白雪姫の棺桶で寝たら異世界で大蛇退治した高校生
第4話です!
今回は学園祭直前回!
……なのですが、
大吉は普通に青春イベントをやらせてもらえません。
白雪姫の棺桶で寝た結果、
なぜか異世界で“生贄役”になることになります。
しかも今回は、
・大蛇
・地蔵峠
・花火大量爆発
など、ちょっと昔話っぽい雰囲気のエピソードです。
そして相変わらず、
大吉本人はほぼ何もしていません。
だいたい運です。
よろしくお願いします!
学園祭が近づいていた。
校内はすっかりお祭りムードで、廊下には飾り付け用の段ボールやカラフルな紙花が並び、生徒たちは放課後まで準備に追われている。
そんな中――
「福良君! これ受け取って!」
「え?」
「学園祭の夜、一緒に花火してください!」
「えぇ……」
大吉はまたしても困っていた。
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この学校には古くから伝わる妙な噂がある。
――学園祭の夜、想い人と屋上で花火をすると結ばれる。
青春全開の都市伝説だった。
普通なら、好きな男子へ女子が誘うイベントになるはずである。
だが最近、その伝説はねじ曲がっていた。
原因はもちろん――福良大吉。
「福良君と花火すると恋愛運上がるらしいよ!」
「え、マジ!?」
「呪い跳ね返したし、絶対運気強いって!」
「もはやパワースポットでは?」
女子たちの認識がおかしくなっていた。
彼女たちは“大吉と結ばれたい”わけではない。
“大吉の強運にあやかりたい”のである。
「これ私の分!」
「私も!」
「絶対来てくださいね!」
次々渡される花火セット。
手持ち花火。
打ち上げ花火。
なぜか線香花火百本セットまである。
「いや多くない!?」
大吉は完全に花火屋状態だった。
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「重っ……」
大量の花火袋を抱え、大吉はふらふらと体育館へ向かっていた。
今日は演劇部のセット確認の日である。
白雪姫の大道具がかなり完成しているらしい。
「誰かいるかな……」
体育館へ入る。
だが中は静かだった。
どうやらまだ誰も来ていない。
「おお……」
舞台上には巨大なセット。
森。
お城。
そして。
「棺桶、すげぇ出来いいな」
白雪姫用のガラス風棺桶。
かなり本格的だった。
「これ演劇部頑張ったな……」
大吉は感心する。
そして。
「……ちょっと入ってみるか」
軽い気持ちだった。
誰も見ていない。
少しくらいならいいだろう。
大吉は棺桶へ入った。
「おっ、意外と広い」
しかも妙に寝心地がいい。
ふかふかしている。
「……なんか落ち着くな」
疲れていた。
最近いろいろありすぎた。
気づけば大吉は、そのまま眠ってしまっていた。
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「……ふぁぁ」
目を覚ます。
「よく寝た」
大吉は身体を起こした。
そして。
「……ん?」
景色がおかしい。
体育館ではない。
木造建築。
囲炉裏。
薄暗い空間。
「またぁ!?」
もはや慣れてきた。
異世界である。
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「おお! 起きなすった!」
近くにいた村人たちがざわつく。
村長らしき老人が涙目で近づいてきた。
「お前さん……本当に村娘の代わりになってくれるんか……!」
「え?」
「ありがてぇ……ありがてぇ……!」
周囲の村人たちまで泣いている。
嫌な予感しかしなかった。
「ちょっと待ってください」
大吉は手を上げる。
「俺、“大吉”って名前ですけど、演劇の主役やるだけで――」
「主役!?」
村人たちがざわめく。
「なんと立派な覚悟だ……!」
「自ら主役を名乗るとは!」
「若いのに肝が据わってる……!」
全然伝わってなかった。
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「よし! 急げ!」
村人たちは棺桶を担ぎ上げる。
「え、待って!? どこ行くの!?」
「地蔵峠だ!」
「いや説明して!?」
だが誰も止まらない。
村人たちは山道を進んでいく。
大吉は棺桶の中で揺られながら思った。
(これ絶対生贄イベントだ……)
最近、展開が読めるようになってきた。
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しばらくして。
村人たちは峠へ到着した。
【地蔵峠】
古びた石地蔵が並ぶ不気味な場所だった。
「すいませんが、ここからは蓋を閉めさせてもらいます」
村人の一人がロウソクを差し出す。
「暗いでしょうから」
「いやいやいや!?」
完全に棺桶扱いだった。
ガコン。
蓋が閉まる。
「ちょっと待っ――」
足音が遠ざかる。
静寂。
「……帰った?」
大吉は嫌な汗を流した。
すると。
ズズ……。
外から何か巨大なものが動く音。
「……え?」
低いうなり声。
木々が揺れる音。
嫌すぎる。
大吉は恐る恐る蓋を開けた。
「…………」
いた。
巨大な大蛇。
トラック並みにデカい。
赤い目。
裂けた口。
完全に妖怪だった。
「うわああああああああああ!!」
大吉は絶叫した。
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大蛇が迫る。
逃げ場なし。
「た、助けてぇぇ!!」
パニックになった大吉は、とっさに抱えていた花火袋を投げた。
さらに。
ロウソクまで放り込む。
それが。
最悪の偶然を起こした。
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ボン!!
大蛇の口の中で火花が散る。
次の瞬間。
ドドドドドドドドドドッ!!!
「ギャオオオオオオオ!?」
大蛇が絶叫した。
女子たちから渡された大量の花火。
それが全部、大蛇の胃袋で点火したのである。
爆竹。
打ち上げ。
連続花火。
胃袋の中が完全に夏祭りだった。
「た、たまやぁぁぁ!?」
なぜか大吉まで叫んでいた。
大蛇は暴れ狂う。
木々をなぎ倒し。
地蔵を吹き飛ばし。
山道を転がり回る。
そして最後には。
「ギャアアアアアアア!!」
谷底へ転落した。
ドゴォォォン!!
静寂。
「…………」
大吉はその場にへたり込んだ。
「もう嫌だこの人生……」
そう呟きながら意識を失った。
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「福良先輩!」
誰かが呼んでいる。
「先輩! 起きてください!」
目を開ける。
目の前に黒髪ロングの少女がいた。
「うわっ!? 黒髪ロング!!」
大吉は飛び起きた。
「えっ!?」
少女がびっくりする。
よく見ると。
白雪姫役の一年生、白井ゆきだった。
「だ、大丈夫ですか?」
「あ……白井さんか」
大吉は安心した。
まだ少し黒髪ロング恐怖症が残っている。
「先輩、棺桶で寝ちゃダメですよ」
「ごめん……」
どうやら体育館で寝落ちしていただけらしい。
大吉はホッとした。
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「でも白井さん」
「はい?」
「その……髪型変える予定とかない?」
「髪型ですか?」
「ショートとか似合うと思う」
「えっ」
ゆきは少し頬を赤らめた。
「そ、そうですか……?」
「うん、絶対似合う」
大吉に悪気はない。
ただ黒髪ロングが怖いだけだった。
「じゃあ学園祭終わったら切ろうかな……」
「ぜひ!」
大吉は全力で頷いた。
そんな二人の様子を。
体育館入口から安里唯が見ていた。
「…………」
なんだかモヤモヤしていた。
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一方その頃――異世界D。
「おい! 大蛇が死んでるぞ!」
「山神様が倒された!」
村人たちは騒然としていた。
そして。
「見ろ……地蔵様が倒れてる」
誰かが呟く。
大蛇との戦いで、周囲の地蔵が薙ぎ倒されていた。
村人たちは顔を見合わせる。
「まさか……」
「あの若者は……」
「地蔵様の化身だったのでは?」
完全に勘違いした。
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後に。
その峠には新たな地蔵が建てられる。
花火を抱え、穏やかに微笑む青年の地蔵。
人々はそれをこう呼んだ。
――《大吉地蔵》。
厄除け。
縁結び。
豊作祈願。
さらには花火大会の安全祈願まで。
なぜか多方面にご利益があると信じられ、後世まで大切に祀られることとなるのだった。
第4話を読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、
「花火を大量にもらう」
↓
「棺桶で寝る」
↓
「異世界で大蛇退治」
↓
「地蔵になる」
という流れでした。
もはや大吉本人の意思とは関係なく、
異世界での神格化がどんどん進んでいます。
しかも今回は、
『大吉地蔵』
として祀られることになりました。
たぶん本人は絶対嫌がります。
また、現実世界では
白井ゆきとの距離が少し縮まり始めています。
ただし大吉の理由は
「黒髪ロングが怖いからショートにしてほしい」
です。
最低です。
そして学園祭本番も近づいてきました。
白雪姫の劇は無事成功するのか。
大吉は平穏に過ごせるのか。
たぶん無理です。
「この空気感好き!」
「毎回の異世界オチが楽しみ!」
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