幕間
二話連続投稿の一話目です。
そこは、小さな部屋だった。
この部屋にはほどほどの大きさの机と、一脚の椅子。それに小さな部屋に置くにしては大きなベッドが一つ備えられている、簡素な部屋。
だが不自然な事に、この部屋には出入りするための扉が存在しておらず、窓などといった光が差し込む構造も、照明も存在していない。
そんなこの部屋の中にある椅子に、一人の男性が座っている。
男性は三十歳くらいで黒い短めの髪で程よく引き締まった体をしているが、少年の様な笑みを浮かべていて、けれどその表情には不思議とアンバランスさは感じられない。
「ハハッ、あんなに動き回りながら普通に魔法を使うか。魔法を使うにはかなりの集中力が必要だって言うのに、やっぱり流石だよ。な、お前もそう思うだろ? ――って、そうだったな。お前は無理をしてまだ眠ったままか」
と、男性が目を閉じながら何かを見ているかのような感想を述べた後、それの同意を求めるようにベッドに向けて声をかけたが、返事は返って来ない。
それもそのはずで、ベッドの上に体を横たえている人物は今、眠りについているのだから。
ベッドで眠っている人物は、長い銀の髪を持った二十歳半ばくらいの女性。World of Reminiscenceと呼ばれるゲームの中にいる、シャーリーという名の女性とよく似た容姿の持ち主だった。
「だけどまぁ……まさか、今になってお前の願いが叶うとは思わなかったよ。――って、動きが少し危なっかしいな。丁度近くにあの子がいるし、ちょっと行ってくるか」
と言い残して、男性の姿がこの部屋の中から消え失せる。
何の前触れも無く、何かの動作をした訳でも無く、僅かな音も無く。
そうして男性の姿が消えて少しした頃、消えた時と同じく唐突に姿が現れた。頭を掻きながらだったが。
「あー、思ったより制限時間が短すぎだな。いくらあいつと俺の繋がりが薄いとはいえ、ここまで短いとは思わなかった」
と言いながらも、どこか楽しそうな顔をして言葉を続けて行く。
「だけど、ああやって別な視点で見るのもまた面白いな。それに、飲み込みも悪くないから、あいつ辺りが知ったら喜んで教え込みそうなタイプだ」
まさか、あれだけの助言であそこまで改善するとはな。と呟いたところで、次は少し思案するかのような顔になる。
すると、再びベッドの上に眠り女性に話しかけるように話し始めた。
「そうか、あの飲み込みの速さに何か既視感があったけど、そこもお前に似たんだな」
「だけど、あの子は私じゃないよ」
今度もまた女性からの返答は無いと思われたが、男性のその予想は裏切られる。
なぜなら、今回の問いかけには彼女からの返事が返ってきたのだから。
「わかってる……って、もう目が覚めたのか? てっきり、最低でも後半月は眠ったままだと思ったんだが」
「私も、もっとかかるかと思ってた。けどこっちでの時間の流れって、だいぶ違ってるみたいなんだ」
「へー、そうだったのか。というかここじゃあ時間間隔なんてわからないしな、俺も外と同じだと勘違いしてたし」
「それは私も同じ。でも、ここで目が覚めたからって、向こうに干渉するのはまだ無理みたい。というか、私があそこまで干渉出来てたのは、力が強かったからこその例外だっただけだしね」
「え? 干渉出来る時間とかって、あいつとの繋がりの強さじゃなかったのか?」
「確かにそれもあるけど、それをどこまで伸ばせるかはそういった力の強さだよ。……まぁ、あれで失った力は思ってたより多いみたいだし、それが完全に回復するまでは向こうでの時間でも長くて後半月はかかりそう」
彼女がそう言った後、まさか回復するのにここまでかかると思わなかったけどね。と苦笑しながら付け足す。
そして女性は横たえていた体を起こして男性に向き直り、更に浮かべた苦笑の色を濃くして言葉を続ける。
「でも、今、問題なのはそれじゃないかな」
「何かあったのか?」
「そんなに大したことじゃないと思いたいんだけど……。たぶん、あの子の中には私たち以外にも――」
言いながら、今まで閉じていた目を開く。
閉じられていたことによって隠されていた、顕わになった空色の瞳には不安と、僅かな恐怖が浮かんでいた。
まるで、その事実を認めたくないように僅かに言い淀んだ後、はっきりと口にする。
「――きっと彼女がいる」
今話は幕間、ちょっとした二人の話し合いです。
……としか書けないですね。下手な事かくと、これに限っては即ネタバレに繋がりそうですし。
という訳で、今回の後書きはここまでですかね。
短いので次話投稿は、前話言った通りにまた連続投稿という事で一時間後になります。
それでは。




