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外房漂着ブロンドちゃん 〜床下の菩薩、若者組と海女(アマ)になる〜  作者: 塩塚 蘭仮名


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30/41

【第30話:若者組と海女による、お咲全力ガード作戦】

お読みいただき感謝です!

夜間徘徊で「若者組」を救い、昼の海で「海女連合」の仲間になったお咲ちゃん。

村の若者たち全員を味方につけた彼女の、鉄壁の隠蔽スローライフが完成します!

「おい! 大変だべ! 

お堅い庄屋の糞ジジイが、

手下の年寄りどもを引き連れてこっちに向かってるぞ!」


「なんだと!? 

太助たちのあばら家を怪しんで、中を検分しにくる気か!?」


「若者組の連中、何をもたもたしてやがる! 

すぐに長屋の裏から回って、お咲ちゃんを床下に隠すんだべ!」


「裏の木戸を固めろ! ジジイの歩みを少しでも遅らせるんだべ!」


 うら寂しい外房の漁村に、

目に見えない激しい火花のような緊張が走った。


 夜の密やかな徘徊によって

若者組の少年たちの心を根こそぎ奪い、憧れの的となったお咲。


そして、昼の凄まじい素潜りによって

海女たちの固い信頼をもぎ取ったお咲。


これにより、村の未来を担う働き盛りの若年層――

実質的な村の労働力のすべてが、

今や異国の女神であるお咲の

「熱烈な慕い手であり、秘密を共にする一味同心の徒」となっていた。


この強固で誰にも壊せない絆が、

お咲の綱渡りの隠蔽生活を、劇的かつ大胆に進化させていたのである。


「おい、庄屋のジジイが角を曲がったぞ! 

合図を送れ!」


「へい! 長屋の裏手の連中、突っ走れ!」


 お堅い庄屋や、村の古い因習にしがみつく

一部の頑固な年寄りたちが、


兄弟の家に疑いの目を向けて一歩でも近づこうものなら、

即座に若者組の張り巡らされた網の目のごとき

連繋(れんけい)が作動するのだ。


「もし、庄屋さま! 

そんなに血相を変えて、どちらへお出かけでございますかねぇ?」


 太助の家のすぐ手前、

細い路地の真ん中で、突如としてガラリと引き戸が開いた。


そこから這い出るようにして姿を現したのは、

先ほど海から上がったばかりの、地元の海女たちだった。


その目論見(もくろみ)の通り、

彼女たちはわざと、水に濡れて肌にぴたりと張り付いた

薄手の白い磯着姿のまま、庄屋の行く手を

遮るようにして立ちはだかったのだ。


「う、うわっ!? 

なんじゃお前たち、はしたない格好で道を塞ぎおって! 

ワシは今から、太助の家を……」


「まぁまぁ、そう堅いことをおっしゃらずに! 

ほら庄屋さま,今しがた外房の荒波の底から、

お前様のために切り取ってきたばかりの、

極上の大アワビでございますよ!」


「ほれほれ、見てくだされ。

こんなに丸々と太って、まだピチピチと動いておる。

ねぇ、庄屋さま? お前様のように立派な大アワビだべさ!」


 肝っ玉頭領を筆頭に、豊満で小麦色に引き締まった海女たちが、

濡れた白い布地越しに豊かな胸元を

わざとこれでもかと寄せながら、庄屋を囲み込んだ。


潮の香りと女たちの生々しい肉体の熱気が、

お堅い老人の鼻腔を容赦なく貫く。


庄屋は「な、なんという破廉恥な……

いや、しかし見事なアワビじゃ……」と、


完全に目を丸くして視線を釘付けにされ、

その場に釘付けになってしまった。


「ほら、一口かじってみなよ! 

長生きするべ!」


「これこれ、ワシの袖を引っ張るでない! 

困ったおなごどもじゃ……」


 その隙に、太助のあばら家の中では、

凄まじいドタバタ劇が繰り広げられていた。


「ネエちゃん! 

ジジイが海女のババアどもに捕まってるうちに早く! 

床下へ!」


「タスケ、ジロー、そんなに慌ててどうしたの……? 

あ、ひゃっ!?」


 お咲が状況を掴みきれずに首を傾げた瞬間、

太助と次郎は、彼女のあまりにも豊満で柔らかい身体を、

前代未聞の必死さで優しく、しかし力任せに抱きかかえた。


はだけかけた着物の襟元から零れ落ちそうな色香に、

兄弟は鼻血を噴き出しそうになりながらも、

大急ぎで薄暗い床下の芋つぼ(隠し部屋)へと彼女を滑り込ませた。


「ふぅ……! 

危ねえところだったべ。

次郎、畳を戻して上から莚(むしろ)を敷け!」


「へい、兄ちゃん! 

お咲のネエちゃん、静かにしててくれべ!」


 バタン、と床板が閉じられ、

部屋の中が静まり返る。


真っ暗な床下の闇の中で、お咲は小さく膝を抱えながら、

すぐ上の畳越しに聞こえてくる外の様子を、

じっと耳を澄ませて伺っていた。


「……おう、太助、次郎! 

庄屋さまのお出ましだべ! 

不埒な真似はしておらんおな!」


「へ、へぇ! 

庄屋さま,こんな埃っぽいあばら家に何の用で? 

俺たちは何も隠しちゃいませんべ!」


「ふん、海女どもがどうしてもアワビを食えとしつこいのでな……。

どれ、家の中に妙な異国の品でも転がっていないか、

一応見分させてもらうぞ」


 庄屋が鼻の下を伸ばしながら、

気取った声で部屋に上がり込んでくる足音が響く。


床下のお咲は、海女たちの命懸けのお色気作戦と、

若者たちの素早い立ち回りを頭の中で思い描き、

そのあまりにも見事な連繋に、胸のドキドキを抑えきれなくなっていた。


「(ふふふ……みんなの息の合った諸手の守り、

本当に『ヴンダーバール(素晴らしい)』だわ……。

あのお堅い庄屋様が、

お姉さんたちの胸元にすっかり騙されているなんて……!)」


 お咲は、暗闇の中で両手で口元を抑えながら、

くすくすと可愛らしい忍び笑いを漏らした。


かつては日ノ本に漂着したばかりで、

見つかれば即座に磔獄門という凄まじい恐怖に一人怯え、

兄弟だけで冷や汗を流していた綱渡りの隠蔽生活。


しかし、今やどうだろう。

村の未来を担う働き盛りの若者たちが、その剥き出しの生命力と、

あけすけなお色気作戦までをも駆使して、

お咲を全力で守る強固な砦となってくれているのだ。


「庄屋さまぁ、そんな汚ねえ物置を見るより、

私の長屋でもっといいモノを見せてあげますべ?」


「これ、これこれ! 

袖を引っ張るでない! 

これでは検分にならん……


あぁ、いや、その、アワビの壺焼きも捨てがたいな……。

よし、今日のところはこれくらいにしておいてやる!」


 海女たちの豪快な笑い声と共に、

庄屋の足音が遠ざかっていく。


床板が開け放たれ、眩しい光が差し込んだ瞬間、

お咲は太助と次郎の差し伸べた手を握り、

満面の笑みで地上へと這い上がった。


「タスケ、ジロー、ありがとう。

みんなのおかげで、今日も無事だったわ」


「ネエちゃんが笑ってくれりゃあ、

俺たちはどんなお上の目だって誤魔化してみせるべ!」


 お咲にとって、このうら寂しい外房の漁村は、

暗く狭い床下も含めて、今や世界で一番安全で、

誰にも侵されない愛おしい「自分たちの安楽土(あんらくど)」へと

完全に昇華しつつあった。


磔獄門の危うさを内包しながらも、

お咲を囲む若者たちの情熱と海女たちの色香は、


この隠れ里 の絆をさらに深く、

誰にも引き裂けない偉大な神話へと、

艶やかに色づかせていくのだった。

海女さんたちのお色気作戦に翻弄される庄屋さま、

最高にコミカルでしたね(件のガードは完璧です!)。

しかし、この平和なユートピアの水平線に、ついに暗雲(巨大な影)が迫ります……!

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