知らないイベント
「皆さん、魔闘祭の季節です!」
朝のHRで、担任であるフローラ教授が意気揚々と宣言した。
周りの生徒たちは、聞き馴染みのない言葉に困惑している。
一方私はというと、学園生活二周目なのだから当然知っている……わけではなく、全然初耳だった。
少なくとも、一周目の学園生活では体験しなかったイベントだ。そもそも去年もなかったし……。
「ふふ、皆びっくりしたでしょう! 実はこのイベント、今年から始まる新しいイベントなのよ! 考案者は……なんと私です!」
フローラ教授がえへん、と胸を張って自慢気に言い切った。それを聞いて、学級委員長のエディがおずおずと手を挙げる。
「あの……新しい行事だということは伝わったのですが、僕たちはなにをすればいいんですか?」
エディの至極真っ当な質問に対し、フローラ教授は「よくぞ聞いてくれました」とでも言いたげな表情で身を乗り出した。
「よくぞ聞いてくれました! 皆さんには……自分の得意魔法を使って、闘ってもらいます! 魔法で決闘する祭りだから、魔闘祭よ!」
「あ、そのままなんですね」
「で、でも、それって結構危ないんじゃ……私はあまり、魔法を争いには使いたくないです」
ひっそりとそう意見したのはマリベルだった。マリベルの問いかけに対し、複数の女生徒がうんうんと頷いている。
「そこは安心して頂戴! 魔闘祭は希望制だから! 希望しない生徒は応援に回ってもらえれば大丈夫よ」
「それだと、ほとんどの生徒が応援にまわりそうな気がするのですが……参加することに対するメリットはあるんですか?」
「もちろん! 優勝者には、決闘後のパーティーで好きなパートナーとファーストダンスを踊る権利が与えられます! それに加えて、参加するだけで成績にもプラス評価が点くわよ」
なるほど。ダンスの相手云々はともかく、成績に影響するのね。それなら、多少の危険を冒してでも参加したい生徒は多そう……。
「私は応援にまわろうと思うけれど、シルヴァンは参加するの?」
「……うん、参加しようかな。優勝したいから」
「意外ね。シルヴァンの成績なら、別に優勝しなくても十分じゃない?」
「あはは、俺が参加するのは成績目当てじゃなくて……まぁ、それは優勝した後に言うよ」
「? わかったわ」
本音を言うと、シルヴァンには参加をしてほしくはない。だってこれは、一周目にはなかった行事なのだ。つまり、何が起こるかは完全に未知数。
それに、魔獣事件のようなことが起こらないとも限らない。
けれど、今の私には光魔法もある。絶対に正体がバレないようにしなければならないけど、少しの保険にはなるはずよ。
……問題は、その発動条件がわからないことだけれど……。
まぁ、なんとかなるわよね。シルヴァンが殺されるまでの卒業パーティーまで、あと一年以上あるわけだし……ね。
私はそう考えて、新しい行事を楽しみにすることにしたのだった。




