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呪いの動画を見たら異世界で救世主になった高校生

第2話です!


今回は、

「呪いの動画を見た高校生」

のお話になります。


ただし普通のホラーでは終わりません。


この作品なので、

当然のように異世界へ行きます。


そして、

当然のように勘違いされます。


ちなみに作者はホラー映画を見るのが苦手です。

でも「スマホから出てくる幽霊を異世界に持っていったらどうなるんだろう」と考えた結果、この話になりました。


少しでも楽しんでいただければ嬉しいです!

 福良大吉ふくらだいきちには、好きな人がいた。


 クラスメイトの――安里唯あざとゆい


 黒髪ロング。


 整った顔立ち。


 明るい性格。


 男子人気は圧倒的で、女子からも普通に好かれている。


 いわゆるクラスのマドンナというやつだった。


 そして当然ながら、大吉とは住む世界が違う。


「おはよー、唯ちゃん!」


「昨日のドラマ見た?」


「放課後カラオケ行こうよー!」


 朝から唯の周りには人が集まっている。


 一方の大吉は、教室の隅で静かにスマホゲームをしていた。


 別に陰キャというわけではない。


 友達も普通にいる。


 ただ、女子と話すのが壊滅的に苦手だった。


 ましてや唯みたいな美少女など、視界に入るだけで心拍数が上がる。


(今日もかわいいな……)


 遠くから眺めるだけ。


 それで十分だった。


 十分……だったはずなのだ。


━━━━━━━━━━━


「――福良君」


「ぶふっ!?」


 突然名前を呼ばれ、大吉は飲んでいた牛乳を吹きかけそうになった。


 顔を上げる。


 すると。


 目の前に安里唯がいた。


「えっ」


 教室がざわつく。


 男子たちの視線が一斉に大吉へ突き刺さった。


(な、なんで!?)


 大吉の脳が処理落ちする。


「ちょっとお願いがあるんだけど」


「お、お、お、おれ!?」


「うん、福良君」


 唯はニコッと笑った。


 破壊力が高すぎた。


 大吉は危うく死にかけた。


「れ、連絡先交換してくれない?」


「…………へ?」


 一瞬、時間が止まった。


「スマホの連絡先!」


「え、あ、はい! もちろん!」


 大吉は震える手でスマホを取り出した。


 QRコードを表示する。


 唯がスマホを近づける。


 ピロン♪


【安里唯を追加しました】


 その表示を見た瞬間、大吉の脳内でファンファーレが鳴った。


(勝った……)


 何に勝ったのかはわからない。


 だが人生に勝利した気分だった。


「ありがと、福良君♪」


 唯は手を振りながら自席へ戻っていく。


 教室中の男子が大吉を睨んでいた。


 だがそんなことはどうでもよかった。


(今日死んでもいい……!)


 本気でそう思った。


━━━━━━━━━━━


 帰宅後。


 大吉はベッドに寝転がりながら、何度も連絡先画面を見返していた。


【安里唯】


 本当に登録されている。


 夢ではない。


 すると。


 ピコン♪


「ッ!!」


 通知。


 送信者――安里唯。


 大吉は飛び起きた。


「は、早い!」


 震える手でメッセージを開く。


『福良君に見せたいものがあるの❤』


「ッッッ!!?」


 心臓が跳ねた。


 さらに動画ファイルまで添付されている。


『絶対見てね❤』


(な、なんだこれ……!?)


 脳内で様々な妄想が暴走する。


 好きな音楽?


 ペット動画?


 まさかの告白系?


 大吉は幸福の絶頂にいた。


 疑うという発想が消えていた。


「……見るしかないだろ」


 再生ボタンを押す。


━━━━━━━━━━━


 ザザッ――。


 ノイズ混じりの映像。


 薄暗い場所。


 古びた井戸。


「なんだこれ……ホラー?」


 そして。


 白い服の女が現れた。


 長い黒髪。


 顔はほとんど見えない。


 女はゆっくり井戸から這い出してくる。


 ズル……ズル……。


「うわ、キモ……」


 女は画面に近づき。


 最後には。


 スマホ画面いっぱいに顔を寄せた。


 その瞬間。


【この動画を見た者は三日以内に他人へ見せなければ死ぬ】


 真っ赤な文字が表示された。


「…………」


 大吉は無言で動画を閉じた。


「いやいやいや」


 乾いた笑いが漏れる。


「古典的すぎるだろ」


 完全にチェーンメール系だった。


 今時こんなの信じる奴いるのか。


 そう思った。


 ……その時は。


━━━━━━━━━━━


 三日後。


 深夜。


 大吉は自室にいた。


「……なんか寒いな」


 エアコンは消している。


 なのに妙に冷える。


 ゾワリ、と背筋が粟立った。


 すると。


 スマホ画面が勝手に点灯した。


「……え?」


 画面がノイズで乱れる。


 ザザッ……ザザザッ……。


 そして。


 あの女が映っていた。


「は?」


 女がこちらを見ている。


 いや。


 近づいてきている。


 画面の向こうから。


「いやいやいやいや!?」


 次の瞬間。


 白い手がスマホから飛び出した。


「うわあああああッ!!?」


 女が這い出してくる。


 本当に。


 物理的に。


「ちょっ、待っ――!」


 白い服の女は、そのまま大吉へ抱きついた。


 冷たい。


 異常に冷たい。


「ぐぇっ!?」


 押し倒される。


「離せ!!」


 大吉は必死に抵抗した。


「童貞のまま死んでたまるかぁぁぁ!!」


 その頃。


 隣家のベランダでは、洗濯物を取り込んでいた主婦が偶然その様子を見ていた。


「あらあら……」


 カーテンの隙間から見える男女のシルエット。


 抱き合うように倒れ込む姿。


「福良さんちの息子さんも、お盛んな時期なのねぇ」


 完全に勘違いだった。


━━━━━━━━━━━


 大吉の意識は闇へ沈んだ。


━━━━━━━━━━━


「……ん?」


 気づくと、大吉は巨大な大聖堂にいた。


 高い天井。


 巨大なステンドグラス。


 薄暗い空間。


「また異世界!?」


 既視感がすごい。


 そして何より。


「……いるし」


 白い服の女。


 まだ背中にしがみついていた。


 おんぶ状態である。


「帰ってくれない?」


 返事はない。


 怖い。


 すると。


「君たち!」


 甲冑姿の騎士が駆け寄ってきた。


「よかった! 援軍か!」


「いや違います」


「アーモンド教団の悪司祭を倒しに来たのだろう!?」


「いやだから違います!」


「……君たち二人で?」


「一人です!」


「照れるな!」


「照れてない!」


 会話が成立しなかった。


 しかも騎士は、大吉の背中に抱きつく女を完全に恋人扱いしていた。


「仲が良いのは結構だが、イチャつくのは戦いの後にしてくれ!」


「イチャついてねぇ!」


 大吉は泣きそうだった。


━━━━━━━━━━━


 騎士に連れられ、大聖堂の奥へ進む。


 そこには。


 紫の法衣を纏った老人がいた。


 不気味な笑み。


 怪しい祭壇。


 見るからに悪役だった。


「ククク……ようやく来たか」


 悪司祭は両手を広げる。


「たった三人で私に挑むとは愚かな!」


「二人だよ!!」


 大吉は思わずツッコんだ。


「おいおい! 二人だけで戦おうとするな!」


 騎士も勘違いする。


「俺も戦う!」


「いやそういう意味じゃ――」


 疲れた。


 もう説明する気力もない。


 どうせこの白い女に殺されるのだ。


 半ばやけくそだった。


「見せてやろう!」


 悪司祭が杖を掲げる。


「我が神授の秘術――『ドレインタッチ』!!」


 紫の光が溢れる。


「この術は相手の魔力を吸い尽くす!」


(……ん?)


 大吉はふと思った。


(司祭って除霊できるんじゃね?)


 そして。


 ひらめいた。


「だったら俺から吸え!!」


「なに!?」


「俺から魔力とか呪いとか全部吸え!!」


「無茶だ!」


 騎士が叫ぶ。


「君には愛する女性がいるんだろう!?」


「しばらく恋愛とかいいから!!」


 大吉は涙目で叫んだ。


「もう怖いの嫌なんだよ!!」


「……覚悟のある若者よ」


 悪司祭がニヤリと笑う。


「ならば望み通り吸い尽くしてやろう!」


 杖が大吉へ向けられた。


 瞬間。


 大吉の背中の女が、ズルズルと引き剥がされる。


「うおっ!?」


 白い女が杖へ吸い込まれていく。


 そして。


「な、なんだこれはァァァ!?」


 悪司祭が絶叫した。


 杖が黒く染まる。


 呪い。


 怨念。


 死の気配。


「ぎゃあああああああ!!」


 悪司祭は床を転げ回った。


「嫌だ!! 見るな!! こっち来るなァァ!!」


 完全にホラー被害者になっていた。


 数秒後。


 悪司祭は白目を剥いて動かなくなった。


「…………」


 静寂。


 騎士が震えながら呟く。


「ま、まさか……」


「その身に宿した邪悪を利用し、敵を滅ぼした……?」


「いや呪い押し付けただけです」


「なんという自己犠牲……!」


「話聞いて」


 騎士は感動していた。


「愛する女性を犠牲に世界を救うとは……!」


「犠牲っていうか除霊成功っていうか……」


「英雄だ!!」


 大吉はもう訂正を諦めた。


━━━━━━━━━━━


「名前を教えてくれ!」


 騎士が熱く手を握る。


「福良大吉です」


「大吉……!」


 騎士は目を見開いた。


「なんと縁起の良い名だ……!」


「いや普通の名前――」


「救世主・大吉!!」


 その瞬間。


 大吉の意識が遠のいた。


━━━━━━━━━━━


「――大吉!」


 目を開ける。


 自室だった。


「電気つけっぱなしで寝るんじゃないの!」


 母親が呆れている。


「ちゃんと布団で寝なさい!」


「……夢?」


 大吉は周囲を見回した。


 白い女はいない。


 スマホも普通。


「助かった……」


 本気で安心した。


━━━━━━━━━━━


 翌日。


 登校した大吉を見て、唯が青ざめた顔をした。


「……え?」


 まるで幽霊を見るような目だった。


 その後。


 数日で学校中に妙な噂が広がる。


『安里さんが送った呪い動画、福良君だけ助かったらしい』


『しかも呪い消えたって』


『連鎖断ち切ったんじゃね?』


 女子たちは騒然としていた。


 一方、大吉本人は。


(もうホラー動画は絶対見ない……)


 本気でそう誓っていた。


━━━━━━━━━━━


 一方その頃――異世界B。


 大聖堂跡地。


 騎士は聖母像の前で跪いていた。


「あの御方はいったい……」


 邪悪なる教団を滅ぼし。


 白き精霊を従え。


 世界を救った救世主。


「きっと神の化身だったのだ……」


 騎士は祈りを捧げる。


 後にこの世界では。


 白い衣の精霊を首に抱きつかせた青年の像が建てられる。


 その名は――


『救世主・大吉と白き精霊』。


 以降、異世界Bでは永きに渡り信仰され続けることとなるのだった。

第2話を読んでいただき、ありがとうございました!


前回は「わさびで竜王撃破」、

今回は「呪いを悪司祭に押し付けて撃破」でした。


大吉本人は毎回ひどい目に遭っているだけなのですが、

異世界側では着々と伝説の救世主になっています。


しかも今回は、

白い服の女まで“白き精霊”として神格化されました。


たぶん本人(本霊?)も困惑しています。


また、唯がなぜ呪い動画を送ったのか、

学校でどんな噂になっているのかなど、

現実世界側も今後少しずつ描いていく予定です。


「こういう勘違い系好き!」

「毎回オチが楽しみ!」

と思っていただけたら、

ぜひブックマークや評価をいただけると励みになります!


感想もすごく嬉しいです!


次回もよろしくお願いします!

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