表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fragment of Memories  作者: 詩空
第一章 リーザリア・エルフェルド
17/55

3-4 次の町へ


「本当にここからで良いの?」

「はい。次の町に向かうのであれば、この中継点から向かうのが一番早いです」

「よし、それじゃあ次の町まで頑張って進もうか」

「ええ」


 結局あれから場所は変えたものの、シズクたちがずっと言い合っていたのを見てたらお昼が近くなったために一度クリアと別れてログアウトした後、ご飯を食べて少し休憩してからもう一度ログインしてからクリアと合流しなおして、広場の転移ポータルから二つ目の中継地点に飛んできたのが、ついさっきまでの出来事。


 何気にクリアと別れるときが一番大変だった。一緒にお昼食べましょうとか、何で一度別れるんですかと、クリアからするとその通り過ぎる事を言われてどう返したものかとかね。


 でもまぁ、クリアがNPCだってわかってた上でパーティに誘ったんだから、こういった面で面倒なことが起きるのは覚悟の上ではあったけどさ。でも、思ってた以上に頑固だったのは少し意外だったかな。

 せめて晩御飯ぐらいは一緒に食べよう。ゲーム内で食べても、現実では特に影響は無いみたいだったし。


 あとシズクとキョウはそれぞれログインしているみたいだから、二人は好きにやると思う。キョウは確か、βの頃からの友達と合流するんだっけ。

 シズクは昨日言ってた通りに気になることを調べながらパーティメンバー探しに行くんだろうけど、どうなんだろう。流石に一人じゃ辛いと思うし、誰かと組むと思うんだけど……まぁ、シズクなら大丈夫だと思いたい。


「トア、一時方向にウルフの群れが見えます。ここから見える数で大体五匹ですかね、こちらに向かってるみたいです」


 二人でのんびり話をしつつ、他愛のない事を頭の片隅で考えながらも中継地点から歩いて少しした頃、クリアがモンスターを見つけたらしい。


 言われた方向を見てみるも、遠くの方に何か小さい粒のようなものがあることしか確認できなかった。


 なんというか、凄い視力だね。

 あんなに離れた場所のモンスターなんて、私には判別できる気がしない。


「あんなに小さいのによく見えるね、私にはちっちゃい粒にしか見えないや」

「取り柄の一つですから。流石に、鳥類系の獣人の方には及びませんが」

「その種類の獣人ってどこまで目が良いの……? この距離でもはっきり見えるクリア以上って相当だと思うんだけど」


 ここからあそこまで多分1Kmと少しくらいかな。


 それくらい離れててもはっきりと見えるのなら、クリアの視力は最低でも鷹とかクラスなのにそれより視力が良いのは……どこまで見えるんだろう。3Km位先は余裕で見渡せそうだけど、想像もつかない。


 しかも鳥類って事は空も飛べるだろうし、更に広い範囲まで見る事が出来るのかもしれない。そうしたら索敵とか、かなり楽になりそう。


「どこまでと言われると具体的にはわかりませんが、聞いた話によると地平線の辺りまでは簡単に見えるらしいですよ」


 大体予想通りだったけど、これはこれであまり嬉しくはないかな。

 どちらかと言えば、獣人の人たちとは仲良くしたいって気持ちの方が強くなったかもしれない。敵に回したと考えたらどうにも……うん。


 これ以上考えるのは止めよう、不毛だし。


 それよりも、もうすぐウルフが追い付いてきそうだから戦闘準備しないと。と、昨日からそれなりにこなして、少し慣れてきたように剣を抜いたところで一点気になった事があった。


「ねぇクリア」

「はい? 何でしょうか」

「昨日はああ言ってたけど、ほんとに武器は要らないの?」


 気になったのは、本当に武器は要らないのかってこと。


 昨日は確かに武器が性に合わないからこれで戦うって言って、実際に身一つで戦ってたけど、それでも手甲だったりは必要だと思うんだ。昨日はスルーされたけど。


 最初はそれで良くても、後々硬い敵とか出てきたらと思うと素手っていうのはどうもね。


「あー、そうでしたね。確かに武器は性に合わないと言いましたが、他にもあの時は倉庫に装備を預けてたってのもあるんです」

「……つまり?」

「つまり、今はちゃんと武器を装備してますよって事です。と言っても、手の方はもともと持ってなかったので脚だけですけど」


 ほら。と言われるままクリアの脚を改めて見てみると、確かに昨日は無かった金属の複合パーツみたいなのがブーツに取り付けられている。


 それぞれのパーツは所々尖っていたり、あからさまに刺す事を目的とした棘とかが付いている、金属防具よりも物々しく攻撃的な外見になってて、実際にあれで蹴られたら悶絶どころじゃすまないと思う。


「これで蹴られたら凄く痛そうだけど、何で脚だけ? 普通に殴ってたけど」

「私はもともと、蹴り主体で戦ってたんですよ。ですけど昨日は昨日で森の中でしたし、装備も持って行ってなかったのと、久しぶりに戦うので勘を取り戻す為に拳主体で戦ってたんです。久しぶりの戦闘で蹴りを主体にすると、よくバランスを崩して転んだりしますので」

「それじゃあ、今度はクリアの本来の戦い方が見れるんだね」


 蹴り主体の戦い方ってどんな感じなんだろう。


 キックボクシングとか見たことはあるけど、あれは実際の戦闘に用いるなら応用しないと立ち行かなくなりそうだから、どんな風に戦うのか予想がつかない。


 それに、この世界だったらキックボクシングとか無いだろうから、クリアの場合は我流なのかな。だったら尚更楽しみ。


「ふふっ、その期待に応えられるように頑張りましょうか」

「あれ、また顔に出てた?」

「はい。ですが今回は顔というより、眼が凄く興味津々だというようにキラキラと輝いてました」

「それはそれで、ただ顔に出るのより恥ずかしいかな……」


 あはは、なんだか顔が熱くなってきた。


 しかも、クリアはクリアでまた微笑ましそうな顔してるし。

 あー、もう。なんか変に恥ずかしいけど、ウルフがもうすぐそこまで近づいて来てるから切り替えないと。


 今はシズクもキョウもいない二人での冒険なんだから、油断して戦ったら何が命取りになるかもわからないし。特に、クリアが死んだらどうなるかわからないんだから。


「この話はここでおしまい。うん、おしまい。もう近づいてきたから」

「ええ。でも、昨日みたいに油断しないでくださいよ?」

「わかってるよ!」


 なんだかクリアと一緒に過ごしていると、最初の頃に感じてたイメージが良い意味で壊されていく。でも、最初の凛々しそうなイメージも捨てがたいような……そうでもないような。


 でも、このクリアの方が関わりやすいし、私も楽に話せるからいいかな。イメージは所詮イメージだし。


 それじゃあ、さっさと倒して先に進もうか。



 彼我の距離が10m程までに近づいてきたところで、クリアと視線を交わして同時に飛び出す。


 ウルフは足が速くてすばしっこいから、後ろを取られないように気を付けて動かないといけないから、そこは注意しないと。後ろを取られたらどうなるかもわからないし。


「クリア、そっちの二匹はお願い! 私はこっちで三匹引き付けておくから!」

「――わかりました。トアも気を付けてくださいよ!」


 モンスターの数はクリアが最初に確認したウルフが五匹で変わりはなかったけど、それでも二人で一息に倒すには難しいから動き回りやすい私が多めに引き付けておいた方が、蹴り主体のクリアにとってはやりやすいだろう。


 クリアに声を飛ばしつつ、中央から右側に居る三匹に向かって走りながら、石を真ん中の一匹に向けて牽制で蹴り飛ばす。うまい事当たれば確実に注意を引けるし、当たらなくてもこっちに気を取られるはず。


 石が当たったかどうかはしっかりと確認せずに、走る勢いそのままに残りの右側二匹に斬りかかるが、ギリギリ避けられてしまった。


 流石に、微妙に体制が崩れた状態じゃあ当てるのは難しいか。

 と、その時。石を飛ばした方向から微かな唸り声が聞こえてきた瞬間、僅かに意識が研ぎ澄まされた感覚がした。


 何となくこの感覚に逆らわないで動いた方が良い気がして、その感覚を頼りに後ろに振り向きながら剣を振るうと、丁度そのタイミングでウルフが飛び掛かって来ていた為、そのままの勢いで斬り飛ばす。


 そうして斬り飛ばしたまま後ろを振り向いた瞬間、なかなかに爽快な光景が目に入ってきた。


 私の視線の先には当たり前だがクリアがいて、その光景はクリアが流れるように二匹のウルフを蹴り飛ばしているところで、私はそのまま背後から襲い掛かってくるウルフを避けつつも斬りながらも、思わずその戦いを観察し始めてしまった。


 クリアは、まず片方のウルフを走った勢いをそのままに回転しながらの左後ろ蹴りで蹴り飛ばした後、もう一匹に右回し蹴りを叩き込んで吹き飛ばして、最初に飛ばしたウルフに向かっていく。


 そして、体勢を立て直し始めた最初のウルフに近づき、すぐに腹の下に差し込んだ右足で蹴り上げ、回転しながら左踵落としで地面に叩きつけて跳ね上がった所を、回転した勢いそのままに右足で更に蹴り抜いてとどめを刺す。


 次に、クリアが蹴り抜いた隙に残りのもう一匹が飛び掛かってきたのを、振り抜いた勢いを利用して回転しながらウルフの左前足を右手で掴み、更に突進の勢いをも利用して地面に叩きつけ、追い打ちで左脚を沈み込ませながら右膝を叩き込んで二匹目もとどめを刺した。


 ――その瞬間だった。二匹のウルフが、私に向かって攻撃を仕掛けてきていることに気付いたのは。


「くっ! 足を!?」


 クリアが華麗な足技の連携でウルフを流れるように処理していく姿はとても綺麗で、少しの間とは言え目を奪われたその隙に二匹のウルフが攻撃を仕掛けて来ていたのに寸前まで気づかず、片方は間一髪で避けることは出来たけれど攻撃をまともに受けてしまい、そこそこ大きなダメージを受けてしまった。


 クリアが二匹を相手していた間に何とか一匹は倒していたものの、避けきれなかった僅かなダメージも蓄積してたのかだいぶ体力が減ってしまっているし、更に足を狙われたせいか少し動きが鈍くなってる。


 これは一度、回復に回りたいけど、その隙を作るのも一苦労か。


 どうしよう、この状態で攻撃を捌いて行くのは少し辛い。……いや、クリアのさっきの戦いを参考にすればいけるかな。

 あの二匹はもう一度同時に攻撃してくるようで、飛び掛かろうと身をかがめている。これなら、さっき思いついたのを実行できそうだ。


 タイミングが重要だから、動きをよく見て……飛び掛かってきた今!


 クリアと同じように飛び掛かってきた片方の前足を掴み、その勢いと遠心力を利用して振り回す。そして、もう片方に振り回した一匹をぶつけて落とし、片方ににとどめを刺したところでクリアもこちらに合流して、最後の一匹にとどめの一撃を落とした。


「ふぅ、何とかなった」


 まさか、一瞬とは言えまた油断して危ない目に合うとは思わなかった。これ以上同じ目に合わないように、戦闘中は本当に油断しないようにしないと。何度も何度も同じような目に合ってたら、クリアに何か言われそうだし。


「……トア」

「言わないで、わかってるから。本当にわかってるから」

「む。でしたら、これっきりにしてくださいよ?」

「はい……」


 というか、言われかけてたね。うん、反省してます。



今回の単語解説コーナーもお休みです。……と言うより、紹介するようなのが出てきそうにないです。



今週も色々と用事がありまして、今話だけの投稿となります。ここ最近はあまり投稿が安定出来無くてすみません。

言い訳のようになってしまいますが、やはりお盆期間中とその前後は色々と忙しくて、先週同様あんまり時間が取れませんでした。


来週からは、週末二回投稿が出来るようにしたいと思います。


それでは、今回はここまでです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ