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Fragment of Memories  作者: 詩空
第二章
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3-5 一つ、取り戻したもの


「エニグマさん!」

「応とも!」

「ふっ!」

「せいっ!」

「やっ!」

「ファイアボール!」

「ウィンドカッター!」


 あれから順調に進み続けて、およそ二時間が経過していた。

 けれどここまで進む間、最初の予想通り私たちの出番はまるで無かった……と言うよりは、必要すらなかったかな。


 だって、大体のモンスターはフィアとシズクが一瞬の連携の内に倒してしまってるし、ふと現れた初めて見たゴーレムは、フィアとエニグマさんが初めて会ったとは思えないほどに息の合った連携で抑え込んで、その間にシズクとキョウ、そして僅かながらもコーディアさんが叩きのめしていた。

 そして空から強襲してくる大きな鷲のような姿をしていたリーグルは、アリスが的確に羽を射抜き、怯んだ隙にエルとミツキさんが魔法で撃ち落としていく。


 ……本当にやる事ないね、私たち。


 後ろからの不意打ちされないように警戒はしてるけど、それでも必要ない気がしてしまう。


「やる事……無い、ね。トアお姉さん」

「だねぇ……」

「ですが、このまま何もしないというのもどうかと思うのですが」

「だからと言って変わってもって感じがするけどね。この並びが、現時点では一番の適材適所だし」

「そうなんですよね……」


 ゴーレムと戦ってるシズクたちを見ながら、そんな話をする。

 これ以上前衛が増えたら、逆に足を引っ張り合う未来しか見えない。


 まぁ、温存できるところでは十分に温存して置ければ、後々楽になるかもしれないし。これはこれで今は良いんじゃないかとは思う。

 少し不甲斐無いとは思わないでもないけどさ。


 でも、今のこの状態を見てるとそれも仕方ないよねと思うのもまた事実で。


 どうしようもないよね、これは。


「けど、このままだとレベルは上がっても私たち自身は成長しないから、あんまり意味無いのも確かだよね」

「ですね」

「ん。わたしも、隠密上げたいけど……あそこには混ざりたくない」


 セラちゃんにまで言われる始末である。

 のんきにそんな話をしていると、不意に前線の方で動きが起きた。


「はぁ! ――って、やばっ」


 シズクがゴーレムに向けて思いっきり大剣を振り下ろした瞬間、甲高い音を立ててそれが半分に折れる。


 あぁ……またシズクが武器を折ったんだね。


「おい、シズク!?」

「あー……いつもの事だから気にしないでください、っと!」

「は?」


 その事に驚いたキョウが思わず声をかけるけど、当のシズクはそんな事はどうでもいいとでも言いたげに返して――ゴーレムを一本背負いで放り投げた。


 ……あんな大きいゴーレムも投げれるんだね、シズクって。


 そして無理やり余裕を作ると、普通にストレージから新しい大剣を取り出している。


 うん、キョウの反応はよくわかる。

 私も最初は凄く驚いたから。


 だって、使ってた大剣が砕けたと思ったらその事なんて気にも留めないで無理やりに空白を作り出して、別な大剣取り出すんだもん。

 正直な話、驚くを通り越して呆れるよね。


 しかもそのせいで一度、鉄の大剣より強い風鉄の大剣を砕いたらしくて、それ以降はコスパの良い鉄の大剣を大量に買い込んで使い潰しているらしいし。


「シズクは相変わらずだね」

「ん。あれで壊した数、二十四本目」

「私たちが一緒に行くようになった時点で、もう三本ほど壊してましたしね……。本当に凄いペースで壊れますね」

「たぶん、武器の性能がシズクに見合ってないせいだろうから、それも仕方がないんじゃないと思うよ」

「なるほど。確かに、あの武器を平然と片手で振り回せる人にとっては全く見合ってないでしょうね。最低でも鋼製の大剣でもないと駄目そうですか」


 そこまで簡単に使い潰せて、ゴーレムを簡単に一本勢負い出来るシズクのSTRの値がおかしいだけな気もするけど、考えたところで仕方ないか。


 けどあれだね、今回はあの厄介なスキルは発動してないみたい。

 と言っても、あれが発動したのは私が知らないのを合わせても三回ぐらいみたいだから、あまり気にしすぎなくても良いのかな。


 あれが発動されると色々と面倒だから、出来るだけ発動されないと良いんだけど。


「シズク、お前はいつもあんな戦い方してるのか?」

「え? そうですけど。どうにも手が出せる範囲の武器は耐久力が低くて、どうやっても修繕する前に壊しちゃうんですよね」

「……そか。もう、何も言わないさ」


 あ、キョウが何かを諦めた顔してる。


 でも、流石に無駄が多いし、どうにかしてあの消費量を減らせないかな。

 シャーリーが使ってたリペアとかって魔法なら、武器の耐久値も回復できそうだけど。どの系統の魔法にあるのかわからないのがどうにも。


 ……いや、特殊魔法以外には考えられないか。


 もしそれに無かったら、この世界の人にだけ使えて、私たちでは使えない可能性が高い。

 前に息抜きで読んだ本の中に書いてあったと思うんだけど、あの時は気にしてなかったから覚えてないんだよね。


「なぁキョウ、目的地まであとどのくらいだ?」

「んー。予想よりも早く進んでるから、後三十分もかかんないと思うぞ? 予定外の何かが出るかもしれないから、一概には言えないけどさ」

「確かに四人で来てた時よりも進むスピード速いもんなー。あの時のキツさが何だったんだってぐらい楽だしよ」

「シズクが良い意味でも悪い意味でも規格外だからな、それも仕方ないだろ」

「それは俺も同意だな。彼女の一撃は惚れ惚れするほどに重い、真正面から受けてみたいほどだ!」

「面と向かってそんなこと言われても、あんまり嬉しくないですね……」


 普通は女の子に対して使う誉め言葉じゃないからね、当たり前だと思う。


「そりゃそうでしょ。エニグマさんとしては褒め言葉として言ってるんだと思うけど、普通は女の子に向ける言葉じゃないし」

「だな。そればっかりは俺もデリカシーが無いと思うぜ? エニグマ」

「むぅ。コーディアに言われるとは、なかなかに堪えるものがあるな」

「お前、やっぱり色々と失礼な発言多いよな? きっと俺より多いよなぁ!?」

「エニグマとしては下心は無いだろうから、お前よりは好意的に受け取られるほうが多いと思う」

「キョウ、お前もか!?」


 元気だね、前の人たち。仲も良いし。

 これが悪友って感じなのかな、私にはちょっとよくわからないけど。少し、羨ましい。……羨ましい?


 あれ、羨ましいって……あれ?


 わからない……いや、わからなかった? という事は、これは失くしていた感情の一つなんだろうか。


 もしそうだったのだとしたら、何で今更になって思い出せたんだろう。

 今まで似たような光景を見て来ても、何も感じなかったのに。

 そんな、よくわからない感情が渦を巻き始めたとき、頭を撫でられる感覚と腰辺りに軽い衝撃が走った。


 何が起きたのか確かめるように見てみると、私は優しい表情を浮かべていたクリアに頭を撫でられていて、少し不安気な表情を浮かべたセラちゃんに抱き着かれていた。


「トア」

「クリア?」

「そんな暗い顔をしてたら、また何かを抱え込んでるなんて誰でもわかりますよ。もっと、頼ってください」

「うん。お姉さんは、抱え込みすぎ……だと思う」

「セラちゃん……」


 確かにそうだ、もっと頼ろうって決めたのに。

 今までの癖はなかなか治らない、か。


 でも、おかげで荒れ始めてた感情が落ち着いた気がする。私もエル以外に、ちゃんと友達が出来たんだってわかったから。


「ありがとう。けど、二人のお陰でもう大丈夫だから」

「そう? ……なら、よかった」

「ええ。――ですが、前の方でまた違う動きが起きたみたいですね。トア、準備を」

「へ?」

「何か来ます」


 クリアのその言葉と同時に、前方の地面が揺れ始めた。


 何事かと思ってシズクたちの方を見てみると、何か赤黒い巨大な鋏のような物が地面から突き出ている。

 かなり大きい。(はさみ)だけでウルフくらいの大きさがありそうだけど……あれはいったい?


 そんな事を考えた瞬間だった、それが地中から完全に現れたのは。


「何だこいつ、初めて見るぞ!?」

「大きい……これだと、鉄じゃあちょっと辛いかな」

「あー。これは、あたしだけじゃ守り切れるかちょっとわからないな」

「大丈夫であろう、俺も共に支えるからな!」

「頼りになるね、エニグマさん」

「お前が頼りだからな、エニグマ!」

「お前はお前で足引っ張んなよ? コーディア」

「うっせ!」

「アリス、あれに弓は効きそうか?」

「むー……たぶん無理ー」

「見るからに堅そうやから、前衛が押さえてくれてる間に、うちとエルさんが魔法で対処するのが一番やろうねぇ。風魔法はあまり効果が無さそうやし」


 周りはいつの間にか、唐突に現れたあの巨大なモンスターの対処について考えていた。


 私も、一度頭を振って意識を切り替える。


 どうも相手は(さそり)のような姿をしているけど、生半可な強度では無さそうな外骨格を持ってる様子。

 普通の攻撃はあまり通りそうにないね。


 しかも大きさもかなりのもので、前に逃げ切ったフォレストボアよりも数倍も大きくて、あの針に刺されたら一溜まりもなさそうだ。


 それに、あの一対の鋏も十分に気を付けないといけない。挟まれでもしたら、簡単に千切られそうだし。


「クリア。あれ、どう思う?」

「スコルピオですか。ここに生息しているとは聞いたことは無かったのですが、そうですね……見るからに堅そうですけど、私とシズクならたぶん、あの殻を砕くのはそう難しくは無いと思います。かなり体力は多そうですが」

「そっか。セラちゃんはどうする? 関節部を狙えば私たちも対処できそうだけど」

「ん。わたしは……気配消して後ろから、やってみる。お姉さんは?」

「やるとするなら私は、速さを生かして攪乱と関節狙いかな。後は援護に戻ったり」

「わかった、わたしは行ってくるね」


 セラちゃんはそれだけを言い残して、すぐに向かって行った。


 私たちも動こうか。けど、その前に一つ。


「クリアも前に出た方がよさそうだから……うん。コーディアさん!」

「何かな、トアさん!」

「後衛の援護、クリアと変わってください!」

「え? あー……うん、わかった。そっちは任せてくれ!」


 コーディアさんは正確に意図を読み取ってくれたようだね。下手に説明する手間が無いからありがたい。


「ありがとうございます! 手が足りなそうだったら私も戻りますので! ――じゃあ行こう、クリア」

「はい!」



昨日はちょっとした用事があって仕上げきれなく、投稿することが出来ませんでした。申し訳ありません。

ですが今回、少し時間を置いた事でちょっと色々と思いついたので、二章が終わるまでの文量は元のペースに戻るかと思います。更新ペースは、早くともこのままですが。


それでは、今回はここまでです。

次話更新は次の日曜日になると思います。


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