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外房漂着ブロンドちゃん 〜床下の菩薩、若者組と海女(アマ)になる〜  作者: 塩塚 蘭仮名


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【第27話:お咲、海女の仕事を体験する!】

いつも応援ありがとうございます!

ポカポカ茶のお礼にと、頭領から「潜ってみるかい?」と誘われたお咲ちゃん。

まさかのブロンド海女デビューへ向けて、村中が大パニック!?

「おいおい、お咲ちゃん、

そんなに爛々と青い目を輝かせて海を眺めてるくらいならさ……」


「そうだよ、

いっそその重てえ着物を一枚脱ぎ捨てて、

俺たちと一緒に冷てえ波の下へ潜ってみるかい!?」


「えっ……!? 

わ、私が……海の中に、潜るのですか……!?」


 流木の薪がパチパチと温かい音を立てて爆ぜる、

磯小屋の賑やかな囲炉裏端。


 海女の頭領である肝っ玉母ちゃんからの豪快な誘いに、

お咲は思わず美しい青い瞳を丸くして声を裏返らせた。


しかし、驚きは一瞬のことで、

彼女の胸の奥底には、まだ見ぬ未知の世界への

瑞々しい冒険心と知的好奇心が、


まるで乾いた薪に火薬(かやく)を落としたかのように

激しく燃え上がったのだ。


「と、とんでもねえ話だべ!! 

おい頭、今なんて言いやがったんだ!!」


「絶対にダメだべ、絶対にダメだ!! 

お咲のネエちゃんにそんな、


そんな身軽すぎる格好をさせるなんて、

俺たちが死んでも許さねえぞ!!」


 その瞬間、小屋の古びた引き戸を壊さんばかりの勢いで

突進してきたのは、顔を真っ白にした

太助と次郎の悪童兄弟だった。


 昼間の床下生活からお咲が抜け出したのを察知し、

大慌てで息を切らせて磯小屋へと飛び込んできた二人は、

海女たちの前で大裟に両手を広げて立ちはだかった。


「なんだい太助、次郎、うるせえねぇ! 

おなごの神聖な仕事場に、

男が泥足で入ってくるんじゃないよ!」


「うるせえのは頭の方だべ! 

いいか、海女の磯着ってなぁ、水に濡れたら透けて身体の線が

丸見えになっちまう薄手の白い木綿布じゃねえか! 


ただでさえお咲のネエちゃんは、

俺たち日ノ本のおなごとは骨組みからして違うんだぞ!」


「そうだべ! 

あんな、あんな天女様みたいな豊満で眩しい肉体を、

村の年若い漁師やスケベな野郎どもの前に晒してみろ! 


あいつら脪(ろ)を漕ぐ手も止まって、

鼻血を噴き出して海に落っこちまうべ!」


「そうだ! 

沖の舟の上から野郎どもが身を乗り出して、

全員波にのまれちまったら、

明日の地引き網はどうするんだべさ!」


 太助と次郎は、お咲が白い磯着一枚になり、

濡れた白肌が月光や太陽の下で妖しく浮き彫りになる光景を

脳内で勝手に想像し、


自分たち自身が今にも鼻血を噴き出しそうになりながら

必死に猛反対の声を張り上げた。


 しかし、そんな兄弟の焦り狂う様子を、

お咲は少し首を傾げ、小悪魔的な、

何とも愛らしい微笑みを唇に浮かべてじっと見つめていた。


「タスケ、ジロー。

あなたたち、本当に心配性で困った男の子ね。


そんな風にガミガミ怒ってばかりいるのは、

私の故郷の古いお医者様みたいで『フェボアテン(禁止)』だわ」


「ネエちゃん! 

これはな、お前を守るために言ってるんだぞ!

 

お上の目だってあるんだから!」


「ふふふ、いいえ、私は海女になるの。

この強いおなごたちと一緒に、広い海のお底を見てみたいわ。

過保護なのは、もうおしまいよ」


 お咲はクスクスと楽しそうに笑うと、

兄弟の目の前で、着物の藍染めの帯へと

自ら細く白い指先をかけた。


 そして、わざと意地悪く、

豊かな胸元を強調するように、


ふんわりと深いため息を深く漏らしながら、

帯をゆるりと緩めてみせたのだ。


着物の襟元がサラリとはだけ、雪のような白肌と、

息をのむほどに美しい鎖骨の輪郭が、

暗い小屋の中に眩しく露わになる。


「う、うわあああ! 

ネエちゃん、ここで脱ぎ始めるんじゃねえべ! 

目のやり場に困るべ!」


「ガハハハ! 

いいぞお咲ちゃん、

男の言うことなんか聞く必要はねえや!」


 小屋の隅では、耳の遠いよね婆までが、

ちびちびと薬草茶をすすりながら、

シワだらけの顔をニヤニヤと歪めて茶々を入れていた。


「おや、お咲ちゃんの白い磯着姿かい? 

そいつは冥土の土産に、

婆様もぜひとも拝みたいもんだねぇ。


太助、お前たちも男なら、

四の五の言わずに黙って拝んでりゃあいいんだよ」


「よね婆まで何をトチ狂ったことを言ってやがるんだ! 

このクソ婆!」


「さあさあ、男の仕事は沖の舟の上だべ! 

用が無いならすっこんでな!」


 海女の頭領を筆頭に、

腕をまくった肝っ玉海女たちが、

太助と次郎の首根っこを容赦なく掴み上げた。


二人は「離せ! お咲、戻るぞ!」とジタバタと暴れたが、


地引き網で鍛え上げられた女たちの怪力には敵うはずもなく、

そのまま磯小屋の戸の外へと、力ずくで豪快に叩き出されてしまった。


「痛たた……。

ちくしょう、海女のババアども、

なんて力が出やがるんだ……」


「兄ちゃん、どうするべ……。

小屋の中から、パチパチと衣擦れの音が聞こえてくるぞ。


お咲のネエちゃん、

本当にあの薄い磯着に着替えちまうんだべ……」


「お前、覗くんじゃないぞ! 

頭をヘラでカチ割られるべ!」


 閉め切られた小屋の戸の向こうで、

太助と次郎は冷や汗をだくだくと流しながら、

ヤキモキして爪を噛むしかなかった。


 戸の隙間からは、海女たちの

「まぁ、なんて白い肌だい!」

「胸の肉が溢れちまいそうだよ!」

という興奮した賑やかな黄色い声が漏れ聞こえてくる。


二人は長屋の陰に身を潜め、

胸のドキドキを抑えられないまま、

ただじっと待つしかなかった。


「おーい、太助、次郎! 

もう入ってもいいぞ! 

お前たちの自慢の従姉妹を、しかと拝みやがれ!」


 しばらくして、再び小屋の引き戸が

ガラリと勢いよく開け放たれた。


 そこに佇んでいた姿を目撃した瞬間、

太助と次郎、そして様子を伺っていた近隣の若者たちは、

あまりの衝撃に言葉を完全に失い、

生きた屍のように、その場に石地蔵のごとく硬直してしまった。


「……タスケ、ジロー。

どうかしら? 

日ノ本の海女さんの格好、私に似合っている?」


 そこには、うら寂しい外房の荒涼とした浜辺の景色を、

一瞬にして天上の極楽浄土へと変えてしまうほどの、

まばゆい光景が広がっていた。


 頭に白い手ぬぐいをきゅっと巻き、

水に濡れる前の、真っ白で清浄な磯着を身にまとったお咲が、

恥ずかしそうに頬を薔薇色に染めて佇んでいたのだ。


薄手の木綿布からは、引き締まったしなやかな太ももや、

大らかな肉体の曲線が、

隠しきれぬ圧倒的な色香を放って浮き彫りになっている。


風が吹くたび、磯着の裾から覗く雪のような白肌と、

輝く黄金の髪が美しく波打ち、

まるで夜の海に舞い降りた本物の海の女神のようだった。


「あ……あ……」


「兄ちゃん……俺、今なら死んでもいいべ……」


「お前だけじゃない、

おいらも魂をごっそり持っていかれちまったべ……」


 磔獄門という常に隣り合わせの死罪の恐怖を抱えながらも、

床下の芋つぼから飛び出した、


異国の女神による前代未聞の「黄金の髪を持つ海女」の誕生に、

男たちはただただ心を奪われるのだった。


お咲の飽くなき冒険心と大らかな優しさは、

悪童兄弟の冷や汗と情熱をたっぷりと吸い込みながら、

この村の歴史に消えない、

新たな偉大な神話の一歩を艶やかに刻み始めるのだった。

兄弟の必死の制止も虚しく、お咲ちゃんの海女デビューが決定です!

帯を緩めるお咲ちゃんの艶っぽいしぐさに兄弟も読者も悶絶ですね。

次回、ついに白い磯着姿のお咲ちゃんが海へ舞います!

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