↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/29

望むものはただ一つ

 チュンチュン、という小鳥の軽やかな鳴き声で目を覚ました。いつもと同じ、穏やかな朝。


「昨日の夜は、夢だったのかしら……?」


 掠れた声でそうポツリと呟いて、私は身体を起こした。

 丁度その瞬間、コンコンとノックの音が響いて、アネットが「お嬢様、朝のお支度をしに参りました」と話しかけてくる。


「……入っていいわ」

「失礼いたします。そしてお嬢様、お誕生日おめでとうございます」

「誕生日……? 卒業おめでとう、ではなくて?」

「何を仰っているのです? 今日はお嬢様の十五歳のお誕生日でしょう」


 私は目を見開く。それから、鏡の前まで勢いよく移動した。

 そこに写っていたのは、十八歳の私より微かに若い、少女の頃の私だった。


「嘘……」

「嘘ではございませんよ。ほら、パーティーの準備はもうできています。お嬢様のご希望で、侯爵邸内だけでお祝いをすることになったのですから……せめて、存分に着飾らせてくださいませ」


 アネットはもどかしそうにそう話していたが、私には半分も内容が入ってきていなかった。


 若返っている。つまり、昨日のことは夢じゃなかった。成功したのだ。私の「巻き戻りの術」は、成功した! 

 でも、どうして私は成功したのかしら……。私の魔術の成績は、散々だったのに……。


 いいえ、今そんなことを考えても仕方がない。大事なのは、術が成功したということ、それだけよ。


「これで、会えるんだわ……また、やり直せる……シルヴァン……」

「お嬢様……? どうして泣いていらっしゃるのですか? 誕生日がそんなに楽しみだったのですか? それなら、急いでお支度を始めますよ! ほら、涙を拭いてくださいませ」


 歓喜に震えて涙を流す私に微笑みながら、アネットは楽しそうに私の髪を梳くのだった。


 ***


「誕生日おめでとう、ベアトリーチェ」

「ありがとうございます、お父様、お母様」


 豪華な食事、飾られた屋敷。そのどれもが私を祝福していた。

 お父様が私に楽しそうに話しかける。


「遅くなってしまったが、誕生日プレゼントは何がいい?」

「ベアトリーチェが欲しいものなら、なんでも用意するわよ」


 そう話す両親に、私はニコリと静かに笑ってから、ナイフとフォークを置く。それから立ち上がって頭を下げ、静かに嘆願した。


「豪華な宝石も、素敵なドレスも、何も要りません。ですが私、どうしてもお会いしたい人がいるのです。…………レグナール公爵家の、シルヴァン・レグナール様と、お話しする機会をいただけないでしょうか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。