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わさび大トロで竜王を倒した高校生

はじめまして、作者です。


「もし異世界転移した高校生が、実力ではなく“運”だけで伝説になったら?」


そんな思いつきから、この作品を書き始めました。


記念すべき第1話では、

回転寿司のわさび大トロによって異世界の竜王が倒されます。


たぶん世界初です。


基本的には、

・主人公はわりと普通

・でも運だけは異常

・異世界側が勝手に勘違いして神格化

という感じの、ゆるめのギャグファンタジーになります。


少しでも「続きが気になる」「なんか好きかも」と思っていただけたら、

ブックマークや評価をいただけるととても励みになります!


それでは、

『高校生の大吉』の物語をお楽しみください!

 福良大吉ふくらだいきちは、生まれつき運が良かった。


 それはもう、本人ですら「ちょっとおかしい」と思うくらいには。


 子供の頃、近所の福引きで特賞のゲーム機を当てたことがある。


 小学生の時は、遠足のお菓子交換でなぜか高級チョコばかり集まった。


 中学時代には、友人に頼まれて引いたソシャゲのガチャで最高レアを三連続で当てたこともある。


 もっとも、本人はそれを自慢するつもりはまったくなかった。


「まあ、運がいいのは得だよな」


 くらいにしか思っていない。


 そして今日もまた、その強運が発動していた。


━━━━━━━━━━━


『RTしたら寿司全皿無料になるかも!?』


 そんな回転寿司チェーン『寿司吉すしきち』のキャンペーンを、何気なくSNSで見かけたのが昨日の夜。


 大吉は軽い気持ちでリポストした。


 すると翌朝。


『おめでとうございます! 当選しました!』


 本当に当たった。


「……マジか」


 ベッドの上でスマホを見つめながら、大吉は呟く。


 しかも当選内容はかなり豪華だった。


【寿司全皿無料】

【高級ネタも対象】

【本日限定】


「太っ腹すぎるだろ……」


 普通こういうのは、一貫無料とか、味噌汁サービスとか、その程度だと思っていた。


 だが今回は違う。


 本当に“全皿無料”らしい。


「これは行くしかないな」


 今日は日曜日。


 学校も部活もない。


 家でゲームして過ごす予定だったが、無料で寿司が食べられるなら話は別である。


 特に大吉は寿司が好きだった。


 いや、かなり好きだった。


 特に大トロ。


 あの口に入れた瞬間にとろける脂。


 幸福感が脳を直撃する感じ。


「今日は大トロ祭りだな……」


 財布を持たずに済む解放感もあり、大吉は機嫌よく家を出た。


━━━━━━━━━━━


 昼時の『寿司吉』はかなり混んでいた。


 家族連れ、カップル、学生グループ。


 店内は賑やかで、寿司レーンの回転音と注文音が響いている。


「いらっしゃいませー!」


 元気な店員に迎えられ、大吉はスマホ画面を見せた。


「あ、無料券当選のお客様ですね!」


「はい」


 その瞬間。


 カウンター奥で魚を握っていた大将の眉がピクリと動いた。


「……チッ」


 小さな舌打ち。


 大吉は聞こえなかった。


「こちらのお席どうぞ!」


 案内された席に座る。


 タッチパネルを見ながら、大吉は心を躍らせていた。


(まずは大トロ十皿くらい行くか?)


 そんなことを考えていた、その時。


 厨房の奥からヒソヒソ声が聞こえてきた。


「あいつか? 無料券当てた奴」


「はい、大将」


「最悪だぜ……。こういう奴に限って高いネタばっか食うんだ」


「大トロ全部食われたら利益飛びますね……」


「……よし」


 大将の目がギラリと光る。


「あいつの大トロ、わさび超特盛にしてやれ」


「えっ?」


「泣くほど辛くしてやる。二度と来たくなくなるくらいになァ!」


 店員は少し引いていた。


 だが職人歴三十年の大将は本気だった。


「無料だからって調子乗る客には教育が必要なんだよ!」


━━━━━━━━━━━


 一方その頃。


 大吉はまったく知らずにワクワクしていた。


「お、大トロ来た」


 レーンの向こうから、艶やかな大トロが流れてくる。


 見るからに美味そうだった。


 だが。


「……ん?」


 少しだけ違和感がある。


 ネタとシャリの間が妙に盛り上がっている。


 不自然にこんもりしていた。


(なんか分厚いな……)


 しかし空腹だった大吉は、そこまで気にしなかった。


「いただきます」


 一口でいく。


 瞬間。


「――――ッッッ!!?」


 地獄だった。


 鼻を突き破る刺激。


 脳天へ直撃する暴力的辛味。


 目、鼻、耳、全部が熱い。


「がッ!? か、ら……ッ!?」


 尋常ではない。


 涙が噴き出す。


 呼吸ができない。


 頭が真っ白になる。


(わさび!? これわさび!?)


 次の瞬間。


 大吉の意識はブラックアウトした。


━━━━━━━━━━━


「……あれ?」


 気づくと、大吉は知らない場所に立っていた。


「ここ、どこだ?」


 辺りは赤黒い岩肌。


 空気は熱く、肌が焼けるようだった。


 そして。


「うわっ!?」


 足元を見て、大吉は飛び退く。


 下にはマグマが煮えたぎっていた。


 ゴボゴボと泡立ち、真っ赤な熱を放っている。


「え、待って待って!? 何ここ!?」


 どう見ても日本ではない。


 テーマパークでもない。


 現実感がおかしかった。


「地獄……?」


 そう呟いた瞬間。


 遠くから爆音が響いた。


 ドゴォォォン!!


「な、何!?」


 振り向く。


 すると。


「――光よ! 奴を貫け!!」


「ぬうううんッ!!」


「魔王め! ここで終わりだ!」


 まるでゲームみたいな光景が広がっていた。


 鎧を着た男女。


 巨大な剣。


 魔法陣。


 そして。


 黒いマントを纏った、圧倒的威圧感の男。


「我に挑むとは愚かな勇者どもよ」


 その背後には巨大な竜の幻影。


 どう見てもラスボスだった。


「……コスプレ?」


 大吉は思わず呟く。


 完成度が高すぎる。


 CGかと思うレベルだ。


「君! 危ない!」


 金髪の勇者風青年が叫ぶ。


「そこから離れろ!」


「え? 撮影ですか?」


「何を言っている!? 奴は竜王だぞ!」


「りゅ、竜王?」


 その瞬間。


 竜王が片手を振った。


 轟音。


 暴風。


 巨大な竜巻が発生した。


「うわあああああ!!」


 勇者パーティが吹き飛ばされる。


 岩壁に叩きつけられ、倒れ込んだ。


 血まで流れている。


(……え?)


 大吉の顔から血の気が引いた。


(これ、本物?)


 ドッキリでも撮影でもない。


 本当に命懸けだ。


「次は貴様か」


 竜王がゆっくり近づいてくる。


 禍々しい剣を抜きながら。


「ヒッ……」


 足が震える。


 逃げたい。


 だが逃げ道がない。


(やばい……死ぬ……!)


 武器なし。


 魔法なし。


 戦闘経験なし。


 あるのは。


(通信教育で習った空手くらい……!)


 昔、親に勧められて少しだけやったことがある。


 動画教材を見ながら正拳突きを練習した程度だ。


 実戦経験ゼロ。


 でも。


 やるしかなかった。


「う、おおおおおッ!!」


 大吉は半泣きで突っ込んだ。


 そして。


 渾身の正拳突き。


 ――コツン。


 情けない音だった。


 腰も入っていない。


 子供のパンチみたいな威力。


(終わった……)


 大吉は絶望した。


 だが。


「ぐ、ああああああああああッ!!?」


 絶叫したのは竜王の方だった。


「な、何ィィィ!?」


 竜王が胸を押さえて苦しみ始める。


 煙が上がる。


 肉が焼ける音までした。


 実は。


 勇者との戦いで、竜王の胸には深い傷ができていた。


 そこへ。


 大吉の手の甲についていた“激盛りわさび”が直撃したのである。


「ぐあああッ!! こ、この刺激は何だァァァ!?」


 竜王は転げ回った。


「痛い痛い痛いッ!! 熱いッ!!」


 そして。


 足を滑らせた。


「あっ」


「ぬおおおおおおおおおお!?」


 ズドォォォォン!!


 竜王、マグマへ落下。


 断末魔を響かせながら沈んでいった。


 静寂。


「…………」


 大吉も勇者たちも固まっていた。


 最初に口を開いたのは勇者だった。


「た、倒した……?」


「竜王を……一撃で……?」


 仲間たちが震えている。


「伝説級の勇者ですか……?」


「いや、俺ただの高校生なんだけど」


「高校生……!」


 勇者たちに衝撃が走る。


「なんという高位ジョブだ……!」


「聞いたこともない……!」


「さすが伝説の異界人……!」


「いや違っ――」


「お名前を!」


「福良大吉です」


 勇者たちは顔を見合わせた。


「『高校生』の“大吉”……!」


「なんと神々しい……!」


「救世主だ……!」


「いやだから違――」


「王国へ来てください!」


「王が歓迎するでしょう!」


「絶対面倒くさいから嫌です!!」


 大吉は全力で断った。


 ゲーム知識だが、王様や貴族は大体面倒なイベントを押し付けてくる。


 巻き込まれたくなかった。


 すると。


『……おい! 君! しっかりしろ!』


 突然、声が響いた。


 景色が歪む。


 世界が白く染まる。


━━━━━━━━━━━


「――お客さん!!」


 目を開ける。


 そこは寿司屋だった。


「気がついた!?」


 目の前には救急隊員。


 店員。


 そして青ざめた顔の大将。


「だ、大丈夫ですか!?」


「え……?」


 大吉はぼんやりと周囲を見た。


 夢……?


 いや、妙にリアルだった。


「お、お客さん、本当にすまねぇ!!」


 大将が土下座した。


「わさび入れすぎたの俺なんだ!!」


「えっ」


「魔が差したんだ!! 許してくれ!!」


 店内の客たちもドン引きしている。


 救急隊員も呆れ顔だった。


「お詫びにこれを……!」


 差し出されたのは一枚のカード。


【寿司吉 永久無料VIPカード】


「……え?」


「一生無料です!!」


 大吉はカードを見つめた。


 そして。


(めちゃくちゃラッキーでは?)


 さっきまで死にかけていた気がするが、結果だけ見ると得しかしていない。


「……まあ、いいか」


 単純だった。


━━━━━━━━━━━


 その夜。


 大吉は家で寝転がりながら考えていた。


「でも、あれ何だったんだろうな……」


 異世界。


 勇者。


 竜王。


 高校生の大吉。


 妙にリアルな夢だった。


 だが結局。


「疲れてたのかな」


 そう結論づけた。


 一方その頃――


━━━━━━━━━━━


 異世界。


 竜王城跡地。


「救世主は消えてしまった……」


 勇者が呟く。


「あの方はいったい……」


「きっと神が遣わした勇者だ」


「“高校生”という伝説の職業……」


「その名は大吉……」


 後に。


 この世界では何百年にも渡り、一人の英雄譚が語り継がれることになる。


 竜王を一撃で滅ぼし、忽然と姿を消した伝説の救世主。


 その名は――


『高校生の大吉』。

第1話を読んでいただき、ありがとうございました!


わさびで竜王が倒れるという、

我ながらかなり勢いで書いたお話でしたが、

楽しんでいただけたなら嬉しいです。


大吉本人は「変な夢だったな」くらいにしか思っていませんが、

異世界側ではとんでもない救世主扱いされています。


今後は、


・異世界でどんどん神格化される大吉

・本人は平凡に生きてるつもり

・ラッキーだけで事件を解決

・なぜか増えていく伝説


などを書いていく予定です。


「こういう勘違いコメディ好き!」

と思っていただけた方は、

ぜひブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!


感想もすごく励みになります!


次回もよろしくお願いします!

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