2-1 調べもの
二話連続投稿の二話目です。
力なく、一冊の分厚い本を閉じる。
「んー……これも違うかぁ」
私が倒れたあの日から、一週間ほどが経った。
それからの間の進み具合は正直……捗ってないとしか言いようがない。
リグルへニアから更に東に進もうかと思って東フォーグル平原の先に行ってみたところ、あまりのモンスターの強さに断念。
クリアからの情報でまずはリグルへニアの北側の丘陵地帯から進んでいくことになって、それでも一気に強くなったモンスターに苦戦しつつも進んでいる。
で、その間にレベルも幾つか上がって、今はこんな感じになっている。
NAME:トア Lv15 残SP:2
HP:1430、MP:1109、ATK:409、DEF:336、INT:489、MIND:367、STR:264、VIT:359、DEX:381、AGI:862
武器スキル:剣、触媒
魔法スキル:属性魔法(土)、回復
補助スキル:言語、視覚強化、下位DEF・INT強化、熟練度上昇量増加(50Lvまで)
潜在スキル:属性魔法(氷、雷、闇)、神速
とまぁ、あれから少しスキルも取ってみた感じかな。
これから魔法も使って行くんだからって事で、下位INT強化を取って、更に触媒を変更してみた。
それはこんな感じ。
・銀鉄のブレスレット INT:47、MIND:10
少量の銀を混ぜた鉄を用いて作られた触媒用のブレスレット。
性能は鉄の物よりは高いが、純銀製のものと比べると当たり前だが遥かに劣る。
鉄に少量の銀を混ぜるって言うのがいまいちどうやるのかわからないけど……いや、本当にどうやったんだろう。凄く気になる。
というか、この方が純銀製品を作るより手間がかかる気がするんだよね。違うかな。
あ、それと土魔法を取った理由だけど、息抜きで魔法書を読んでたらなんか便利そうな魔法を見つけたから、取ってみようかなって思っただけです。
一つだけ用途のわからない魔法があったけど、あれは何だろうね。しかも中級魔法のくせに詠唱が最低級よりも短いみたいだし。
で、それは置いといて。
他に変わった事と言えば、あと一つかな。
倒れた翌日に、心配かけさせたお詫びって事でフォーティアスで色々とクリアやシズクたちに連れ回されたんだけどそれは置いておいて、その日以降から時間が出来次第この場所――図書館で調べ物をするようになった。
何でそんなことを始めたのかは、まぁ簡単な話。
あの日、氷結の森中心部に踏み込んだ時に見つけたあの墓石。あそこに書かれていた『リオン=ヴァーゼル』って名前の人物について、それ関係を調べてるんだけど……ぜんっぜんわからないです。全く掠りもしない。
というか、これのせいで言語スキルも取ることになっちゃったしなぁ。
あの神代文字? とか言うのは何でか読めたけど、ちょっと古い文字とか、この世界での基本言語以外は読み取れなかったんだよね。
でまぁ、リグニスが神代文字だとか言ってたからリオンとかいう人はこの世界の神話でも探せば見つかるんじゃないかと考えた結果、こうして図書館に足を運んでいるわけですが。
さっきの通り、全く捗っていません。
……と言うよりは、意図的にかどうかは知らないけど、その辺りの文献が無いって言った方が良いのかな。
この一週間ほどの探検の余った時間や空いた時間で、この図書館にある多種多様で豊富な文献を色々と読み漁ってみたものの、不自然な具合に一部分だけまるっと抜けてるんだよね。(ちなみに、土魔法に関してはこの時の息抜きで読んだ魔法書が原因ね)
その丸々空いている時代のそれ以前、それ以降で色々なものが変わってるっていうのは見つかってる範囲での書物で何となくはわかるんだけど、その時代に何があったのかっていうのはまるでわからない。
たぶん件のリオンさんとやらはこの丁度抜けた時代の人なんだろうってのもわかるんだけど……うーん。
かなり大きい図書館だけど、ここには無いって事なのかな。あともう少し探してみて、見つからなかったらここは諦めてしまおう。
でも、そうしたらどこにあるんだろう。図書館に無いと仮定するなら、どうにも探しようが無い。
「遺跡とか巡ればいいのかな……いや、そもそも遺跡ってあるんだろうか」
「遺跡がどうのって、何探してんだ? お前」
「ひゃあ!! ……って、キョウか。驚かせないでよ」
うんうん悩んでいたら、いつの間にか近くまでキョウが来ていた。
いったい何時の間に近づいてたんだろう。というか来たのなら知らせてよ、思いっきり驚いちゃったじゃんか。
「よっ。最近ここに入り浸ってるっていうから、様子見に来たぞ」
「そんなの誰から聞いたの?」
「誰って、シズクからに決まってるだろ。そのシズクはクリアさんだっけ? に聞いたらしいが。何でも、時間空いたら図書館に籠るから、最近はあんまり話せてないとかって愚痴ってたらしいからもうちょっと相手してやれよ」
あー……そういえば最近、冒険中拗ねてたりするのが多かったのってそういう事だったんだ。
最近蔑ろにし過ぎちゃってたし、やっぱりここでの調べ物はもう切り上げちゃおうか。クリアを放置するほど急いで調べるものでもないんだし、そんなに根を詰めなくても良かったのにね。
明日から調べものは、もっとのんびりやっていこうか。
「つーか、何冊読んでるんだお前……」
「何冊って……何冊だろ。この六日間に読んだ本の数なんて数えて無いし」
机の上に散乱した読み終わった本を見ながら、呆れた様にキョウにそんな事を聞かれたけど……そんなに変な顔されるほどは読んでないと思う。
今日読んだのだって、精々十五冊くらいだし。……だとすると、六日間で単純計算すると九十冊くらいか。
これって普通じゃないの?
「いや、ちょっと待て。六日間で九十冊も相当おかしいけど、空いた少しの時間で十五冊って……異常すぎだろ」
「そう? 確かにいつもはのんびり読んでるけど、普通に読んでしまえば一冊にかける時間なんて八分もあれば十分じゃないの?」
いやまぁ、確かにのんびり読んでたら一時間くらいはかかるけどさ。
伊達に今まで暇な時間に本を読みまくってたわけじゃないけど、皆も普通にこのくらいのペースで読めるんじゃないの?
「これに関してはお前の普通を基準にしない方が良い。で、何探してたんだよ」
「んー……神話」
「神話? 何でまたそんなもんを」
「ちょっと気になったものがあってさ、調べてたんだけど……うん、完全に空ぶってる。全くわからなかったよ」
途中で息抜きしたくなる程度には。いや、これは言わないけど。
「ふーん、それで遺跡か」
「そういう事。遺跡とか探せば、何か見つかるかもって」
あんまり期待はしてないけど。
まず、この世界に遺跡があるのかもわからないし、あったとしても丁度その時代の物である保証もない。だから期待するだけ無駄だよね。
だから、やっぱりあの夢の中の村が鍵になると思うんだけど。それもどこにあるかも全くわからないっていう。
そんなこんなで現時点で詰みっていうね。
という事で未だに足繁く図書館に通ってたわけだけど、それも今日でいったん終わり。これからは図書館には度々足を運ぶ程度で情報を集めながら、クリアとのんびり進んで行こうかなー。
って、考えてたんだけど……
「遺跡、なぁ。一ヵ所だけ知ってるぞ?」
キョウのせい(?)で、その予定も変更になりそう。
「へ?」
「いや、βの時に一ヵ所だけ見つけたんだよ。その時は入れなかったんだけど、今なら入れんのかな……」
「それ、どこにあるの?」
「丘陵地帯、そこのだいぶ外れの方にあるんだ。ボスモンスターも近くには居ないし、中にも入れなかったらさっきまで忘れてたんだけどな。今度連れてってやろうか?」
「いいの?」
「すぐにって訳にもいかないけどな、こっちのメンバーにも話を通しておかなきゃならないし。それに――」
βの時には入れなかったって言うのは気になるけど……何か情報を得られるかな。
……って、それに?
「――あそこでへそ曲げてるのをどうにかする方が先だろ? 今日明日明後日ぐらいはちゃんと構ってやれよ、こっちの予定決まったら連絡してやるから」
「へそ曲げてって……あ」
言われてキョウが指を差した方向を見てみると、そこには本棚の影からこちらを恨みがましい表情で見つめているクリアが居た。
これは……かなり拗ねてそうだね。
キョウの言う通り数日くらいはクリアのために時間を使おうか。
「ま、そういう事だ。じゃあまたな」
「うん、また今度ね」
と、それだけ言って去っていくキョウを見送りながら、これからの予定を着々と立てていく。
リグルへニアにも色々と施設はあるけど、やっぱりフォーティアスって凄く充実してるから、こっちでどこか良い場所無いかなー。とか考えつつ、クリアに向かって手招きをする。
すると満面の笑みを浮かべて走り寄ってきた。
……私、そんなに放って置いちゃってたかな。なんだか凄まじい罪悪感がひしひしと襲い掛かってくるんだけど。
「どうしました?」
「えっと、あのさ。明日とか、先に進むの少し休んで遊びに行かない?」
「私は構いませんが……急にどうしたんですか?」
「んーっと……まぁ、そうだね。最近は調べ物に集中してて、あんまり話せてなかったなって思って」
改めて思い返せば、冒険中も気は抜いてなかったけど、調べ物に対して意識が向いちゃってて生返事しか返してなかった気がするし。
うん、完全にやらかしてたね。
こっちの悪癖も何とかした方が良いんだろうけど、これはどうしても治る気配すらないからなぁ。
とりあえず、これからはより気を付けるって事で。
「……気付いてはいたんですね」
「……ごめん、さっきキョウに言われるまで気付いてませんでした」
「でしょうね。その方がトアらしいですし」
その方が私らしいってどういう事でしょうかね、クリア。
否定できないのがまた悔しいけどさ。
というか今はそんなのどうでもいいんだってば。
「まぁ、そういう事で明日……と、もしかすると明後日もお休みだから。楽しみにしててね」
「わかりました。ですが、どこに行くんですか?」
「だから、その時のお楽しみだってば。それじゃあご飯食べに行こっか、もう時間だしね」
まだ完全に決まってないから、教えようも無いし。
後で一度、下見ついでに色々と回っておこうかな。マップも確認し直して、何かいい公共施設があればそこも候補に入れておこう。
うん、準備段階ってなんだか楽しいよね。皆が言ってた祭りの準備が楽しいっていうのが、これでようやくわかった気分。
文化祭だとか、そういう類のものに参加できたことは一度も無かったからね。
「はい。――今日のご飯は何でしょうか」
「んー、何だろうね。でも、何だとしても美味しいのには変わらないと思うよ?」
「そうですね。シャーリーの作るものは何でも美味しいですから」
そんな話をしつつ読んだ本を片付けていって、そのまま図書館から二人で退館していった。
明日の予定を頭の片隅で次々と考えながら。
今話から二章二話に入ります。
二話はたぶん、ほのぼのした感じになるんじゃないかと思ってます。なんだかんだでそういったのが少なかったですし。
それと、とある伏線が二話中に回収されます。
……正直、こんなに早く回収するなんて思っても居ませんでしたが。
あとですね、クリアがちょろいとか思っちゃだめですよ。ただ、あまり話せなかったことに拗ねてただけですから。
それでは今回はここまでです。
次話更新は明日の日曜日に更新予定です。




