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Fragment of Memories  作者: 詩空
第一章 リーザリア・エルフェルド
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3-5 ただ一人を知るために


 さっきの戦闘を終えた後、近場にあった座りやすそうな石に腰を下ろして回復と、ついでに少し休憩をする事になった。


 別に休憩は要らないって言ったんだけど、クリアがどうしても取るって言うから仕方なくね。


 でも、回復かぁ……嫌だなぁ。

 腰のポーチから回復薬を一本取りだしながらも、私はそれを苦い顔で睨みつけてる自信はある。


 覚悟を決めるしかないか、本当に飲みたくないんだけど。


 だってこれ――


「うぇぇ……やっぱり苦いぃ」


 ――本当に苦いんだもん。


 薬は確かに苦いけどさ、流石にこの回復薬は苦すぎると思う。だって、下手に濃く淹れすぎた緑茶とか、かなり苦い薬とかなんかより遥かに苦いんだもん。


「我慢してください。良薬は口に苦し、ですよ。トア」

「わかってるけどさ。……だからあまりダメージ受けたくないんだよなぁ」

「そんな泣き言を言うなら、もっと集中してくださいね。集中する分だけ、受ける攻撃は減るんですから。さっきの戦闘の最初の方みたいに」


 最初の方って多分、あの変な感覚が起きたところかな。


 確かに、あの感覚に身を任せた後はクリアの戦いに完全に見入るまでの間、より意識が研ぎ澄まされて相手の一挙一動がよく見えた気がする。


 でも、あの感覚に似たようなのはつい最近にも感じた気がするんだけど……どこでだっけ。

 えーっと。確かあれは、さっきと同じように戦闘中だった筈だから昨日のうちのどれかの戦闘、それもクリアがいなかった時だからお昼から夕暮れまで。その中で集中するって程になると……あぁ、そっか。あれだ。


 昨日、キョウにしてやられたときの戦闘中の感覚だ。


 あの時は怒りのせいで限界以上の集中力と瞬発力を発揮できたんだと思ってたんだけど、そういう訳じゃなかったのかもしれないね。


 自分で限界だと思ってるものは、意外と限界まで届いていないのかもしれない。ただ、限界まで引き出すのにはちょっとしたコツがあるだけで。


 意識してあの状態に持っていけるようになれば何かと便利だろうけど、前のときとさっきのときを考えるとあまり長くは続きそうにないし、連続して使えるわけでもなさそう。

 となると、意識して出来るようになっても奥の手に近いものになりそうかな。残念だけど。


 でもまぁ、その方法も思いつかないから無駄に考えても意味ないか。と、思考を戻すことにしたところで、クリアがふと思い出したように手を叩いていた。


「ああそうだ、忘れてました。トア、右脚を出してください」

「へ? いいけど……どうするの?」

「さっき、ウルフに脚を切られたでしょう? 傷は回復薬でそのうち塞がるでしょうけど、その間にばい菌に入られでもしたら大事ですし、先程のウルフの爪に何かしらの細菌が潜んでいるかもしれないですから。ちゃんと手当てをするんです」


 そっか、ばい菌とかで体調崩したりしたら大変だもんね……って、あれ? ゲームの中で病気になることってあるの?


「少し沁みると思いますけど、我慢してくださいねー」


 いや、でもゲームの中だからと言って侮ってると、本当に何かしらの病気に罹ってしまうかも。……って、流石にないよね。ないな――


「――いぃったぁーー!!!!??」


 痛い痛い痛い痛いー!!


 ちょっと沁みるどころじゃないってこれ! 痛い、本当に痛いってば! 目がチカチカして思わず叫ぶくらい痛いって! というかこのゲームって痛みは緩和してくれるんじゃないの!?


「なに、これっ! ちょっとどころじゃないよ!?」

「あれ? おかしいですね、こんなに痛む様な薬では無い筈なんですが……。あ、そういう事ですか」


 何がそういう事なの!? ねぇ!!


 と聞き返したい気持ちと、涙を堪えようとする気持ちを押さえながらも怪我をした右脚を見てみると、そこには想像以上に深い傷跡が残っていた。


 回復薬のおかげか出血は止まっていて傷口も治りかけているが、もう少し深くやられていたら骨まで見えていた気がする。こんな所まで作りこまなくてもいいのに。


 そして、さっきのクリアの言った事の理由もよーくわかった。

 こんな深い傷なら確かにあんなに痛む訳だと納得していると、隣でクリアが何やらゴソゴソと荷物を漁っていた。


「あったあった。トア、少しじっとしててください。これだと傷が治るのはもう少し時間がかかりそうなので、しっかりとした処置をします」


 どうやら、荷物を漁っていたのはガーゼみたいなのとか包帯、薬を探していたからみたいだね。両手に治療道具を構えてるし。


「いや、いいよ。どうせすぐに治るんでしょ?」


 それにHPゲージ的には問題ないみたいだし、少し歩きにくいだけだから大丈夫。まぁ、この理由はクリアに言うわけにはいかないけどね。


 でも、クリアのこの顔からすると多分――


「駄目です。どの傷が原因で死ぬかもわからないんですから、しっかりと治療します」


 ――だよね。絶対に駄目って言われると思ってた。


 というか、クリアはどうしてここまで良くしてくれるんだろう。

 私がこういうのもなんだけど、昨日会ったばかり人間に一緒に冒険しようって言われて、提案を受けるだけでも初対面としては凄く信頼されてるのに、その上ここまで心配してくれるのは……なんだかおかしいって、流石の私でも思う。


 やっぱり、一度しっかり話をするべきなんだろうね。何で一緒に来てくれたのかって。


「痛むと思いますが、我慢してください。薬を塗ります」

「うん、わかった」


 さっきので覚悟はできてる。きっとかなり痛いだろうけど、心構えが違うから我慢できるはず――


「~~つぅ!!」


 駄目、やっぱり痛い!!


「はいはい、もう少しですから耐えてください。……やっぱり少し言い含めておくべきでしょうか。こうやって何度も傷を増やされては堪りませんよ、トア」


 クリアが何か言った気がするけど、声が小さかったのと痛みでそれを聞き取ることは私には出来なかった。


 だけど、こうして傷の手当てをするクリアの手つきは、やっぱり優しかった。



「はい、終わりましたよ。穴の開いたレギンスは今度シャーリーか防具屋にでも修繕の依頼をしておいてください、すぐに直してくれるはずですから」

「ありがとう、クリア。かなり動きやすくなった」


 試しに少し歩いてみても、治療前に比べて歩きにくさはかなり緩和されてる。これなら大丈夫かな、戦闘にも大きな影響はなさそうだし。


「それじゃあ先に――『駄目ですよ』――またぁ?」


 またクリアに拒否された、本当に大丈夫なのに。


「もう少しここで休憩していきましょう。次の町までそんなに遠くはないんですから、そんなに急ぐ理由もないでしょう? それに、大丈夫だと思ってても悪化することだってあるんですから、もっと体は大事にしないといけません」


 うっ、そんな真剣な目で見ないでほしい。拒否できないってば。


 でも、クリアが言ってることも正しいから困る。……実際、少し歩いただけで傷口が少し開いたのかHPゲージが若干減少してるし。ほんと、細かい所まで正確に再現してるね。この正確さが、今は若干憎たらしい。


 んー、これはもう仕方ないか。ここは私が折れなきゃいけないところだ。


「わかった、もう少し大人しくしてるから。そんな怖い目で見ないでってば」

「本当ですね?」

「本当」


 あはは、流石にこの辺りは全然信用されてないか。仕方ないんだろうけどさ。さっきから普通にクリアの言葉も無視して動こうとしてるし。


 その後、じーっと私の顔を見たかと思うと、嘘ではないと判断したご様子。流石に一度言った事を滅多に嘘にはしないって、いくら私でも。


「大丈夫みたいですね。こんな事なら回復魔法が使えればよかったですかね、私も」

「何で回復魔法?」

「トアは知らなかったんですね。高位の回復魔法には、普通の回復薬では治療出来ない様な傷を塞げるものがあるんですよ。中には、切り落とされた腕も元通りに繋ぎ直せるほどのものもありますから。――まぁ、今回の傷は低級でも十分ですけれど」

「へぇ、回復魔法って便利なんだね」


 腕を繋ぎ直せるって相当だと思うけど、高位って事は習得できるのはかなり後になりそう。だったら回復アイテムで賄った方が、苦みとかの弊害はあるけど楽かもしれない。普通のって事は、高価なのには同じような効果を持つ薬もあるんだろうし。


 あぁでも、二人パーティで回復はアイテムに頼るのもちょっと問題があるか。いつもいつもアイテムを使うだけの余裕がある訳でも無いし、隙にもなる。

 魔法なら消費するのは基本的にMPだけだし、隙も最小限に抑えられそうだしでこっちの方が便利なのかな。


 んー、だとしたら次にとるスキルは回復魔法にしようか。今はスキルポイントも若干余り気味だし、攻撃魔法よりは入門としては良さそうな気がするし、今から取っておいた方が成長させるのも楽になる。うん、後で取っておこう。


 って、そうだ。今なら話す丁度いい機会じゃないかな。中継地点ではないけど、モンスターがやってくるような気配もないし、落ち着いて話が出来そう。どうせまだ動けないし。


 思い立ったが吉日って事で、こういうのはさっさと済ませるのが一番だよね。


「ねぇクリア、一つ聞きたいんだけど良いかな?」

「はい、何ですか?」


 少し問いかけた声音が真剣になってしまったのか、クリアもさっきよりも真剣な顔で返事をしてくる。別にもっと楽に答えてくれる方が良いんだけど、仕方ないか。


「あのさ、どうしてクリアは私の提案を受けてくれただけじゃなくて、ここまで色々と良くしてくれるの?」

「なるほど、聞きたいのはそのことですか。確かに、トアも気になりますよね。――そうですね、どう言えばいいでしょうか……」

「言いにくいのなら、無理して話さなくても良いよ?」


 無理して話させるよりも、自分から自然に話してくれる方がよっぽど嬉しいし。


「いえ、そうじゃないんです。えっと、おかしい話だと思われそうですが何というかですね、貴女とは何故か初めて会った気がしないんですよ」


 初めて会った気がしないって……どうして? もし一度でも会ってたのだとしたら、クリアの事は忘れないと思うし、それ以上にNPCであるクリアに会えるわけがない。


「クリアと私が会ったのって、あの武器屋でだよね?」

「ええ、貴女と初めて会ったのはキリムさんの武器屋です。それは違いありません。ですが遥か昔、私が生まれた時に貴女によく似た人と過ごしていたことがあるんです。もうほとんど覚えてはいませんが」

「よく似た人って、シャーリーじゃなくて?」


 つい最近会った人の中でも、かなり印象が強かった人だからよく覚えてる。中身はだいぶ違ってるみたいだけど、外見は私を成長させたような姿だったし。


 もしもシャーリー以外にも私に似ている人が居るのだとしたら、流石にちょっと怖くなるんだけど。


「いいえ、シャーリーではありません。あの人は心根が優しさで出来ている様な、無益な争いが何よりも嫌いな人だったと辛うじて記憶しています」


 無益な争いが嫌い……か。確かこの髪飾りのモチーフになった人も、争いが嫌いだって説明にも書いてあったっけ。同じ人なのかな。

 いや、それは無いか。古き存在って説明にも書いてあったしね。


「確か名前は――駄目ですね、思い出せないです。ですが、貴女は彼女によく似ている。その心根も、優しさも。それにあの時、手を差し伸べてくれたトアの優しさが本物だと思ったから、だから私は貴女を信用しているんです」

「……そっか。ちょっとむず痒いけど、そうやって信用してくれたのなら私は嬉しいな」

「それに、トアはどこか放っておけないんです。危なっかしくて」


 えぇ……それは聞きたくなかったなぁ。昨日会ったばかりのクリアにでさえ危なっかしいって言われるなんて、思っても無かった。


 私ってそんなに危なっかしいのかな。

 シズクもキョウも毎度毎度気にかけてくるし、あの人も事あるごとについてくるしで。そこまで信用ないのかな、これに限っては。


 もう諦めてしまおう。いくら取り繕っても、もうどうにもなりそうにないし。


 それよりも、さっきの話でもう一つ気になってたことがあるのを思い出したんだよね。治るまでもう少しかかりそうだし、これも聞いておこう。


「クリア。もう一つ聞きたいんだけどさ、クリアの種族って何なの? さっきも遥か昔って言ってたし、ヒューマンでは無いって言うのはわかってたんだけど」

「あれ、言ってませんでしたか? 私はですね、大きな分類で分けるのであれば獣人、という事になると思います」

「大きな分類分け?」


 大きな分類ってたぶん五種族の事だと思うんだけど、クリアの言い方だともっと細かく分ける事が出来るって感じだ。


 獣人の種族は更に多くの種族に分けられるんだろうけれど、それの事かな。それとも、他の種族にも同じように種族の細分化が出来るのかな。


「ヒューマン・獣人・エルフ・ドワーフ・魔族の五種族の事ですよ。それで、私の具体的な種族は竜人です。ですからまぁ、獣人って言うのも少し違うんですけどね。一応区分的には獣人の区分に含まれています」


 ――とはいえ、竜人ってもう私しかいないみたいなんですけどね。


 最後にぼそりと呟かれたその言葉は、どこか寂しさを含んでいるように感じられて、私はこの瞬間だけ口を挿むことを躊躇ってしまった。



 竜人はクリア一人、か。


 種族最後の、同じ仲間が他に存在しないたった一人。その寂しさは、その孤独は一体どれだけの重さを持つんだろう。そして、その重さを背負ってきた強さも、私には理解することは出来ないんだろう。


 だけど。だけど、そんな私にも出来る事はあると思うんだ。


 それに今、何か言葉をかける事が出来なければ、私は後悔することになりそうな予感がするから。

 私は私にできる最善を尽くそう。……まぁ、答えは最初から決まってるんだけどね。


 クリアを受け入れた時点で理由がどうであれ、更にまだ言ってなかろうが、私はクリアの人生を一部だけでも背負ったんだ。だったら、これを受け止められないなんてことは許されない。

 私は一度決めたことを絶対に反故にはしないし、そのためならなんだってやろう。それでも力が及ばなかったのなら、より努力をするだけ。なら、やることは何にも変わらない。


 言葉を尽くすのに、躊躇う理由は無いんだから。


「ねぇ、私にはクリアの気持ちはわからない。今まで同じ種族の仲間が存在しなかった孤独も、寂しさも、それに耐えてきたクリアの強さも、やっぱり私にはわからないよ」

「トア?」

「でも。それでもね、私にも出来る事はあるんだ。私もさ、クリアとは比べられないけど、同じような気持ちを感じてたことがある」


 一時期、理由があって私は身内以外の誰をも信用できなくなり、心を閉ざしかけたことがある。


 けれどその時、あの人が――私の一番の親友が助けてくれた。あの時の言葉は、今でも覚えてる。


 だってその言葉は、今の私を構成する一つだから。


「私は生まれた時から特殊な体質を持ってて、自分と同じような人がいなくて孤独を感じてた時期があったんだ。私は他人とは決して相容れない、全く別の存在なんだって。だけどその時、私の親友がこう言ってくれた。

『君は馬鹿か。もともとこの世界に同じ存在も似通った存在も居ない。居るのはただ自分とそれ以外の存在なんだから、理解し合おうとしなければ相容れることもない。

 君が他の人間と決定的に違う何かがあるのだとしても、それで差別なんてするのはおかしい事だ。君が私たちと違う存在なのだとしても、それで君という一人の人間を受け入れないのなんて事もおかしい。

 だから、私は誓おう。

 世界の全てが君を否定したとしても、私だけは君を受けとめよう。私は君の事を、まだ何も知らないのだから』って。

 この時、自分の幼さを凄く実感したよ。私は何も知ろうとしなかったんだって、自分以外の私を見てくれる人以外を理解しようともしなかったんだって」


 それから私は変わっていけた。


 心無い言葉なんて気にしないで、人と言葉を交わし合い、新しく交友関係を広げていった。あの言葉で私は、人と理解し合うために必要なものを本当の意味で知ることができたから、この言葉は今の私を構成するひとかけらになった。


 だからこそ私は、救われたこの言葉を胸にクリアを受けとめよう。


 たった一人しか残っていない種族だろうと、他の存在がその孤独を受けとめられない訳がない。理解しようとしてくれる人がいればその人が孤独を受けとめてくれて、お互いの事を知っていくことで一緒に前に進めるんだから。


「だからさ、クリア。私は貴女の事をもっと知りたい。だって私はクリアの事を、まだ全然知らないんだから。そして、貴女の孤独を受けとめたい。私はもう貴女の人生を、一端とは言え背負っているつもりなんだから」

「トア……」

「迷惑、だったかな」


 迷惑だったのなら、クリアの事を知るだけでもいい。それだけでも、孤独を和らげることは出来るだろ

うから。


「凄いですね、トアは」


 否定されることも覚悟で返事を待っていると、予想もしていなかった言葉が返ってきたことに、少し驚いた。


「凄い?」

「はい、凄いですよ。たったあれだけの事で私が隠していた、長い間ずっと感じてた寂しさがわかってしまうなんて。今まで打ち明けてきた人はシャーリーとトア以外は皆、上辺だけの慰めだったり、わかる振りをしてくるような人ばかりでしたから」


 クリアは何かを思い出すかのように空を仰ぎ、目を伏せる。


「『その気持ちわかるよ、今まで辛かったね』と言われたときもありました。その時は、貴方は私の何を知っているんですかと問い返すと、何も言えずに離れていきました。

 ある時は『私が貴女の家族になってあげよう』なんて上から目線で言ってきた人もいましたね。その人に私はそんなものが欲しいのではないと言うと、訳のわからない事を叫びながら殴りかかってきました」


 ――本当に似たり寄ったりな人ばかりでしたよ。


 心底呆れたと言わんばかりに溜息を吐きながらこぼした言葉は、とても疲れ切った事がよくわかる程の実感がこもっているのが感じ取れた。


 次に閉じた眼を開け、僅かに細めて言葉を続ける。


「シャーリーは何も言いませんでしたが、恐らく全てわかっていて何も言わなかったんだと思います。そして貴女は唯一、私を知ろうとしてくれた。私の孤独を知りながらも、私の事を知りたいと、受けめたいと言ってくれた。貴女は、私が今まで欲しかった言葉をくれたんです」


 そして私の顔を真っすぐに見つめてきて、


「ありがとうございます。貴女が手を伸ばしてくれて、その手を取ることが出来て本当に良かった」


 と、今までのような少し硬い微笑では無く、満開の花が咲いたかのように綺麗な笑顔を浮かべている。


 ――ああ、この笑顔を見れて良かった。そう思うほどに、今のクリアは綺麗だった。


「これからもよろしくお願いします、トア」

「こちらこそよろしくね、クリア」


 これが私たちの最初のスタートラインで、ようやく私たちは一つのパーティになれたんだと思う。


 周りからすれば小さな一歩かもしれないけれど、私たちには大きな一歩。これから先が楽しみだと、今の私は純粋にそう思っていた。


「話してるうちに、もう傷も動きに支障がない位に治ってるし。先に進もうか」

「そうですね。夕暮れまでには余裕をもって次の町には着けますが、思ってたよりも長い間話し込んでしまっていましたし。少し急ぎましょう」


 正直、中継地点でもない場所で延々と話してたのに、途中で襲われなかったのは奇跡に近いと思う。

 傍目から見ると確実に隙だらけだっただろうし、モンスターの群れの一つや二つくらいは出てきてもおかしくは無かったのにね。


第……何回かもう忘れたので、普通に単語解説コーナーです。


回復薬:低級の回復アイテムで、恐ろしいほど苦い薬。その代わり効果はちゃんとしてます。


疫病:状態異常とはまた違った特殊な状態。切り傷等から入り込んだ細菌によって、酷い場合は死に至るレベルの物を発病することがある。怪我には要注意。

回復魔法なら消毒なども同時に行うのであまり気にしなくていいが、アイテムで回復する場合は消毒などしておくと万全である。


竜人:区分的には獣人に分類されるが、具体的には五つの種族のどれにも属さない幻想の種族。今はクリアしか存在していない。



今話はクリアのちょっとしたお話になります。

内容的に区切って続きを合わせると少し微妙な感じになりますし、かといって合わせなければ次話がかなり短いことになってしまいそうだったので、今回はいつもより長めになってます。


それでは、今回はここまでです。また次話でお会いしましょう。

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