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魔剣に転生したけど使い手がチート過ぎて私の存在価値が危うい  作者: ゆとりの和田
第二章 木の精霊剣
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学園と日記

 城塞都市ガドを出て数日。私たちは学術都市シャーロットへ到着していた。人があふれていたガドとは違い、どこか落ち着いた雰囲気がある。露店は少なく、それぞれが店を構えている。


 「ずいぶん雰囲気が違うね」


 翔(マスター)がポツリと感想を漏らす。通りに並ぶ建物を一軒一軒見回しながら、あれこれ感想を呟いている。


 「ここは研究者が集う町だから、自然と大人しい人たちが多くなるかもしれないわね」


 「遠くに時計塔が見えるけど、あれがこの町の中心かな?」


 「ええ、そうよ。あそこに魔法について学べる学園があるわ。授業を聴くだけなら無料だし、行ってみるのも良いんじゃないかしら」


 途中、雑貨屋に寄り軽く日常品を揃える。ついでに近くのカフェで持ち帰り用のスイーツを購入した。はたから見れば完全に観光気分である。


 「このままのペースで歩けば、ちょうど授業が始まるころに学園に着くわね。……ん、このプチケーキ、シロップが甘くておいしい」


 「そうだね、ところで口元に付いてるよ」


 私が自分でふき取る間もなくマスターが指でクリームをぬぐい取った。ぬぐい取ったはいいが、どうするかしばらく迷っていたようで、結局マスター自身が指でなめとっていた。


 おい。何をしている。これでは私たちがアベックのようではないか。そして自分でやっておいてはにかむな。こちらまで恥ずかしくなってくる。






 学園に着くと、多くの学生がキャンパス内を行きかっていた。小さい子供もいれば、中年に見える人もいる。まあ、大半は十五から二十歳くらいの学生だ。中には教師らしき人物がベンチで講義資料の確認をしている姿も見える。


 「ずいぶん色々な人がいるね……まるで大学みたいだ」


 「学ぶに遅きはない、が学園の掲げる理想らしいわ。どんな年齢だろうと学費さえ払えば教師に質問をする権利が与えられる。まあ、中には卒業資格だけが目当てで勉強はどうでもいい、なんて学生もいるらしいわ」


 「学園を卒業すると、なにか良いことがあるの?」


 「簡単に言えば、就職に有利になるわね。学園の課題をこなす程度の能力、雑な言い方をすれば言われたことはこなせますよ、という証明になるから」


 そのあたりの就職事情は異世界でも変わらないのかな、などとマスターが呟いている。


 「ちょうど今は入学シーズンのようだし……基礎の授業に顔を出してみたらどうかしら。後ろの席に黙って座っているだけなら何も言われないわよ」


 「そうだね。ちょっと興味あるし、聴くだけ聴いてみようかな」




 教室に入ると、生徒がまばらに席についていた。ちょうどよくドア近くの後方の座席が空いていたため、席について授業の開始を待つ。程なくして教師がやってきて授業が始まった。


 始まったのは魔法学の基礎――この世界の魔法を支える五つの属性についての授業だった。


 魔法は五つの属性に分かれている。すなわち、木・火・土・金・水である。


 「火は炎と言ったりもする。……炎と呼ぶのは古い人間が多いが、間違いではないから誰も訂正はしない。君たちも好きな方で呼ぶといいだろう」


 などと教師が言った。古い。古いとな。良いじゃないか。火より炎の方がかっこいいだろう。


 ふと気づくとマスターが笑いをこらえていたため、軽く小突いてやる。反省している、と口では言っているが内心はどうだか。木の精霊剣も内心では馬鹿にしていたに違いない。


 授業は滞りなく進み、生徒からの質問にいくつか答えたところで終わりの時間を迎えた。


 私とマスターも学園を後にした。それなりに時間はつぶせたが、夕食にはまだ早い。そんな時間だ。


 「古書店か、どんな本があるのかな?」


 どうやらマスターは古書に興味を示したようだ。古書店に入ると、独特のにおいに包まれているのがわかる。ざっと本棚に目を通してみる。各属性魔法の入門書、数学の専門書、文芸書にゴシップ誌まである。この店は守備範囲が広いようだ。


 「値段も安いし……何冊か買ってみようかな」


 「良いんじゃないかしら。特に歴史書なんかは、マスターにとってみれば架空戦記みたいなものでしょうし」


 幸い、所持金には余裕がある。さらに古書だからか値段も安い。マスターは適当に目を付けた本を次々とかごに入れていく。


 「鍛冶師シロウについての本もあるね。メルのことも載っているのかな?」


 「さあ……私は作られあと、使われることなくあの森に放置されたから。シロウ自身が言いふらさない限り、あまり資料に残っていないかもしれないわ」


 その後もしばらく店内を散策していると、マスターが奇妙な声をあげた。


 「どうしたの?」


 「この本なんだけど……」


 マスターが手に取った本には、この国では使われていない文字があった。――いや、この文字を私はどこかで見たことがある。具体的には千年以上前、前世で。


 「日本語……僕の国の言葉で書かれてる。どうやら日記みたいだね」


 マスターがパラパラと日記をめくる。数十ページめくったところで、手が止まった。


 「……木の精霊剣と出会った……?」


  どうやら、次の目的地が決まりそうである。

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