条件
失言をした。
あの魔獣召喚事件の後、ニコラス教授に必死に頼み込んで、「絶対に誰にも言わないし、ベアトリーチェのことを守ってみせる」と約束したのに。
いくら動揺していたからといって、まさか本人のベアトリーチェに口を滑らせてしまうとは思っていなかった。
ベアトリーチェはひどく驚いた様子で、「どうして? あの事件はみんな、忘れたはずじゃ……」と呟いている。
「安心して。あの時のことは、俺しか覚えていないから。……ベアトリーチェに守ってもらったことを忘れたくなくて、ニコラス教授に無理を言ったんだ」
「……そう、だったの……」
「うん。だから……ベアトリーチェが本当は、光属性の適性を持っていることも、知ってるよ。もちろん、俺を救ってくれたことも……」
あの時のことは、忘れたくても忘れられない。
だってあの瞬間から俺は、ベアトリーチェのことを「一生をかけて守る」と誓ったのだから。
それにしても、まさか俺は俺に嫉妬していたとは思わなかった。今思うと、ものすごく恥ずかしい。自分に嫉妬して好きな人に八つ当たりするなんて、男の風上にも置けない。
……正直、殺されるって話も、まだ実感は湧かないけれど……。ベアトリーチェが嘘をつかない誠実な令嬢だということくらい、誰よりも俺が一番知っている。
ベアトリーチェが俺の顔を覗き込みながら、不安げに問いかけてきた。
「……ごめんなさい。こんな話を一気にしてしまって……。やっぱり、信じられないし、信じたくない……わよね」
「信じるよ。なにより俺は、ベアトリーチェに一度命を助けられてる。だから……これからは一人で背負わずに、一緒に頑張りたいんだ」
「一緒に……?」
「うん。どうしたら俺が殺されずに済むのか、一緒に考えて、乗り越えよう」
きっぱりと、けれど微笑みながらベアトリーチェにそう告げた。すると彼女は、少し驚いた様子で涙をぽろぽろと流しながら……「ありがとう」と、祈るように呟いた。
――その瞬間だった。
俺の手首の擦り傷にベアトリーチェの涙が落ちた途端……微かに光を発して、傷が綺麗に消えたのである。
俺とベアトリーチェは、咄嗟に顔を見合わせる。
それから、どちらからともなく口を開いたのだった。
「ベアトリーチェの光魔法を発現させる方法は、もしかして……」




