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Fragment of Memories  作者: 詩空
第二章
48/55

3-3 あだ名

今話も少し短いです。


「ああ、トア。この人が急にセラさんに言い寄って怖がらせたので、思わず倒してしまったのですが……良かったんでしょうか」

「良いんじゃないかな? というか、そういった人には容赦しなくて良いと思う」


 何があったのか聞くために近寄ったら、クリアにそんな事を言われたから反射的にそう答えてしまったけど、あまり反省はしていない。


 情けなんてかけたら、次またどんなところで迷惑をかけた物かわかったものじゃないからね。

 だから容赦するだけ無駄。


 言い寄っただけでかなり怖がる人もいるんだから、その辺りはちゃんと考えて欲しいよね。やっぱり。


「あれ、コーディアは何処行ったんだ?」

「あの馬鹿ならそこで倒れているぞ」

「へ? あ、本当だ。しかもクリアの目の前だし、何やったんだあいつ」

「後ろの大人しめの子にナンパしようとしとったみたいやけど、その……クリアさんやったっけ? に伸されとったよ」

「……トアの目の前でやらなくて良かったな、コーディア。やったらシズクに何をされるかわかったもんじゃないし」


 えっと、もしかしてこの失礼な男って……


「ねぇ、キョウ」

「何だ?」

「これ、キョウの仲間なの?」

「ぐぇ」


 と言いつつ、コーディアとか呼ばれてた男の襟首をつかみ上げる。

 あまりよろしくない扱い方だけど、セラちゃんを怖がらせたんだからこのくらいはね。


 なんだか、カエルが潰れたような声も聞こえたけどそれも気にしない。


「そうなんだけど……悪かったな、迷惑かけたみたいで」

「ううん、キョウは何も悪く無いでしょ。謝るなら、この人がしないと」

「ま、そうだよな」


 どうしたものかなぁと呟いてるけど、別に放って置けばいいと思う。

 起きて来ても特に反省が見られないようだったら、その時はその時。


 何事も真っ当にって言うわけでは無いけどさ、どんなことでもある程度の配慮はやっぱり必要だと思うんだ。


 特にナンパとか、自己満足で済ますくらいならやってはいけない。相手にもちゃんと配慮出来てこそ、だよね。


「仕方ない、こいつ抜きで始めるとするか。そっちはそれで全員なんだよな?」

「うん、そうだよ」

「よし、なら俺から始めるか。俺はキョウ、よろしくな。んで、こっちのでかいのが」

「エニグマだ、よろしく頼む!」


 そうしてまず紹介されたのは、かなり厚い金属の鎧を着たエニグマさんという、190cm以上ありそうなかなり大きい角刈りの男性。

 まさに巨漢って感じの人だけど、体格のわりに柔和な顔をしているからか、だいぶ話しかけやすそうな人だね。ちょっと声大きいけど。


 見た目だけだと、少し気圧されちゃいそうだけど。


「で、次にこっちの黒髪のが」

「ミツキや。多少訛りが混ざりますけど、よろしゅうな」


 次に紹介されたのは、赤と黒のローブを纏った方言を話す優しそうな女性。

 凄く包容力というか、そんな感じのする人だと思う。


「で、それがコーディアな。悪い奴では無いんだけど……まぁ、お察しの通りだ」


 最後にそれ、と紹介されたのは未だに倒れ伏してる金髪の男。


 お察しの通りって、この人はよくこんな事をしてるってことかな? 懲りずに。

 ……ふーん。お灸、据えた方が良いのかな。口撃の準備なら万端だけど。


 というかこの人、何時まで突っ伏してるんだろう。

 いくら蹴られたとはいえ、その程度で気絶するほどではないと思うんだけど、どうなんだろうね。


 ある種の変態なんだろうか。


「お前は何時まで倒れた振りしてるんだ、コーディア。トアに襟首掴みあげられても無反応って、どうしたんだよ」

「キョウ~……だってよぉ、普通に声かけただけのつもりだったのにあんなに怖がられて、更には手痛い一撃貰うんだぜ? これでへこまない方がおかしいだろー……」


 へこんでただけらしい。


「流石のお前もへこむ反応が返ってきたんだな……。けど、これに懲りて少しは反省しとけ。相手が違ったらきっと、もっと酷いことになってたんだから」

「うげ、マジかよ。――けどま、流石に反省はしてるさ。という事で改めまして、俺がコーディア。さっきは本当にごめんな?」


 先程までの醜態が無かったかのように、爽やかに挨拶をしてきた後、いつの間にか私の後ろに回っていたセラちゃんに向けて謝っていた。

 それに対し、セラちゃんは頭を縦に振るだけで返すけど、人見知りの激しい子だからこれも仕方ない。


 うん、まだちゃんとした人で良かった。

 これなら特にお灸も必要なさそう。


 その後、私たちの方も簡単に自己紹介――セラちゃんのはアリスちゃんが変わりにした――をした後、どこか嬉しそうに、興奮した様なミツキさんがエルに話しかけていた。


「それにしても、まさか噂の『賢者』はんに会えるとは。世の中なにがあるかわからへんものやねぇ」

「やめてくれ、ミツキさん。その名前で呼ばれるのは恥ずかしいんだ」

「あら、そうなん。知らず知らずに申し訳ないなぁ」


 賢者? エルが?


 ……それは無いと思う。だってエルだよ? 賢者というよりは、魔女って言った方がしっくりくる。


「トア、何か良からぬことを考えたのはわかるが、それは私が自分で付けた物ではない!」


 うん、知ってる。


 エルに限って、自分で自分にそんな痛い二つ名みたいなの付けるなんてありえないもん。……いや、もしかするとあるかもしれない?


「違うからな!?」


 何でわかったんだろう。


 でも、それは一度置いておくにしても賢者って本当になんなんだろうね。

 ミツキさんの言い方だと、だいぶ前から知ってるみたいな感じだけど。


「そういえば、そんなの付けられてたよな。エル」

「キョウは知ってるの?」

「まぁ、βの頃に付けられてたあだ名みたいなもんだよ。多種多様な魔法を使いこなしてたから、いつの間にかそう呼ばれるようになってたんだ。確かエニグマも持ってたよな?」

「おお、確か『城塞(フォートレス)』だな! 自分では分不相応だと思うのだが」


 へー、エニグマさんって城塞(フォートレス)なんて凄いの付けられてるんだね。


 という事は、フィアと一緒のタンク役なのかな。この体の大きさなら納得できるけど。


「それだけお前の守りが硬かったってことだろ、誇っておけよ」

「むぅ。そう言われると、嬉しくて何とも返し難いものだ!」

「お前は昔っからそうだよなー。俺なんて『生粋のナンパ野郎』なんてもん付けられてんのにさぁ」

「お前のそれは、自分の胸に手を当ててみれば自然とわかるだろ」


 ……生粋のナンパ野郎って、いったいどれだけ繰り返してきたんだろう。


 少し考え直した方が良いかもしれないけど、反省したって言ってたしもうちょっと様子見かな。


「んじゃあ、そろそろ移動するか。話なら移動中でも出来るだろ」

「そうですねー、このままじゃあエルフィがミツキさんに押され続けますし。早いところ移動した方が良いですね。……まぁ、エルフィのあんな姿はなかなか見れないから、もう少しだけ見てたい気もするけど」


 シズク、本音出てるよ。わからなくないけどさ。


 でも、移動するのは賛成。いつまでもここに居たら、何にもならないし。

 今はさっさと目的地に行って、早くコーディアさんから離れたい。この前のがあるからか、セラちゃんが怖がって未だに震えてるし。

 悪い人じゃないのは何となくわかるし、彼もタイミングが悪かったのもあるけどさ、やっぱり自重とか配慮は必要だよ。それを理解してくれてればいいんだけど。


「大丈夫だよ、セラちゃん。もうさせないから」

「……うん」


 落ち着かせるために、頭を撫でながら話しかける。


 そうして移動するために歩き出したものの、セラちゃんが落ち着いたのは目的地のあるクウォンダム丘陵にたどり着いた頃だった。



初めて方言使ってみたんですけど、なかなか難しいです。

確実に似非になるでしょうけど、何とか試行錯誤してやっていきたいですね。


それでは今回はここまでです。

次話は来週の土曜日か日曜日の予定です。


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