表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fragment of Memories  作者: 詩空
第二章
44/55

2-6 トラウマ

少し急ピッチで書いたので所々雑になっている部分があると思いますが、その部分は後々見直した際に修正を加えます。


 叫ぶようなその声を聞いてみんなですぐに声の聞こえてきた方に向かうと、そこにはセラとアリスを後ろに庇って叫んでるフィアと、それを軽く流して執拗に何かを言っている三人組の男たちがテーブルの並ぶ場所から少し離れた場所で向かい合っていた。


 いったい何を言い合っているのかと移動しながら少し話を聞いてみる。


「いいじゃんいいじゃん、ずっと見てたけどお連れさんとやらが戻ってくる気配も無いじゃん? だったらさぁ、オレらと一緒に良い事しようぜ?」

「さっきも言ったけど、もうすぐ戻ってくるって連絡が来てるんだ。だからさっさと失せろ! この子たちも怖がってるんだ!」

「またまたー、そんなわかりやすい嘘ついちゃって。良いから行こうぜって言ってるんだよ」

「嘘なんて言ってないよ! シズシズたちはすぐにお姉ちゃん連れて来るって言ってたもん!」

「ならその子たちも一緒にどうよ? みんな一緒なら寂しくねぇでしょ。俺は君みたいな無邪気な娘が好みでさぁ」

「俺はそっちのおとなしそうな子が良いねぇ、楽しくヤれそうだし? ギャハハハ! ――『ふざけるな』――ぐぇ!」

「トアさん!?」


 ……ああ。あまりにも聞くに堪えなくて、全力で殴ってしまった。これって、後で面倒な事になったりするのかな? 今は他に人もいないようだし、死角になってるみたいだから平気だと思いたいけど。

 まぁその時はその時で良いか、殺さなければ問題は無いだろうし。


 それじゃあ、次は……と、次の獲物がどの程度かを見定めていると、何かくだらない事を喚いてるのが聞こえてくる。


「なんだおめぇ、いきなりこんな事してタダで済むと思ってんじゃねぇよなぁ?」

「おう嬢ちゃん。オレらが一体何か知っててのマネかぁ?」


 何、こいつら。わけのわからない事しか言えないの? しかも仲間と思われるのを殴り飛ばしたのも、気にも留めないんだね。

 それにレベルは精々が9程度しかないのに、何でここまで調子に乗れるのかな。私たちが女だからって下に見てるって事? くだらない。


 よく見たらセラちゃんが泣いてる。アリスちゃんも少し、涙目になってる。ああやってしつこく言い寄られて怖かったんだろうか。それも仕方ないよね。


 いくら力の違いがあっても、精神的に恐怖を感じる状態では本来の実力を発揮することは出来ない。

 それを気付いてるのか知らないけれど、泣いている子をこうやってヘラヘラと笑って無理やり連れ去ろうとする。


 ……ああ、もう。あの頃の事を思い出したよ。


 嫌だと言っても無理やり引きずられて行って、何度も何度もしつこく殴られ、暴言を吐かれ、物を壊される。挙句には雫と恭也まで対象にして、散々悪質な嫌がらせをされたあの頃を。

 そして、そんな自分たちが正しいと思い込んでいる、歪で腐り果てた正義感を振りかざす腐った奴らの歪んだ顔を。


「何か言ってみたらどうよ。ええ? 今更怖くなってビビってんのか?」


 全く話を聞かず、自分たちの言い分ばかりを押し付け、その癖逃がさない。その行為をされる側がどれだけ怖いのかも知らないし、知る気も無い癖にそんな事まで言う。


 駄目だ、イライラする。


 こいつらを見てると、凄くぐちゃぐちゃにしたくなってくる。


 なら、やってしまえば良いか。


「フィア」

「なに、かな。トアさん」

「セラちゃんとアリスちゃんの目、塞いでて?」


 そう笑顔で告げたのだけれど、彼女は二人の目を塞ぎつつ何故か顔を青ざめさせて首をぶんぶんと縦に振っていた。

 まるで化け物を見たかのような顔をしなくても良いのに、酷いなぁ。


「何か言ったら、だっけ」

「おおなんだ、命乞いでもすんのかぁ?」

「そんな訳無いでしょう? ただ――」

「ただ……なんだぁ?」

「――何も知らない愚か者に、恐怖を叩き込んでやる。そう言いたいだけだよ」


 さて、始めよう。回復魔法もあるんだからどれだけ痛めつけても問題は無い。

 今の私に情け容赦や遠慮、自重なんて言葉は無いよ。精々、無様に逃げ回ることだね。


 言葉を終えると同時に、残った二人の内右側の赤髪の男の腹部を蹴り上げる。


 そして、蹴りを受けて浮いた相手の背中に踵落としを入れて地面に叩きつけて、踏みつけたまま着地すると同時にもう一人の灰髪の男に回し蹴りを入れる。


 たったそれだけで気絶したので、すぐに回復魔法をかけて無理やり目を覚まさせた。


「この程度で済むと思ってるの? 起きろ」

「クソが……! テメェ調子乗ってんじゃねぇぞ!!」

「調子に乗ってる、ね。どこをどう見たらそうなる?」


 本当に良くわからないことを言う。

 たったの数回蹴られただけで昏倒する相手が、どうしてそこまで強く出れる?


 ああ、嫌だ。もうあんな思いは、したくないのに。他の人が同じ思いをしているのも見たくないのに。


 あんなのは、経験する人が居ない方が良いんだ。だから、そんな思いをさせるような奴をタダで済ますわけにはいかない。


 ううん、違う。私が同じことをしたら意味が無い、よね?


 というか、何で私はこんな事をしてるんだろう?


 いや、やってる事は正しいんだよ、ね……? あれ、え?


「貴様らが何をしたのか、わかっているの?」

「あ? ただ良い事しようぜって誘っただけだろうが。それの何が悪ぃんだよ、えぇ?」


 ……こんな奴らに何を言ってもわからないか。

 もう二、三度、人体急所に攻撃を叩き込んで気絶させ、その度に目を強制的に覚まさせる。だけど、決して態度は変わらない。面倒な。


 こいつらのような奴には、あの恐怖をどんな手を使っても叩き込まないと――って、それは違……う。そんな事をしたら、奴らと同じになってしまう。


 私は、そんなのと同じようになる訳にはいかないのに。もう、止めないといけないのに……身体が止まれない、口が勝手に動く。


「そうか。だが、貴様らのやっている事は相手に恐怖を与える。いずれ、永遠に癒えないほどに大きな傷を心に刻み込むように」

「知らねぇよんな事。オレたちはただ、オレたちが気持ち良くなれりゃあ結果的には良いんだよ、その後なんて知った事か」

「貴様らが同じ目に遭うと、考えたことも無いのか?」

「たりめぇだろ、んな物好きいる訳ねぇんだからよ。つーか、いい加減こっちの鬱憤も発散させろや」


 そうして私に手を伸ばしてくる相手の姿を見た時、一瞬だけ昔の記憶がフラッシュバックする。


 この光景はあの時の、休み無く何度も何度も繰り返し殴られた時の――やだ、やだ、やだ! わたしはもう、あのころにもどりたくなんてない!!


「や、やだ! くるな!!」


 そう叫んだ瞬間、私の体の主導権を誰かに奪われた気がした。



「ああ、もう。やっぱりまだ全然駄目なんだね、お姉ちゃん」

「仕方ないだろう、トアのあれはそう簡単には治らない。それこそ一生の全てを費やしても、完全に治るのは難しいほどだ。たった数年であそこまで回復できた時点で異常なくらいだ」


 フィアさんたちに言い寄っていた不埒者たちが下種な事を言い始めた辺りでトアが一息に近づいてその内の一人を殴り飛ばした後、シズクとエルフェリアさんがそのような会話をしていましたが、私にはそちらに気を取られる余裕はありませんでした。


 その時、私はトアの姿をずっと見ていたのだから。


 どうしてかわからないのですが、今のトアは何かがおかしい気がするんです。僅かにでも怒っているのは理解できるのですが、それ以上に何故か無理をしているようにしか見えなくて。


 まるで、何かを痛みを耐えてるかのように。


「……エルにシズク、クリアさん。トアさんは、どうしたの?」

「お姉ちゃんは今、たぶん本気で怒ってる。完全にトラウマを刺激されちゃったから」

「トラ、ウ……マ?」


 トラウマという事は――心の傷、ですか。先程の中でそういった物が刺激されるとすれば、フィアさんたちの状況やかけられた言葉でしょうか。


 けれど、何故フィアさんはセラさんやアリスさんの目を塞いでいるのでしょう。


 というよりも、止めなくて良いんでしょうか。かなり酷い殴打音と、トアが回復魔法を使う声がこちらにも聞こえてくるんですけれど。


「そう、トラウマだ。詳しくは言えないが、かなり酷い物だったという事だけは伝えておく。それにしても、その状態はトアからの指示か」

「セラとアリスの目を塞いでおくようにって言われたからね。言われたときは凄く、怖かったけれど」

「お姉ちゃん、怒れば怒るほど綺麗に笑うから。それは怖いよ」


 トア、怒るとより綺麗に笑うんですか。あまりそのような情報は知りたくなかったような、そうでもなかったような気がして少し複雑です。

 少し見てみたい気もしなくは……いえ、止めておきましょう。そんな理由で怒らせたくはありません。


「お姉さん……怒って、るの? 本当に?」


 少し違う方に思考を取られつつもいい加減にトアを止めるべきかと、一方的に相手を痛めつけている光景を見つめながらそんなことを考えていると、セラさんがそのような事を呟いたのが聞こえてきました。


 もしかして、セラさんも違和感を覚えているのでしょうか。

 ですがそうなると、遥かに付き合いの長いシズクやエルフェリアさんが何も感じないのはどういう事なんでしょう。


「どういう事だ、セラ?」

「その、あの……わたしには、トアお姉さんが無理してるようにしか、見え……なくて」

「無理をしてるって、どうしてそう思ったのかな」

「んと、なんというかね? 確かに、少しは怒ってはいると、思う。けどそれ以上に、痛いって気持ちや、怖いって気持ちを……笑顔で取り繕って、無理やり怒りに変えてるって気がして、その、とても辛そうっていうか……無理してるなって、思って」


 ――わたしも、似たような気持ち……知ってる、から。


 そう目を塞がれながらもセラさんが言うと、反対側で同じように目を塞がれていたアリスさんの肩がピクリと跳ねたような気がしましたが、見間違えだったのでしょうか。


 それにしてもまさか、同じような結論に至っているとは思っていませんでした。


「なるほど、な。確かにそれは盲点だったし、すっかり忘れていた」

「お姉ちゃんって、そういうところ取り繕うのも上手だったっけ……。それに私たちの事もよく知ってるから、誤魔化すのも得意か」


 そうして二人は落ち込んでいましたが、それもトアの心配をかけたくないという思いから来ているのだとすれば何とも言えないのでしょうね。


 二人に声をかけたいところですけれど、今はトアを止めなくてはいけません。やはり無理しているのが明らかであれば、これ以上あのような事をさせるわけにはいきませんから。

 しかも度々相手にかけている声に、悲痛な色が混ざり始めているというのならなおの事。


 あそこに割り込むのならば、次に回復魔法を使った頃。


 間に入るタイミングを計りながら歩き出すと、フィアさんから何をする気だというような視線が飛んできましたが、無視します。


 今、間に入れるのが私しかいないのですし、此方でのトアのパートナーは私なんですから。止めるのは私の役目ですよ。

 以前と比べるとかなり動きが速いですが、これならまだ今のレベルでも対処は可能ですね。


 入り込むタイミングは、回復魔法の詠唱に入った……今!


「トア!」


 魔法を使うために一瞬身を引いた隙を狙って間に入り込み、真正面から抱き締めました。

 するとトアの体が私を引き離そうとするかのように暴れてから少し硬直した後、私にもたれかかるようにして一気に力が抜けていきましたが、緊張状態にあった身体が弛緩したのでしょう。問題は無いはずです。


 けれど何故、ここまで無理をしているのに止まれなかったのでしょうか。――もしかして、無理をしている事に気づけなかった?


 いくら怒っていたとはいえ、自身の心の痛みに気づけないというのは、何か心の大事なところが未だに壊れたままということでは?


 ……これは、詳しく話を聞かなければならなくなりそうですね。このままでは本当に何時か、トアが完全に壊れてしまいます。そんなのは嫌ですよ、私は。


 ですが今は、もっと大事な事がありますから。またいずれ、です。


 そして今回のお出かけはここまでですね。これ以上はまた今度、今度こそ二人きりで行きましょう。


「もう、もう良いんですよ。これ以上は無理をしないでください」

「――ごめ、くりあ。ありが……と」


 耳元でもう大丈夫だと囁いて、背中や頭を以前彼女にしてもらった時のように優しく撫でると、詰めていた息を吐き出して気を失ってしまいました。


 本当にもう、辛いのなら辛いとはっきり言ってください。貴女が私を知りたいと、受け止めたいと言ってくれたように、私も貴女の事を知りたくて、貴女の全てを受け止めたいと思っているのですから。


 だから目が覚めた時、もう一度話し合いましょう。


 次は私の番ですよ、トア。



今話は色々と激しい事になってしまいました。結局ほのぼの要素が無くなっちゃいましたしね。

こう言った雰囲気のを最後まで保てないんですかね、自分は。


そして何気に、今話の内容も下手に触れたらネタバレになりそうで何も言えません。


という事で今回はここまでです。

次話更新は同じく、来週の土曜日か日曜日になります。



ああ、そういえば。ナンパって書くの、何気にかなり難しいですね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ