3-2 過保護
「よ、トア。相変わらず時間通りだな」
「キョウは相変わらず、待ち合わせの時間より早いね」
「まぁな、待たせるのは俺の趣味じゃないし。――にしても、今日はまた大人数だな?」
「んー……ちょっとね。色々とあってこんな感じになった」
クリアたちに私の隠していた秘密を打ち明けた日から二日ほどが過ぎて、今日はいつもの待ち合わせ場所になっているフォーティアスの噴水広場にみんなで来ていた。
今日ここに来たのは、あの時に貰ったキョウからの連絡が理由。
ちなみに内容は、端的に言うと『遺跡に行く日が今日に決まったから、その日までに準備しておいてくれ』という感じ。
確かに何時でもいいような感じの反応を返した気がするけど、いくらなんでも唐突過ぎだと思う。翌日すぐとかじゃないから、まだましだけどさ。
更にちなみにだけど、今回は私とクリア以外にシズクたちみんなも着いて来ている。
何でこうなったかと言えば、あの後こんな一幕があったからだったり。
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「どうしたの、お姉ちゃん?」
キョウとボイスチャットで少しやり取りをして接続を切った後、シズクに話しかけられた。
ちょっと話し込みすぎてたかな。
「ちょっとキョウから連絡が来てて、少しね」
「キョウさんから? 何でまた」
「昨日、遺跡に連れて行ってくれるって話になって、その予定を伝えてくれただけだよ」
「遺跡? 何故そのような場所に行くことになっているんだ、君は」
「調べ物があって少し図書館に籠ってたんだけど、殆ど収穫が無くて手詰まりだったから、遺跡とか無いかなーって呟いたらキョウが知ってるっていうから」
うん、まさか本当に在るなんて思っても無かったけど。その辺りは結果オーライって事で良いんじゃないかな。
「なるほど。だが、遺跡なんてあった記憶が無いのだがな……」
「遺跡なら噂で聞いたことあるよ。確かリグルへニアの北側、クウォンダム丘陵の西端にあるとか無いとか」
「フィーちゃんフィーちゃん、何でそんなに曖昧なの?」
「この遺跡に限っては情報が錯綜しすぎてて、本当にわからないんだ。しかも、あるって情報には必ず入れなかったってのもついてくるし」
「入れないの? なら行く意味ないよ、トアお姉ちゃんー」
まぁ、アリスちゃんの言う通りではあるんだけどね。それでも行ってみないとわからないし、手詰まりなのも本当だからなぁ。
しかも入れないってところに、ちょっと引っかかるところもある。
だって、あそこまで情報が消されてるようなものなら、そういった所にこそヒントが隠されてる気もするし。
「……アリス。無茶、言わない、で」
「えー。そう言ってもさー、セラもそう思うでしょ?」
「………………」
あ、否定しない。
という事は、セラちゃんもそう思ってるんだ。まぁ、仕方ないよね。
「クウォンダム丘陵の遺跡、ですか……」
「クリアは何か知ってるの?」
「いえ、不自然なほどにあそこの情報は無いですね。私が知る限りでも、あの遺跡に入れた人はいませんし」
そこまで徹底的に隠されてるって、本当にどういうことなのかな。
こうなってくるともう、知ってはいけない事を知ろうとしてるように思えてしまう。
私が知りたいと思っているこれはいったい、何なんだろう。そんなに危ない事なのだろうか。
それとも、誰にも知られたくない……? なら、なおさら知りたくなってくるね。まぁ、知らなければならないと感じているのも理由だけど。
「ですが、私も行かない方が良いと思います。今のトアは、他にもどこか不安定みたいですし」
「私も同感だが……こうなってはトアは止まらないだろうからな。諦めた方が良い、クリアさん」
「そうなんですか?」
「トアは変なところで融通が利かないからな、何を言っても行くことは止めないだろう。しかも今回はかなり惹かれてるみたいだから、なおさらだろう」
「ああ、確かに変なところで頑固ですよね……」
……融通が利かなかったりとかってある程度は自覚してたけど、こうやって何気なく人から言われると辛いものがある。
しかも実感が籠ってるように言われると、更に。
「まぁ、行くっていうなら止める理由も無いとあたしは思うけど? ――それで、トアさんとクリアさんにちょっとした提案なんだけどさ」
「私たちに?」
「そ、お二人にね。このままだと、どうもうちのがあなたの事を気にしすぎてどうしようもなさそうだからさ、色々と安心するまであたしたちと一緒に行かないか? トアさんの調べ物を探すのも出来る限り手伝うし、悪い話じゃないと思うんだ。というか、その方があたしも精神的に楽になるし」
なるほど。
確かに、私としては色々とメリットはありそうだし悪い話ではなさそう。
これから先二人きりで進んでいくにしてもどんどんと敵も強くなっていく訳で、二人だと手が回らなくなるかもしれない。
そしてその結果、死んでしまったら私は問題ないとしても、クリアはどうなるかわからないんだよね。
だとするなら、人数が増えればそういったリスクは激減する。いくら一人よりは安全だと言っても、二人も十分危険しかない。
情報サイトの推奨レベルが絶対に信じられるものでは無いのはついこの間、外周部の端の方からフォレストボアに追いかけられた事、更に中心部でリグニスに出会った事からもよくわかるから。
それならまぁ、やっぱり利点の方が大きいか。
でも……
「私の調べ物を手伝ってもらうのは少し……迷惑じゃないかな」
「いやいや、そんなことは無いよ。というか、わざとでは無いにしてもあんな話を盗み聞いちゃったお詫びには全然足りないって。みんなも良いよね?」
「私としては、お姉ちゃんと一緒に行けるから問題ないかなー」
「ああ、構わない。トア様子を見れるのは、私としてもありがたいからな」
「アリスも意義なーし! トアお姉ちゃんと一緒に居たら、色々と楽しい事が多そうだもんね!」
「わたしも、良いと……思う。お姉さんと一緒、は……落ち、着くから」
まさかの満場一致。
というかエル、そんなに私の事が信用ならないんだ。これもまた否定できないけどさ。
「そっか。そう言われたら、断るのも失礼だよね。当分の間お世話になろっか、クリア」
「ですね。その方がトアもより無茶をしなくなるでしょうし、調子が悪くなってもすぐに気付けるでしょうから」
「あ、そこ基準なんだ」
「当たり前です、トアはもっと自分の事を大切にするべきですよ」
「あはは……善処します」
ここまで言われるって事は、私ってそんなに自分を大切にしてないのだろうか。
大切にしてないとかそんなつもりは無いというか、気にしたことも無いからよくわからないだけかな?
んー………………
うん。ちょっと思い返してみたけど、やっぱりよくわからない。
でも、クリアにはもうあまり心配を懸けさせたくないから、出来る限り改善していこう。
「よし、それじゃあよろしく。トアさんにクリアさん」
「よろしくお願いします、フィアさん」
「よろしくね。あと、私の事は呼び捨てで良いよ」
「あ、そう?」
「うん。セラちゃんにアリスちゃんも好きに呼んでるんだし、フィアも気にしなくていいよ」
「わかったよ、トア」
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うん、改めて考えてみるとみんな過保護だよね。
でもそれだけ私が心配なのか、信用できないのか……たぶん、信用できないの方が割合としては大きいんだろうなぁ。
あと、キョウにもあの事をいずれ話しておかないと。
セラちゃんたちも知ってるのに、キョウだけ知らないってのは流石にね。
「ま、増えるのは特に問題は無いだろ。あの辺りから本当に強くなるし」
「だよね、フォーティアス周辺と比べると一気に強くなった気がする」
そう考えると、外周部って本当にまだ楽だったんだなぁって思う。
どこから出てくるか慣れないとわからない辺りでバランスが取られてたのかもしれないけど、それも今となってはわからないか。
「んじゃあ、まずはお互いに軽く自己紹介といくか。知らない顔もいるしな」
「そうだね。どっちから始める?」
「こっちからで良いよ、人数少ないし」
「わかった」
と、そんな話をしてからみんなの方を振り返ると、セラちゃんを庇っているクリアの目の前で倒れ伏してる一人の金髪の男性が目に入ってきた。
……何があったの?
ちょっと余裕が無くて、今話は短めです。
次話更新は来週の土曜日か日曜日です。




