おでんを食べさせたら女神を倒してしまった高校生
第6話です!
今回は冬回!
そして受験シーズン突入です。
……ですが、
大吉の日常は相変わらず平和には進みません。
塾帰りに買ったおでんと、
弟に頼まれた瞬間接着剤。
この二つがまさか、
異世界の女神を倒す鍵になるとは誰も思いませんでした。
今回は、
・ポンコツ女神
・歴代勇者
・おでんテロ
・瞬間接着剤バトル
など、かなり勢い重視の回になっています。
よろしくお願いします!
十二月。
街はすっかり冬の空気になっていた。
吐く息は白く、イルミネーションが駅前を彩っている。
だが。
「寒っ……」
福良大吉にロマンチックな余裕はなかった。
受験シーズン真っ最中。
塾帰り。
夜九時過ぎ。
眠い。
寒い。
腹減った。
「これはもう、おでんしかない」
大吉は吸い寄せられるようにコンビニへ入った。
━━━━━━━━━━━
レジ前のおでんコーナー。
湯気。
だしの香り。
冬の暴力だった。
「はぁ~……生き返る……」
大吉は迷った末に、
・大根
・こんにゃく
・ちくわぶ
・たまご
という王道構成を選択。
ついでに肉まんも買おうとして我慢した。
受験生に財布は厳しい。
その時。
「あ」
大吉は思い出した。
「そういえば小吉が接着剤いるとか言ってたな」
弟の福良小吉。
最近ラジコンにハマっている。
『兄ちゃん! 瞬間接着剤買ってきて!』
と言われていたのだった。
「忘れると絶対うるさいんだよな……」
大吉は工具コーナーで瞬間接着剤も購入した。
━━━━━━━━━━━
店を出る。
冷気が刺さる。
「早く帰ろ……」
大吉はマフラーに顔を埋めながら歩いた。
すると。
近所の神社前を通りかかった時。
地面が光った。
「……え?」
足元に魔法陣。
「いやいやいや」
最近こういうの多い。
嫌な予感しかしない。
だが。
光は一瞬で大吉を飲み込んだ。
「うわぁぁぁぁ!?」
━━━━━━━━━━━
「……寒くない?」
目を開ける。
豪華な宮殿だった。
白い柱。
赤い絨毯。
天井画。
いかにも神殿。
「また異世界かぁ……」
もはや驚きより疲労感が勝っていた。
すると。
玉座に座る美女が微笑んだ。
「待っていましたよ。異界の勇者様」
銀髪。
白いドレス。
神々しい美貌。
完全に女神だった。
「おお……」
大吉はちょっと感動した。
(本当にこういう展開あるんだ……)
弟が見ていた異世界アニメを思い出す。
(確かこういう時って……)
大吉は真面目な顔で言った。
「問おう。あなたが俺のマスターか?」
「はい?」
空気が止まった。
━━━━━━━━━━━
「……何言ってるの?」
女神は本気で困惑していた。
「あ、違った?」
「違います」
恥ずかしかった。
━━━━━━━━━━━
「まあいいです」
女神は咳払いした。
「まずはあなたのステータスを確認します」
女神の瞳が光る。
大吉をじっと見つめる。
「……」
「……」
「……は?」
女神の顔が曇った。
「え?」
「最低ランク……」
「えっ」
「運だけに全振りしたゴミステータス……」
「ゴミ!?」
言い方が酷い。
「攻撃力最低、防御力最低、魔力最低……」
女神は頭を抱えた。
「なんでこんなの召喚しちゃったのよ……」
完全にハズレ扱いだった。
━━━━━━━━━━━
「仕方ありません」
女神は冷たく言った。
「あなたはダンジョンに捨てます」
「軽っ!?」
「魔物の餌くらいにはなるでしょう」
「怖っ!?」
この女神ヤバかった。
━━━━━━━━━━━
「ちょ、ちょっと待ってください!」
大吉は必死だった。
そして咄嗟に。
「このおでんを差し上げます!」
「……おでん?」
女神が反応した。
「異界の珍味です!」
「ほう……」
食いついた。
━━━━━━━━━━━
「では食べさせなさい」
「えっ」
「口まで運ぶのです」
めちゃくちゃ偉そうだった。
だが逆らえない。
大吉は震える手でこんにゃくを掴む。
(落ち着け……!)
しかし。
緊張で手が震えた。
ぺちっ。
「あっ」
こんにゃくが女神の頬に直撃した。
━━━━━━━━━━━
「熱ッッッ!!」
女神絶叫。
「なにするのよ!?」
「す、すみません!!」
こんにゃくが熱々だった。
女神は涙目で頬を押さえる。
「ダンジョン送りにされたいの!?」
「ごめんなさい!!」
━━━━━━━━━━━
(次は失敗できない……)
大吉は考えた。
(箸で刺せばブレない!)
選ばれたのはちくわぶだった。
さらに。
「からしも付けた方が美味しいかな……」
だが。
恐怖で手が滑った。
べっとり。
「付けすぎた!?」
からし大量。
しかしもう止まらない。
「はい女神様!」
ぱく。
━━━━━━━━━━━
「……これは」
女神が固まる。
「なかなか……」
一瞬の静寂。
次の瞬間。
「ッッッッッ!?!?」
女神が転げ回った。
「辛ァァァァァァ!!」
床をごろごろ転がる。
「口が痛い! 鼻が! 目が!」
「ごめんなさいぃぃ!!」
━━━━━━━━━━━
数分後。
ようやく回復した女神は。
完全にキレていた。
「もう許しません」
冷たい声。
女神は両手を上げた。
パンパン。
手を二回叩く。
すると近くにいた侍女が消えた。
「えっ!?」
「見ました?」
女神が笑う。
「私は手を叩くだけで相手をダンジョン送りにできるのです」
「怖っ!」
「次はあなたです」
━━━━━━━━━━━
女神が両手を構える。
大吉、絶体絶命。
「死ぬ!!」
その時。
大吉の手に瞬間接着剤が当たった。
「あ」
弟に頼まれていたやつ。
そして。
咄嗟に投げた。
━━━━━━━━━━━
スポッ。
「え?」
接着剤が女神の両手の間に挟まった。
そのまま。
パン!!
━━━━━━━━━━━
ベチャ。
「……あれ?」
女神が固まる。
両手がくっついていた。
「え?」
引っ張る。
離れない。
「えええええ!?」
━━━━━━━━━━━
「ちょっと!!」
女神が慌てる。
「なんなのこれ!?」
「瞬間接着剤です!」
「瞬間ってレベルじゃない!!」
ベリベリやる。
離れない。
━━━━━━━━━━━
その時だった。
宮殿の奥から叫び声。
「いたぞ!!」
鎧姿の若者たちが雪崩れ込んできた。
「この悪女神!!」
「よくもダンジョン送りにしてくれたな!」
歴代勇者たちだった。
━━━━━━━━━━━
「まずい……!」
女神が青ざめる。
だが。
手が離れない。
パンパンできない。
つまり。
ダンジョン送りできない。
「終わったぁぁぁ!!」
━━━━━━━━━━━
勇者たちは一斉に突撃した。
「うわあああ!?」
女神、敗北。
━━━━━━━━━━━
「ありがとう!」
「君のおかげで助かった!」
「まさか女神の能力を封じるとは!」
勇者たちは大吉を称賛した。
「いや偶然で……」
「謙遜するな!」
全然伝わらなかった。
そして勇者たちは次々元の世界へ帰還していく。
最後に一人が笑った。
「お前、本当に運だけは最強だな!」
その瞬間。
大吉の視界が白く染まった。
━━━━━━━━━━━
「おい君!」
目を開ける。
神社前だった。
警察官が覗き込んでいる。
「こんなところで寝てたら風邪引くぞ!」
「あ……」
夢?
だが。
地面にはこぼれたおでん。
そして。
踏まれて中身が飛び出した瞬間接着剤。
「……」
大吉はしばらく無言だった。
━━━━━━━━━━━
「受験前で疲れてるのかもしれないけどな」
警察官はポケットを探る。
「無理しすぎるなよ」
そう言って。
カイロを渡してくれた。
「あ、ありがとうございます……」
警察官は自転車で去っていく。
冬の夜道。
静かな神社。
大吉は温かいカイロを握りながら空を見上げた。
「……今の夢だったのかな」
だが。
どこか遠い世界で。
『接着の神・ダイキチ』
という謎の神話が生まれ始めていることを、大吉はまだ知らないのであった――。
第6話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、
「塾帰りにおでん購入」
↓
「異世界召喚」
↓
「女神に嫌われる」
↓
「からし事故」
↓
「接着剤で能力封印」
↓
「歴代勇者が反乱」
という流れでした。
大吉本人はただ必死に生き残ろうとしていただけなのですが、
結果的に“悪女神から異世界を解放した英雄”みたいな扱いになっています。
毎回スケールだけは大きいです。
そして今回の女神ですが、
かなり性格に問題がありました。
たぶん今まで召喚された勇者たちは、
全員「思ってた異世界転生と違う……」となったと思います。
また、
今回は少しだけ受験生らしい日常も入れてみました。
大吉は基本的に普通の高校生なので、
異世界へ行っても帰ってきたら塾があります。
かわいそうです。
そして最後に登場した警察官。
こういう“現実世界の普通の優しさ”を書けると、
個人的にちょっとホッとします。
「今回めちゃくちゃ笑った!」
「おでんと接着剤で女神倒すの好き!」
と思っていただけたら、
ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!
感想も本当に励みになります!
次回もよろしくお願いします!




