白雪姫のキスで目覚めたら異世界で魔王を倒していた高校生
第5話です!
ついに学園祭本番!
白雪姫の劇もいよいよ開演――
なのですが、当然のように大吉は普通に終わりません。
今回は、
・白雪姫のキスシーン
・不死身の魔王
・謎のSF魔王城
・挨拶が世界を救う
など、かなりカオスな回になっています。
そして大吉は今回も、
本人の知らないところで救世主扱いされます。
よろしくお願いします!
学園祭当日。
朝から学校は異様な熱気に包まれていた。
模擬店の呼び込み。
焼きそばの匂い。
軽音部のリハーサル音。
そして。
「きゃあああ! 白井さん可愛い!」
演劇部控室前がざわついていた。
「マジで似合ってる!」
「本物の白雪姫じゃん!」
その中心にいたのは――白井ゆき。
以前までの黒髪ロングから一転。
肩までのショートボブになっていた。
透明感がすごい。
清楚感はそのままに、むしろ可愛さが増していた。
「……おお」
大吉は素直に感動した。
(よかった……長くない……)
黒髪ロング恐怖症が少し和らいだ。
「福良先輩!」
ゆきが嬉しそうに近づいてくる。
「どうですか? 本当に切っちゃいました」
「めちゃくちゃ似合ってる」
「……っ!」
ゆきの顔が赤くなる。
「そ、そうですか……」
その様子を見ていた女子たちはニヤニヤしていた。
「青春だ……」
「王子と白雪姫すぎる……」
一方。
少し離れた場所では安里唯が微妙な顔をしていた。
「なんか悔しい……」
自分でも理由はよくわからなかった。
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そして。
ついに『白雪姫』本番が始まった。
体育館は満席。
保護者まで来ている。
舞台は大成功だった。
ゆきの白雪姫は可愛く。
魔女役の先輩も迫真の演技。
観客も盛り上がっている。
そして物語は終盤へ。
――王子のキスで白雪姫が目覚める名シーン。
「……」
大吉は固まっていた。
(待って待って待って)
距離が近い。
白い肌。
閉じた瞳。
可愛い。
体育館中の視線が集まっている。
(無理無理無理無理!!)
大吉の心拍数が限界を超えた。
そして。
「……ッ」
プツン。
意識が落ちた。
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「……あれ?」
目を開ける。
「またかよ!!」
もうツッコむ気力もなかった。
異世界だった。
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しかも今回は最初からヤバい。
目の前で戦争していた。
巨大な城。
燃え上がる炎。
鎧姿の騎士団。
そして。
黒いオーラを纏った魔王。
「滅びよ、人類」
魔王が腕を振る。
ドゴォォォン!!
騎士たちが吹き飛ぶ。
「若いの!」
騎士団長が叫ぶ。
「お前も戦え!!」
「いや無理!!」
即答だった。
大吉は普通の高校生である。
最近ちょっと異世界遭遇率が高いだけだ。
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だが状況は最悪だった。
騎士団の攻撃は確かに魔王へ当たっている。
しかし。
何度倒しても復活する。
「なんだよあれ!?」
「不死身だ!」
「このままでは全滅する!」
騎士たちが次々倒れていく。
「いやこれ絶対勝てないって!」
大吉は判断した。
逃げよう。
全力で。
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大吉は近くの城へ駆け込んだ。
「おい待て!」
騎士団長が叫ぶ。
「一人で魔王城へ乗り込むつもりか!?」
「違います!」
ただ避難したいだけだった。
しかし騎士団長には。
“命を懸けた特攻作戦”
に見えていた。
「なんという勇気……!」
完全に勘違いだった。
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城の中へ入る。
「……え?」
大吉は驚いた。
今までの異世界と違う。
そこはまるでSF研究所だった。
金属製の壁。
モニター。
謎の機械。
「未来感すごっ」
もはやファンタジーですらない。
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一方その頃。
城の最深部。
「なんだあの若造は!?」
一人の老人が焦っていた。
水槽型カプセルの中に浮かび、無数のコードに繋がれている。
彼こそ魔王の本体だった。
外で戦っている魔王は幻影。
本体は安全圏で延命していたのである。
「まさか私の秘密に気づいたのか……!?」
老人は震える。
「だが、この施設には三重ロックがある!」
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「ん?」
大吉の前に扉が現れた。
【暗証番号を入力してください】
「えぇ……」
大吉は困った。
だが適当に押してみる。
「0840……“おはよう”でいいか」
ピッ。
【認証完了】
「開いた!?」
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「なにィィィ!?」
魔王が絶叫した。
「なぜ暗証番号を知っている!?」
偶然だった。
完全に。
「だがまだ二つある!」
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二つ目。
「5210……こんにちは?」
【認証完了】
「三つ目は……5808。こんばんは」
【認証完了】
全部開いた。
「ありえん!!」
魔王は頭を抱えた。
「なぜ現代日本語の語呂合わせを!?」
たまたまだった。
本当に。
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最深部。
巨大な水槽。
中に老人。
「……なにこの爺さん」
大吉は首を傾げた。
よくわからない。
だが近くにキーボードがある。
「ゲーム機かな?」
適当に触る。
「やめろォォォ!!」
魔王が念話を飛ばす。
だが。
「……?」
大吉には聞こえない。
カタカタ。
エンター。
【全システムを終了しますか?】
「はいっと」
ポチ。
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ブゥゥゥゥン……
施設の光が消える。
「ま、待て……!」
老人の生命維持装置が停止した。
「こんな……馬鹿な……」
プツン。
魔王、死亡。
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城の外。
戦っていた幻影魔王が突然消えた。
「なっ!?」
「消えた!?」
騎士団が騒然となる。
そして。
城の入口から大吉が出てきた。
「おお……!」
朝日が昇る。
光が大吉を照らす。
階段の上に立つ姿は神々しかった。
「若いの……!」
騎士団長が震える。
「お前が魔王の本体を倒したのか!?」
「本体?」
「城の奥にいた邪悪なる存在だ!」
「ああ、水槽に入ってた爺さん?」
騎士団がざわつく。
「やはり……!」
「真の魔王を見抜いていたのか!」
「救世主だ!!」
また始まった。
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その瞬間。
大吉は唇に柔らかい感触を覚えた。
「……ん?」
目を開ける。
目の前に白井ゆき。
距離ゼロ。
「…………」
キスされていた。
「ッ!?」
大吉の脳が爆発した。
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実は。
大吉が舞台上で突然気絶したため、演劇部は即座にアドリブ対応したのである。
「白雪姫が王子にキスして起こす!」
という逆転展開へ。
観客は大盛り上がりだった。
「きゃああああ!!」
「最高ーー!!」
「むしろこっちの方が尊い!!」
体育館が拍手に包まれる。
一方。
大吉だけがフリーズしていた。
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演劇は無事終了。
お疲れ様会も終わり。
帰り道。
ゆきと二人で駅へ向かっていた。
「福良先輩」
「はい……」
「目を覚ましてくれてよかったです」
ゆきは笑う。
「あのまま起きなかったらどうしようって、みんな心配してたんですよ?」
「本当にごめん……」
大吉は申し訳なさそうに頭を下げた。
すると。
ゆきが少しイタズラっぽく笑った。
「でも先輩」
「?」
「本当は私からキスさせるために、わざと気絶したんじゃないですか?」
「するわけない!!」
「ふふっ、先輩も意外とあざといですね」
そう言って笑うゆき。
街灯に照らされた横顔がやたら可愛かった。
大吉は少しだけドキッとした。
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一方その頃――異世界E。
「消えた……」
騎士団長が呟く。
救世主は光の中へ消えていった。
「あれは神だったのだ」
「間違いない……」
後に。
この世界では大吉の物語が神話として語り継がれることになる。
そして。
魔王城の暗証番号として使われた謎の言葉――
『おはよう』
『こんにちは』
『こんばんは』
これらは神聖な挨拶として世界中へ広まり、以後この異世界Eの共通挨拶となったのである。
第5話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、
「キスシーンで緊張」
↓
「気絶」
↓
「異世界で魔王城突入」
↓
「適当にボタン押したら魔王撃破」
↓
「現実に戻ったら本当にキスされていた」
という流れでした。
大吉本人は逃げようとしていただけなのに、
騎士団側から見ると
“命懸けで単独潜入し、真の魔王を討伐した英雄”
になっています。
毎回ズレ方が酷いです。
また今回は、
白井ゆきとの距離もかなり縮まりました。
ゆきは天然っぽく見えて、
実は結構グイグイ来るタイプかもしれません。
そして異世界Eでは、
なぜか『おはよう』『こんにちは』『こんばんは』が神聖な言葉として広まることになりました。
魔王城の暗証番号が文化になるとは誰も思いません。
「この勘違いコメディ好き!」
「毎回の異世界オチが楽しみ!」
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