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Fragment of Memories  作者: 詩空
第一章 リーザリア・エルフェルド
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1-8 暴挙と実質初戦闘


「んじゃあ、トア。まずは何も考えずに、思うがままに動いてみろ!」

「何その放任主義!?」


 飛び出した直後、キョウがいきなり無責任すぎる発言を飛ばしてきた。ある程度の動きぐらいレクチャーしてくれると思ってたのに。


 思わず言い返すと、短く返答が返ってくる。


「下手に口出すより、自分が出した動きを洗練させていく方がよっぽど強くなれるからな! つーか俺だって元々は素人なんだから、そんなの期待すんな!!」


 確かにその通りだけど、その通りなんだけど――


「笑いながら、言うなー!」

「ハハッ、大丈夫だ! 俺から見ても駄目そうな動きがあれば後で教えてやるから、今は好きに動け!」

「もし下手うったら助けに来てよ!」

「おう、任せてけ!」


 ミニゴブリンの群れにある程度近づいた頃、流石に向こうもこちらに気付いたらしくそれぞれが武器を構えて向かってきた。


「気付かれたか。トアはそのまま左から回り込め!」

「わかった!」


 その言葉を合図に私も剣を引き抜きながら、左側に弧を描くように進路を変える。まだそれなりの距離は開いてるけど、このペースだとすぐに埋まるか。


 んー、もう少しだけ早く走れる……かな。


 あと少しまで近づいたらタイミングをずらしてみよう、多少は不意を突けるかもしれない。スライムよりよほど強いらしいから、警戒は十分に。シズクみたいな蹂躙は出来ないし。


 もうちょっと。――よし、ここだ。


 残り3メートル程。そこまで近づいてから、一気に速度を上げる。

 私の速度が急に上がったのに怯んだのか、相手の動きが止まった隙を突いて後ろを取り、斬りかかる。今の攻撃力なら三撃で倒せるか。


 始めの一体を倒したところで、向こうも態勢を整えて斬りかかってきたのを避ける、避ける、避ける……ってあれ? なんか、数多くないかな。あれ?


 えーっと。ひーふーみー……九、匹?


 ちょっと、ちょっと待ってキョウは何やってるの!?


 攻撃を避けながら辺りを見回してみると、いつの間にかキョウがシズクのところに戻っていた。なんで?


「ちょっと、キョウ!!」

「お、なんだー!」

「何でキョウも戦ってないの!?」

「何でも何も、別に俺も一緒に戦うなんて言ってないぞー!!」


 え、あれ? ……あ、確かにシズクは手を出すなってしか言ってない。

 って、まさか。飛び出す前にシズクが不機嫌そうな顔してたのって、これの事だったの? ……嵌められたのか、あの馬鹿に。


「大丈夫だって! 危険になったらちゃんと助けに入るから!!」


 だからと言って私に何も、たったの一言も無しにこんな事するかな?


 アハハッ……流石にちょーっとだけ頭に来たよ。うん。


 そっかそっか。なら、やろうか。


「あの、キョウさん。ちょっとヤバいですよ、お姉ちゃん頭に来てますって」

「え、マジ?」

「はい」

「あー……やっちゃったか。大丈夫だと思ったんだけど、ヤバいな。逃げる準備しとかないと」


 シズクとあの馬鹿が何か話してるようだけど、そんなの知るか。後であの馬鹿は殴るとして、今はこの状況をどうにかしないと。


 避ける、避ける。


 避けてるだけじゃ何時までたっても抜け出せないけど、囲まれてるから攻撃に回れないな。どうする――っと、焦れたのが丁度良い具合に突っ込んできた。こいつを使えばいけるか。


 飛び込んできたミニゴブリンを上手いことを誘導して、後ろに突っ込ませれば……。よし、囲みは崩せた。これで突っ込んできたのと、巻き込ませた合計四匹が動けないはずだから、次は正面。

 正面に開いた隙間に飛び込んで、すれ違いざまに右の一匹に一撃、振り向いて更に二撃追加。残り八匹。


 そのままの流れでさっきの隣のを足払い。右から斬りかかってきたのを受け流し、転ばせたのに追撃させて、まとめて二匹斬り裂いて処理。残り六匹。

 二方向から飛び込んできた二匹の攻撃を飛びずさって避けて、転がってきたところにとどめ。


 巻き込ませて倒れた残り四匹はまだ態勢を立て直せていないから、そのまま纏めて処理。これで全部。


 よし、殲滅確認。次はあの馬鹿だ。


「なぁシズク、トアが凄い勢いで突っ込んで来てるんだけどどうにかしてくれないか!?」

「無理です。自業自得なんですから諦めてください」

「んな薄情な!」

「どの口が言うんだ、この馬鹿が!!」


 いまだにグダグダと逃げようとしてた馬鹿に、全力で拳骨をかまして終了。反省しろ。


 この後? もちろん説教しましたが何か。




「よーっし、まぁこんなもんだろ」


 キョウのあの暴挙から五時間ほど経過した。


 あれからシズクのスキルが発動することやキョウが暴挙に出る事もなく、敵を倒しながら順調に先に進んで行き、3つ目の中継地点まで到着してただいま休憩中。


 この五時間の間、意外と色々起きた。シズクのスキルは発動しなかったけど、事が起きるときには起きるものです、と少し実感した。


 例えを挙げるなら、説教してから移動し始めてすぐにウルフの群れに遭遇したりとか、ある程度歩いたところでミニボアの群れに襲われたとか。

 他にも、攻撃を受けても痛みが特にある訳でも無いのを確認できたのは良かった。もし痛みがあったらと思うとどうしても怯むし、戦闘もし難くなるからね。


 そうそう、あの後からレベルが累計で4つほど上がった。色々とハプニングがあったけれど、それでもこの短時間で7レベルまで上がるとはキョウも思わなかったらしい。かなりの数の群れと遭遇したもんね。

 というかこのゲーム、意外と遠慮容赦がないと思う。モンスターの一匹一匹はそこまで強くないけど、最初から普通に群れで襲い掛かってくるし。だいぶ疲れたよ。


 まぁ、そんな今のステータスはこんな感じ。



 NAME:トア Lv7 残SP:3

 HP:871、MP:504、ATK:223、DEF:171、INT:226、MIND:194、STR:167、VIT:203、DEX:213、AGI:238

 武器スキル:剣、触媒

 魔法スキル:なし

 補助スキル:下位DEF強化、熟練度上昇量増加(50Lvまで)




 下位DEF強化の性能が上がったらしく上昇幅がちょっとだけ上がったみたいで、思ったよりDEFの値が上がったんだよね。SPも増えたし、そろそろ次のスキルを取り始めても良い頃なのかな。


 少し悩み始めた頃、キョウがこれからどうするか話し始めたから、とりあえず今は頭を切り替えよう。


「森に一番近い中継点まで来れたし、少し休みをいれてトアのクエストは夜にやる……にしては条件が悪いな。明日の午前中で良いか? 夜に森エリアの探索と攻略は見通し悪すぎて対策しない限り面倒だし。

 それに申し訳ないけど、午後からはちょっとβからの仲間と会う約束があってさ。今日と明日の午前中くらいしか二人に付きっきりになれる時間取れなかったんだ」

「私はそれで良いよ、大丈夫。シズクはどうする?」


 私的には特に問題は無いし、キョウにずっと一緒に居て貰う訳にもいかないからそれで良いかなーって感じだけど、シズクはどうなんだろ。


「うーん……。そうだね、お姉ちゃんを手伝うのは決めてたことだし大丈夫だよ。でも個人的に気になることがあってさ、午後からはちょっと一人で色々見てみたいかなって思ってるんだけど、良いかな」

「大丈夫、シズクにもずっと一緒に手伝ってもらうって訳にもいかないし、私も色々見て回りたかったしね。皆で観光とかもいいだろうけどさ」


 やっぱり、初めてみんなで出来るって言っても四六時中一緒にってのもね。それに、こういうのって知らない人と仲良くなって固定パーティを組むのも醍醐味だろうし、楽しまなきゃそれこそもったいない。


 度々一緒にパーティ組んで遊ぶのが一番なのかな、こういうのは。


「そうだな、いっそのことトアのクエスト完了したら二人ともパーティメンバー探してみたらどうだ? やっぱり醍醐味だろ、こういうのってさ。気の合う仲間と一緒に遊ぶのも楽しいもんだし」

「ですかね?」

「行き摺りで組むってもの乙かもしれないけど、やっぱり固定の仲の良い仲間がいるのは楽しいぞ? トアを一人にしたり、他の人に任せるのは少し不安が残るけど」

「そうですか……。うん、それも楽しそうですね。私も少し探してみる事にします」


 少し聞き捨てならない言葉が聞こえて来たけれど、きっとシズクは良い人に恵まれる気がする。何となくだけどね。


 まぁ、そんな私は行き摺りで組む方が多そうな気がしてたり。

 正直な所、今までずっと他の何の問題のない人より制限の遥かにかかった暮らしをしてきたせいか、一人で自由にいろんな事をやってみたいって思ってて、それであんまりずっと同じ人と組んでいくって気にはならないから。だったらさ、その時その時で適当に組んでやっていく方がよっぽど今の自分には向いてる気がするんだ。


 いや、絶対にそうなるって訳じゃないけどね。意外と気が変わるかもしれないし。


「でも無理して探す必要もないから、好きにやるといいさ。とりあえず今日の夜は自由って事で良いか? 今日はもうこれ以上やれることもなさそうだし」

「うん、良いよ」

「私もそれで大丈夫です。ところで、街には歩いて帰るんですか?」

「ああ、ここの中継点なら両通の転移ポータルがあるはずだから気にしなくて大丈夫だよ。でまぁ、もしポータルが無い場所だったら歩いて帰るか、そのままログアウトになるな。中継地点なら即時ログアウトできるし」


 へー。ポータル自体は知ってたけど、両通なんてものもあったんだ。

 そう言った事はあまり詳しく書かれてなかったから、細々とした事はまだまだ分かってないからなぁ。確かめてみる事も多そう。


「んじゃ街に戻るか」

「はい」


 それから、シズクとキョウの達成報告に付き合うためにギルドに行った後、幾つかアイテムを補充してから解散して、それぞれ現実に戻っていった。


第5回、単語解説のコーナーです。


パーティ:最大7人まででパーティを組むことができて、パーティを組んでいる間、一定範囲を越えなければ他のパーティメンバーが倒した敵の経験値やドロップアイテムを入手することができる。


ポータル:街やフィールド上に点在している安全地帯、ダンジョン内に存在する転移装置。街にあるポータル同士は両通だが、それ以外の場所のポータルは基本的に片道通行だが例外として、たまに両通のポータルも存在する。


何だか次話ではまた無い気がしますが、今回はここまでです。また次話で会いましょう。

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