷に腕を振り下ろそうとした、まさにその刹那だった。


 ピィィィーーーーーッ!!!

 海岸線の方から、耳を聾するほどに鋭く烈しい口笛の音が、

静まり返った村の空気を一気に引き裂いて響き渡った。


「おいおいおい、若者組の青二才ども! 

男たちだけにそんな格好いい真似をさせておくわけにゃあいかねえべさ!」


「な、何事じゃ!? 

今度は海の方からいったい何がやってくるべ! 

お上の軍勢か!?」


「見ろ! 海女の衆だ! 

海女のババアたちや姉ちゃんたちが、

総出でこっちへ走ってくるべぇえ!!」


 使者たちが驚愕して一斉に視線を転じた路地の向こうから、

凄まじい地響きと共に姿を現したのは、

先ほどまで冷たい朝の海に潜っていたばかりの、

村の「海女の衆」のおなごたちだった。


 頭領であるあの肝っ玉母ちゃんを筆頭に、

彼女たちは濡れた白い磯着をその火照った身体にぴたりと張り付かせ、

アワビを岩肌から切り剥がすための鋭利な鉄の「磯ノミ」を、

ギラリと鈍く光らせて逆手に強く握り締めていた。


数十人ものおなごたちが、

健康的な小麦色の肌を朝日にキラキラときらめかせながら、

若者組の「黒い筋肉の壁」のさらに外側を大きく取り囲むようにして、

兵士たちの前に不敵に立ち塞がったのだ。


「ま、待て……! 

なんだ、このはしたない格好の女どもは……!? 

よ、寄るな! これ以上近づけば容赦なく撃つぞ! 下がれ!」


「ガハハハ! 

何をそんなに顔を真っ赤にして怯えてやがるんだ、

異国の生臭坊主ども! 自慢の鉄砲が泣いているべさ!」


 濡れた薄手の白い布地越しに、男勝りの強靭な肉体と、

出るところが出た圧倒的に豊かな肢体の曲線をこれでもかと

露骨に浮き彫りにした海女たちは、


兵士たちの黒い銃口を恐れるどころか、

磯ノミの刃先を鼻先に突きつけながら、

一歩一歩じりじりと距離を詰めていく。


太陽のように眩しく不敵な笑みが、おなごたちの顔に満開に咲き誇っていた。


「いいかい、よくお聞き! 

お咲ちゃんはねぇ、凍えるような海の底から上がった

私たちの冷え切った体を、

その不思議な和漢の薬草茶で温めてくれた、命の恩人なんだよ!

 

私たちの大事な仲間に、

どこの馬の骨とも知れない異人の野郎どもが、

指一本でも触れさせやしないよ!」


「そうだべ! 

お咲ちゃんを連れて行きたきゃ、

まずは俺たち全員の腹をその磯ノミでかっ捌いてからにしな!」


 おなごたちの地鳴りのような凄まじい気迫と、

下着もつけない剥き出しの生命力のあまりの眩しさに、

異国の兵士たちは完全にドギマギし、

銃を構えるその無骨な手がわずかに震え出した。


「(な、なんという悍ましき姿だ……。

教会の戒律では、おなごは肌を隠し、

慎み深くあるべきはずなのに……!)」


「(この東洋の女たち……銃を向けられても、

微塵も怯まぬどころか、

まるで獲物を狙う肉食の獣のような目をしている……!)」


 西欧の厳格な宗教観や、

絶対的な身分意識の社会からやってきた彼らにとって、

これほど「露出度が高く、肉体的に強すぎる東洋の女たち」の異様な集団は、

これまでの人生で一度も遭遇したことのない、未知の恐怖そのものだった。


衣服の下の豊かな肉体を誇るように笑う彼女たちの生命力に、

兵士たちの冷徹な軍律は根底から激しく揺さぶられていた。


「おい、次郎……見ろべ。

海女のババアども、いつも以上に凄まじい迫力だべ……」


「兄ちゃん、

おいら、異国の兵隊さんたちがちょっと可哀想になってきたべ。

あいつら、お姉さんたちの胸元に目をやりながら、

顔を真っ赤にしてガタガタ震えてやがるぞ」


「ガハハ! 

若者組の頭も、海女の頭にゃあ頭が上がらねえんだ! 

異人の鉄砲玉くらい、おなごの凄まじい怪力で跳ね返してやるべ!」


 若者組が築き上げた、黒々とした逞しい「黒い筋肉の壁」。

大地の地響きを。


そして、その外側を強固に包み込む、

海女たちの濡れた「白い磯着の壁」。


 二つの圧倒的な熱気と、男おなごの剥き出しの生命力に挟まれ、

武装した異国の小隊は、一発の銃弾すら放つことができぬまま、

白い砂浜の真ん中で完全に立ち往生を余儀なくされていた。


「おのれ……、この村の者どもは、揃いも揃って狂っておるのか……! 

お上への磔獄門すら恐れぬとは、正気の沙汰ではない!」


「正気じゃねえから、こうして一味同心で立ちはだかってんだべ! 

さあ、大人しくその鉄の筒を引いて、沖の黒船へ帰りやがれ!」


 村の若者たちの、命知らずの度外れた団結力が、

海の向こうからやってきた巨大な大軍を相手に、

完璧な対峙線を築き上げていた。


お咲の過去を血眼で追ってきた傲慢な影と、

この小さな現世の安楽土を守るための、

絶対に負けられない知恵と命の攻防戦が、外房の赤き海原の潮騒の中で、


今まさに激しく火花を散らそうとしていた。

海女さんたちの白い壁、強くて最高に格好いいです!

兵士たちがドギマギするコミカルさも外房カラーですね。

次回、ついに我らがお咲ちゃんが、ほっかむりを脱ぎ捨てて前に出ます!

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