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魔剣に転生したけど使い手がチート過ぎて私の存在価値が危うい  作者: ゆとりの和田
第二章 木の精霊剣
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魔法書と目的地

 宿の手続きを済ませ、今後の方針を話し合う――前に食事をすることとなった。やや小洒落たレストランに入り、注文を済ませる。店内にはクラシックな音楽が流れ、時折近くのテーブルでの話し声が聞こえる程度である。


 店員がカウンターの奥へ消え、しばし時間が空く。その間、翔(マスター)が購入した古書に目を通す。私が適当に手に取ったものは、火の初級魔法に関するものだった。


 「マスター、魔法に興味があるのかしら?」


 「そりゃあね。僕だって男の子だし、憧れくらいはあるさ」


 そういうものだろうか。男女関係なく、異世界に来たら魔法を使いたくなりそうなものだが。まあ、マスターもそういう意味で言ったわけではないだろう。純粋に、単純に興味があるから買った。それだけだろう。


 「他の属性の本は買わなかったのね」


 「僕が契約したのはメルだからね。他の属性は使えないのかなって思って」


 「えっ」


 当然そんなことはない。基本的に、人は全属性の魔法が使える。もちろん、得意不得意はあるし、魔力量によって使える魔法や威力に差は出る。出るが、使えないということはないのだ。


 マスターの勘違いを訂正しようとしたタイミングで、ちょうどよく料理が運ばれてきた。すぐさまマスターが食べ始めてしまったので、なんとなく機会を逃してしまった気分になる。


 気を取り直して、私も食事を始める。今回のメニューは鶏肉を香草で蒸し焼きにしたものだ。皮はカリカリに焼かれていて、肉は噛むほどに汁があふれてくる。少し塩味が強いが、それがまた食欲をそそる。


 添えられている野菜炒めも美味い。しんなりとした野菜の味を楽しみつつ、再び鶏肉を口に運ぶ。口にあるものを全て飲みこみ、発泡酒を煽る。のど越しがたまらない。


 「ところで、さ」


 マスターが遠慮がちに口を開いた。私も食事の手を止め、マスターの顔を見る。


 「木の精霊剣ってどんな人……人? 精霊? なのかな」


 少しぎくり(・・・)、とした。ひょっとしたらマスターの興味が私から木の方へ移りつつあるんじゃないかという考えが頭をよぎる。


 いや、変な意味はないんだけどとマスターが慌てて弁明を始める。私は特に何も言っていないんだが、どうやら言葉を選びながら話しているようだ。


 「寄生剣は僕を狙ってきていたわけだし、精霊剣の方も僕を退治しようとしてこないかなって」


 「ああ、そういうこと……」


 とはいえ、難しい問題である。正直に言うと、私もよくわからない。私はこめかみに手を当て、少し考える。


 「私はマスターに対して嫌悪感……というか、魔物と同じ気配を感じてはいないけど、木がどう感じるかはわからないわね。私より後に作られているから、私にはない機能を付けられている可能性もあるし」


 そこは会ってみなければわからない。私は再び発泡酒を口にし、話をつづけた。


 「ただ、会ってみる価値はあると思うわ。前も言ったかもしれないけど、木は独特の情報網を形成しているから。魔物についての情報や、あるいはマスターが元の世界に戻る方法なんかも知ってたりしてね」


 「元の世界か……」


 「何よ、乗り気じゃなさそうね。ここに永住するのかしら?」


 「それも良いかなって。まあ、時間はたっぷりあるだろうし、その辺りはこの世界をもう少し見て回ってからにするよ」


 見て回るほどの世界がまだ残っているかは疑問であるが、そこは言わないでおく。せっかくの食事が不味くなるし、知ってどうにかなるものでもない。


 「それに今は、メルとの旅が楽しいし」


 微笑む顔がサマになっている。こういうとき童顔のイケメンは卑怯である。笑うだけで絵になる。







 マスターと共に部屋に戻り、ランプ草に火を灯す。ランプ草はコップ状の花弁の中心にあるめしべに火を灯すことで、明かりと香りを楽しむことができる花だ。茎に蓄えられた油がめしべから少しずつ染み出していると聞いたが――まあ、手軽に楽しめるアロマみたいなものと考えればいいだろう。


 さて、古書店で手に入れた日記を読んでみることにした。どうやら五十年程前に書かれたもので、この世界に転移してからの記録が鮮明に残されていた。


 私たちに必要な情報――木の精霊剣と出会った場所は、日記の終わりの方に書かれていた。


 「この場所だと……ここから二つ目の山の辺りね。それなりに準備は必要でしょうけど、行けないことはないわ」


 「結構前の情報みたいだけど、今もいるのかな?」


 「それはまあ……行ってみないとわからないわね。いなかったら次の町に進むなり、ここに戻るなりすれば良いだけよ。ただ……」


 「何かあるの?」


 マスターに伝えるべきか少し悩んだ。帽子を押さえ、結局、少しだけ話すことにした。


 「一つ目の山を越えた先に見えるものが問題なのよね」


 「……問題?」


 「魔物がいるのよ。少し……と言っていいのかわからないけど、特殊な魔物がね。まあ、見た方が早いわ。その時に説明しましょう」


 夜も更けてきた。話も一区切りついたため、明日に備えて休むこととなった。木の精霊剣と出会うのは数日後になるだろう。何事もなければ良いのだが……やはり、何かが起きる予感は拭えない。何も起こらないか、何かが起きても解決できることを祈るだけである。


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