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外房漂着ブロンドちゃん 〜床下の菩薩、若者組と海女(アマ)になる〜  作者: 塩塚 蘭仮名


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【第22話:オープンすぎる恋愛事情に、真っ赤になってフリーズ!】

いつも応援ありがとうございます!

若者宿を覗き見るお咲ちゃん。

講義の内容が、お江戸のオープンすぎる「大人の恋愛・性教育」に突入し、純潔な異国美女は真っ赤になって完全フリーズしてしまいます!

「いいかお前ら! 

ここからが、男として最も大事な『色道の作法』の伝授だべ! 

耳の穴をかっぽじって、しかと聞きやがれ!」


「う、うおお! 

待ってました、頭(かしら)!」


「おい新入り、何を鼻の下を伸ばしてにやついてやがる! 

男女(めおと)の交わりってなぁ、

ただ闇雲に突っ込めばいいってもんじゃねえんだ! 

そこにはこの狭い村で波風立てずに生きていくための、

厳格な礼儀と破っちゃならねえ裏の掟がびっしりとあるんだべ!」


 夜がさらに深く更け渡った、外房の漁村のはずれ。

 若者宿の古びた板壁の隙間にへばりついていたお咲は、

室内から漏れ聞こえてくる言葉の毛色の変化に、思わずごくりと息を詰めた。


 中央の囲炉裏で赤黒く爆ぜる火に照らされた若者たちの議論は、

沖での脪(ろ)の漕ぎ方や村の五人組の掟といった堅苦しい話から、

いつの間にか、あまりにも生々しく刺激的な「夜這(よばい)の指南」へと

様変わりしていたのだ。


「まず、意中の娘の長屋へ忍び込む時の足音だ。草

鞋(わらじ)の紐はこうして固く結び直し、爪先から音を殺して這いずるんだ。

長屋の引き戸を引くときはな、一気に開けちゃならねえ。


油の切れた戸車がギィと鳴ったら、奥で寝てる親父さんが飛び出してきて鍬(くわ)で

殴られるからな! 

少しずつ、戸が泣かねえように指先で持ち上げるように引くんだべ!」


「へへぇ、なるほど……! 

戸の隙間に薄い小刀を差し込んで、内鍵を静かに外すんですな?」


「馬鹿野郎、そんなのは泥棒の仕業だ! 

娘の側もな、お前が来るのを今か今かと寝床の中で待ってんだから、

障子を三回、爪の先でコン、コン、コンと叩くのが合図だべ! 


女親がすぐ隣で寝てるときは、焦って音を立てんじゃねえぞ。

息を合わせて、自分の呼吸を親の寝息に完全に重ねるんだ。


親がフゥと吐いたら自分も吐く。そうして闇に溶け込むのが、

本物の男の粋ってやつだべ!」


 頭が手振りを交えて大真面目に語る「長屋潜入の極意」に、

十代半ばの新入りたちは、まるで天下の軍法書でも読み解くかのような、

真剣そのものの強張った顔つきで身を乗り出していた。


 はだけた胸元から男らしい汗を火の粉に輝かせ、誰をどの順番で

訪ねるべきか、他所の村の娘を怒らせたときの詫びの入れ方まで、

明け透けな色事の談義が繰り広げられている。


「な、な……『ウンメーリヒ……!』(嘘でしょ、あり得ない!)」


 窓の隙間からその様子を凝視していたお咲は、あまりの衝撃に、

知らず知らずのうちにゲルマンの母国語で小さく悲鳴を漏らしていた。


 彼女は一瞬にして、雪のような白肌を耳の根元から首筋にかけて、

沸騰した湯のように真っ赤に染め上げた。ドクンドクンと耳の奥で


激しく脈打つ鼓動のせいで、はだけかけた着物の豊かな胸元が、

夜の暗闇の中で激しく上下する。


「(な、なんてことなの……! 

お父さんやお母さんがすぐ隣で寝ている部屋に、夜中に男の人が

隠れて入るなんて……! 

それが村のみんなの、当たり前の決まり事だというの!?)」


 お咲が生まれ育ったキリスト教圏の厳格な社会では、婚姻前の

男女の不純な交わりなど、それだけで「悪魔の所業」として烈火のごとく


糾弾される大罪だった。

教会の冷たい石壁の奥、司祭の厳しい目が常に光る抑圧された環境で

育ってきた彼女にとって、

日ノ本のこのあまりにも大らかで、健康的で、隠し立てのない男女関係は、

まさに天と地がひっくり返るほどの衝撃だった。


「おい、頭! 

もし、長屋に入ったときに娘の親父さんに見つかっちまったら、

どうすればいいんだべ? 

やっぱりお縄ですか?」


「そのときは潔く平頭を低くして謝るか、

あるいは命がけで裏の窓から畑に飛び降りるしかねえな! 

だがな、一番不届きなのは、娘に耻をかかせることだ。


男なら、一度契りを交わした女の面倒は、大漁のときも不漁のときも、

死ぬまで絶対に見る覚悟を持て! 

それができねえ腰抜けは、この若者組から叩き出してやる!」


「おう! 

男の意地、しかと胸に刻みましただ! 

おいら、ハナちゃんのことは死んでも裏切りやせん!」


 若者たちの言葉には、おかしみのある性のエネルギーだけでなく、

村の命を繋いでいくための、剥き出しの責任感と確固たる倫理観が

不思議なほど一本芯として通っていた。


 お咲はあまりの恥ずかしさに、両手で自らの美しい顔を

完全に覆い隠してしまった。指の隙間から熱い吐息が漏れる。


しかし、あまりにも未知で強烈な好奇心がどうしても抑えきれず、

結局は白く細い指の隙間をこっそりと広げて、室内の若者たちの

熱い一挙手一投足を見つめ続けてしまうのだった。


「(だめよ、見てはだめなのに……

でも、日ノ本の男の人たちは、なんて真っ直ぐで、眩しいのかしら……)」


 頭がのぼせ上がり、知恵がすべて吹き飛んでしまったお咲は、

夜風が吹く窓辺でカチコチに固まったまま、身動きひとつ取れなくなっていた。


 在郷の若者たちが放つ、生命の歓喜に満ちた生々しい色気と、

暗闇の中に満ち満ちている圧倒的な自由さ。


それは、故郷の冷たい戒律に縛られていた彼女の心を、

根底から優しく、

そして激しく融かしていくようでもあった。


 おかしみと色恋の情趣が入り混じる暗闇の中で、

異国の女神は、日ノ本の夜が持つ強烈な色気と情熱に、

心も体も完全に翻弄され、圧倒されていくのだった。


床下の芋つぼに隠された彼女の冒険は、

このオープンすぎる日本の夜の洗礼を受け、

もはや引き返せないほど深く、艶やかに色づき始めていた。

指の隙間から覗き見ながら真っ赤になってフリーズするお咲ちゃん、可愛すぎて最高ですね(笑)。

お江戸の洗礼を受けたお咲ちゃん。

次回、このカルチャーショックが最高の『感動』へと昇華します。

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