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Fragment of Memories  作者: 詩空
第二章
33/55

1-2 潜在スキル


「お待たせしました、トア」

「大丈夫だった?」

「ええ、もう問題ありません。――あぁ、やはりトアの近くは落ち着きます」


 そう言いながら近づいて来て、そのまま抱き着いてきたクリアの頭を撫でてあげる。

 これじゃあ、なんだか大きい妹が増えたような感じだね。それも、とびっきり甘えん坊の。


 なんだかシズクから凄い目で見られてる気がするけど、それはきっと気のせいだと思いたい。でも、気のせいじゃなければシズクからだけじゃない気もする。どうすればいいというんですか。

 苦笑い気味な顔になってるとは思うけど、クリアに離れて貰って紹介することに。


「えっと、この人がさっき話してた私のパーティメンバーのクリア。とても頼りになるんだよ」

「初めまして、クリア・ディアドです。主に近接格闘の一撃離脱で戦いますので、よろしくお願いします。……って、トアとシズクにもちゃんとした自己紹介はしてませんでしたね」

「そういえばそうだったね。でもまぁ、あれじゃあ仕方ないと思うよ」

「そうですよ、クリアさん。あの時では流石に無理ですよ」


 あの時はなぁ……あまりの落ち込み様に、そんな余裕なんて無かっただろうし。

 周囲に人が来なくなるほどに暗く落ち込んでるのなんて、正直他では見たことが無い。


 ……ふと思ったんだけど、仕事をクビになるたびにあんなことになってたんだろうか。それとも、最初の頃はそうでもなかったけれど、重なるたびに酷くなったのかな。


「……いったい何があったのやら」


 フィアが面白そうなものを見る目をしてるけど、そんな話じゃないから話はしない。笑い話にしていい物じゃないからね。


「まぁそれは置いておいて。こっちの四人がさっき言ったシズクのパーティメンバーで、右からエルフェリア、フィア、アリスにセラだよ。セラは恥ずかしがり屋で話すのが苦手らしいから、気を付けてあげてね」

「わかりました。改めて皆さん、よろしくお願いしますね」

「ああ、よろしく」


 向こうの代表としてエルが返事したものの……そうだ、注意しておかないと。

 クリアなら心配ないだろうけれど、まぁ一応ね。


「クリア、エルには気を付けてね。この人、他人をおちょくって遊ぶ癖があるから」

「酷いなトア、流石に仲の良い相手でなければそんなことはしないぞ。それに、最近はあまりしなくなった」

「どうだか」


 そう軽口を叩き合っていると、クリアが驚いたような顔をしてこちらを見てきた。

 どうしたんだろうと思って見返すと、不意に頭の中で音が響いてくる。


 この音は、ボイスチャットの呼び出し音? ……これはクリアからか、とりあえず出てみよう。


『急にすいません、トア』

『大丈夫だけど、どうしたの? 目の前にいるのにこれ使うなんて』

『いえ、そんな大それたことではないのですが。このエルフェリアさんが例の親友さんなのかと思いまして。だとしたらこちらで聞いた方が良いかなと』

『へ?』


 あれ。私、それがわかるような事は何一つとして言ってなかったと思うんだけど。

 どうしてわかったんだろ。


『やはりそうでしたか。トアがあんな軽口を言い合うのは、シズクやキョウさん相手でもありませんでしたから』

『なるほど、よくそれだけでわかったね』

『これでも貴女の事をもっと知りたいって思っていますから、些細な事でも私にとっては大事な事なんですよ』


 その返答と共に、人前だからか控えめな笑顔を向けてきた。


 私の事を知りたいって思ってくれる人が居るのは、本当に嬉しい事だよ。

 でも、だからあんなに過保護でもあるんだろうか。いくら好意があっても流石にあそこまで長々とお説教されるとキツイものがあるけどさ。


 この会話を最後にチャットの接続が切れたけれど、それと同時に左右から抱き着かれた様な軽い衝撃が襲ってきた。


 どうしたんだろうかと左右を見てみると、そこにはそれぞれシズクとアリスちゃんが抱き着いて来ており、更に背中からコートが引っ張られるような感覚もしたので振り向いてみると、セラちゃんがコートの裾を引っ張っている。


 ……どんな状況ですか、これ。


 それよりも、何でこんな短時間でアリスちゃんとセラちゃんにここまで懐かれてるんだろう。少し気になる。


「ねぇ、お姉ちゃん」

「どう、したの?」


 なんか、少し悪寒を感じた。


「いつの間にクリアさんとあんなに仲良くなってたの? クリアさん、私が最後に会った時はあんな顔で笑ってなかったよね? お姉ちゃんまた数日で落としたの!?」

「えっ、へ?」


 落とす? 数日で? え、何の事?


「アリスもセラもそうだし! いつもいつ――『落ち着けシズク、トアに言っても何もわかってないから無駄だ』――って、そうだった……。質の悪い事に無自覚だもんなぁ」

「シズシズ、何の話ー?」

「……?」


 『またお姉ちゃんのお人よしが発動しただけだと思ったのにー!!』というシズクの叫びを背に、アリスちゃんに抱き着かれたまま記憶を漁ってみるけれど、やっぱりわからない。


 感情や気持ちについては全くわからなくなってしまったものがあるから、その辺りが原因なんだろうか。まぁ、その感情自体が何なのかもわからないから、原因を特定しようも無いんだけどさ。

 あの頃の代償は、私の気付いていないところにもまだまだ及んでそうか。


「なぁ、エル。気付いててあれなのか、気付いてなくてあれなのかわからないけど、彼女はいつもああなの?」

「ああ。だが、どうにも鈍いという訳でも無いのがまた奇妙な所でな。……何か、まだ隠してることがあるんだろうな」


 ギクッ。

 こればっかりは隠してるのバレてないと思ってたのに、そんなに何かが変だったのかな。


 でも、踏み込んで聞かれなければ問題ない。話をずらしてしまえばなんてことは無いよ。

 丁度良い事に、話題を振りやすい子たちがすぐ傍に居るんだから。


「ねぇ、アリスちゃんとセラちゃんはどうしたの?」

「あ、そうだった。トアお姉ちゃん、クリアさんとシズシズにばっかり構ってないでアリスたちも構ってよー!」

「わたしも、構って、欲しい。……お姉さん」


 あー……可愛いなぁ。

 こういう少し下の子たちって、やっぱりどこか癒されるのがある。……そういえば確認してなかったけど、年下だよね? お姉ちゃんとかって呼んでくれるし。


 まぁ、気にしなくてもいっか。


「わかった、じゃあ何しようか?」


 右腕に抱き着いてたシズクがさっき叫んだのと同時に離れてたから、特に動きが遮られる事もなく二人の方に振り向く。

 ちなみに、アリスちゃんは振り向くときに一度離れてからもう一回抱き着いてきた。同時に空いた方の腕にセラちゃんが抱き着いてきている。


 一気に妹が増えたなぁ。


 なんてほのぼのしながら話していると、クリアとエル、フィアに正気に戻ったシズクが何かを話しているのが見えた。何話してるんだろう。


「――そうですね。はい、わかりました。トア!」

「ん、どうしたの?」

「エルフェリアさんが、今からフォーグルウルフを倒しに行くので手伝ってほしいらしいです」

「フォーグルウルフ? シズクが居れば十分だと思うけどな」


 シズク一人いれば簡単に倒せる気しかしないんだけど、何でだろう。シズクのATKと大剣の重さを合わせたのなら、斬り裂けないなんてことは確実に無いだろうし。

 いやまぁ、武器も整えたし、一度倒してるから今の私とクリアでもそんな苦戦するなんてことは無いだろうけどさ。


「昨日一度挑んだ時あまりにも取り巻きの量が多くてな、シズクの攻撃力の高さに頼ってもなかなかに厳しくて撤退することになったんだ。それに今は五時前だろう? 時間はまだあるし、出来る事なら今日中に抜けておきたい。だから二人に手伝ってほしいと思ったんだ」

「なるほど……」

「今朝の事もありますし、私は断っても良いと思うんですが」

「ううん。大丈夫だよ、クリア。――わかった、手伝う。私たちだけで、どれほど力になれるかわからないけどさ」


 あれから時間も経ってるし、さっき少し寝たおかげでだいぶ疲れも取れた。だから、これくらい手伝うのは無理な事じゃないよ。

 精神的疲労については……うん、横に置いといて。


「本当か!? ありがとう、助かるよ。あそこまで多いとあたし一人では支えきれなくてさ」


 フィアがそういうけれど、タンク役の人が支えきれないほど多いってどれだけの数が居るんだろう。


 でも、私たちの時は取り巻きなんていなかったよね?

 何か条件の違いがあるのかな……って、人数の差か。それにしても数が多いのは少し気になるけど……なんか嫌な予感がするから触れないでおこう。


「じゃあ二人とも、続きはまた今度だね」

「はーい……フィーちゃんたちの空気読まずー」

「ん」

「駄目だよ、そんなこと言っちゃ。――っとそうだ、少し待ってもらって良いかな」

「何かあるのか?」

「まぁ、ちょっとね」


 一度断ってから、スキルメニューを開く。

 ずっと後回しにしてたスキル取得をしておこうかと思ってさ。回復魔法を取る取る言ってるだけで、一向に取ってなかったし。


 ついでに他に良いのもあればとろうかなー。


 とりあえずは魔法スキル一覧からっと……あれ? 何か足りない。

 んーっと、確か属性魔法は火・水・氷・雷・風・土・光・闇の八属性だから……あ、氷と雷と闇属性魔法が無い。何で? ――そうだ、一つ心当たりがある。


 とにかく、一度回復魔法を取ってから取得スキル一覧を開いてみよう。もしかするとあれがあるかもしれない。

 そうしてある予感のままに取得スキル一覧を開くと、そこには予想した通りのものと、まるで知らない予想すらしていないものが存在していた。



 ・取得スキル一覧

 武器スキル:剣、触媒

 魔法スキル:回復魔法

 補助スキル:下位DEF強化、熟練度上昇増加(50Lvまで)

 潜在スキル:氷属性魔法、神速



 予想していた物は『潜在スキル』という欄とそこにあるだろうと思ってた氷属性魔法だけど、その欄の中に更に予想もしていなかったものが紛れ込んでいたのには、流石に私も思わず目を疑ったけれど気のせいではない。

 確かにその欄には『神速』という何で出現してるのかまるで身に覚えもない、情報サイトにも載っていなかったスキルが存在している。


 氷属性魔法は、氷結の森で魔族を退けるためにあの声の彼女の手助けで使ったからあるだろうとは思ってたけど、この神速に限っては本当にわからない。


「……何、これ」

「どうしたの、お姉ちゃん?」

「いや、何でもないよ」


 思わず声に出ちゃってたみたいで、シズクの疑問を苦笑いで流す。

 それにしても、神速ってどんなスキルなんだろう。名前からすると走る速度がかなり上がりそうだけど。


 という事で、スキル詳細を見てみようか。



 ・潜在(補助)スキル:神速

 身体能力と跳躍力を強化し、このスキルの所有者の速さを恐ろしいほどに底上げする。

 スキル内容:身体強化・跳躍強化・上位AGI強化の複合スキル。このスキルを持つ者の移動系の身体能力と跳躍力が強化され、AGIの値が超強化される。



 ……本当になんだろう、これ。移動系の身体強化って具体的にどんなものですか。


 AGIが超強化って言う事は、今の私のAGIの値ってどうなってるんだろう。もともとの初期値からして最大値だったんだから、凄く上がってそうだけど。

 という事で次はステータスを確認。



 NAME:トア Lv10 残SP:3

 HP:1061、MP:687、ATK:332、DEF:279、INT:312、MIND:280、STR:200、VIT:277、DEX:295、AGI:646



 AGI:646ですか。そうですか。

 ……いや、いやいやいや、ちょっと待とうか。これ、単純計算しても以前までの約二倍くらいの速さで走れるって……いや、そういう訳でも無いだろうけど、急激に速くなりすぎて対応できるか不安になるってば。


 ん、あれ? 約二倍?


 そういえばシズクには、二倍になってたステータスがあった。確かあれはATKとSTRだっけ。

 という事は、シズクもこの神速ってスキルと類似したものを持ってるのかな。攻撃力とか筋力が上がるのなら、案外剛力って感じの名前だったりして。


 って、そんなこと考えてる暇ないって。


「ごめんね、エル。終わったよ」

「思ったより短かったな。――では、行こうか」

「はーい!」


 じゃあ、さっさと終わらせに行こうか。

 前より簡単に終わるだろうしね。



 そんな私の考えが甘かったことを思い知るのは、もう少し後の事。



今話は、何故かフォーグルウルフともう一度戦う流れになりました。

もともとこうするつもりはあまりなかったんですが、成り行きでこうなった感じですね。


更に言えば、もともと潜在スキルに関してもどうしようか最後まで悩んではいたんです。結局、色々と考えた結果入れる事にしましたけど……少し先の部分で、まぁ、そうなりますよねってことになりました。


ちなみに察しのいい方は気づいてると思いますが、何気にシズクたちが一回目に撤退する理由になった原因はだいぶ前から出ています。

これに限っては見直ししていなかったら軽く忘れたままだったでしょうし、その場合は恐らく違う流れになってたかもしれないですね。


まぁ、あれです。

答えは次話に出てくるかと思いますよ。



では、今回はここまでです。

次話は明日投稿予定で変わりなしです。


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