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Fragment of Memories  作者: 詩空
第一章 リーザリア・エルフェルド
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3-1 防具探し


「……て。おね……きてー」

「ん……」


 まだ……眠いよ……


「起きて―、……ちゃん。あれー、…………き悪かったっけ?」


 ――ユサユサ、ユサユサ。


 まだ寝るのー……眠いー。


「やー……」


 ――ガン!!


 んにゃ……なんの……音……?


「いったぁ……。久しぶりに寝ぼけてるとはいえ、まさかこんな反応を返すなんて……。いや、でも起きなきゃ駄目だよ、お姉ちゃん!!」

「ふぁ……?」


 雫の少し焦ったような声に、微睡から意識が浮上してくる。意識が覚醒し始めたところで、どこか違和感を感じた。


 ん、雫の声……? 起きて……ってあれ? 私、寝てたの?


 私、いつの間に寝てたんだっけ。確か昨日は、シャーリーと話しててそれから……それからどうしたんだっけ。今見えてるのはいつもの私の部屋なんだから、今は現実の世界。ゲームの中じゃないのはわかるけど、どうやって私はログアウトしたんだろう。


 ログアウトの仕方はいまいち予想がつかないけど、眠ってたのはたぶん疲れて話してる間に寝落ちちゃったんだろう。それだったら記憶が無いのにも説明がつくし。


 もしかしたら、ゲーム内で眠ったら幾らか時間が経ったら自動的にログアウトするようになってるのかもしれない。だったら、こうしてビジョンデバイスを付けたまま寝てたことにも説明がつくもんね。


「あ、ようやく起きたんだね。早くしないともうすぐ約束の時間になっちゃうよ、急いで」

「約束の時間……あ、恭也と約束してたんだっけ」


 昨日の夜に色々とあったせいですっかり忘れてた。えっと、時間は解散する直前に言ってたっけ。


 時間は確か――


『それじゃあ、明日は朝の9時半に広場集合で。じゃ、また明日な』


 ――だっけ。今の時間はーっと、9時?


 うん、確かに急かされる訳だね。こんなに寝坊するなんて何時振りだっけ。もう長いこと寝坊なんてしてなかったけど、そんなに疲れてたんだろうか。


「ほら、早く着替えて。朝ごはんも用意してあるから」

「ありがとう、雫」


 雫に急かされるままに着替えを済ませてリビングに出ると、手軽に食べれるように配慮したのだろうトマトとレタスにキュウリのと、卵の二種類のサンドイッチとかぼちゃの冷製ポタージュが用意してあった。


 まずは顔洗って来よう、食べるのはそれから。


「いただきます」


 洗面所から戻って椅子に座り、さっそく卵のサンドイッチから手を付ける。


 うん、シャーリーの料理は美味しかったけど、この食べ慣れたいつもの味が一番かな。あそこまで美味しいと、やっぱりどこかムズムズするし。


 むぐ。野菜サンドの方のタレを変えたのか、前より少し美味しくなってる。触発されたのだろうか。


「そういえばお姉ちゃん、体は大丈夫?」

「へ?」


 ひょいっと、頭だけをリビングに突き出してきた雫がいきなりそんなことを聞いてきた。


 体? きょろきょろと自分の体を見回しても、特に問題は無いと思うんだけど。寝てる間に何かあったのかな。


「問題なさそうだね、その調子だと」


 ?? ホッと、安心したように息をついてるけど、なんで心配してたんだろう。さっぱりわからない。


 とりあえず、食べ終えてしまおう。


「まぁ、うん。それもいつも通りだね」

「?」

「気にしないでいいよ」


 そっか、なら気にしないでおこう。

 もそりと最後の一口を食べつつ、そう結論づける事にする。うん、美味しかった。


「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした。後片付けはしておくから、歯磨きとかしちゃってね。寝ぐせ残ってるし」

「ん、わかった」


 じゃあ、もう一度洗面所にこもることにしよう。


 寝ぐせが残ってることにも気づかないなんて、思ってたより寝ぼけてたみたいだし。



「お。連絡あったとはいえ、遅かったなお前……ら?」

「ごめんね、キョウ。ちょっとゴタゴタしてて」


 私たちが広場に着いたときには、当たり前だけどすでにキョウの姿があった。


 今の時間は、待ち合わせの時間から少し過ぎて9時52分。22分の遅刻。

 いや、ログインしたのは大体待ち合わせの10分くらい前だったんだよ? でも、ログインした時の再開地点がログアウトした場所だなんて知らなかったし、大通りから女神の宿場までの道順を覚えてなかったからクリアと合流するまで移動できなかったし、クリアと合流するまでに連絡を取るところで一悶着あるしで色々と……うん、女神の宿場にポータルが設置されてなかったらもっと遅くなってたかもしれない。クリアに言われるまでそれを知らなかったのもまぁ、ある。


 さっきまであった事を長々と考え込んでいた私の前で、キョウは固まっていた。何でだろうか。


 っと、そうだ。そんな事より、昨日試験クエストを終わらせたのを話しとかないと。


「いや、ちょっとまでトア。ゴタゴタしてたのはまぁ、シズクから送られてきたメッセージを見れば十分にわかる。だけどな、一つ聞きたい。何でここに武器屋の人がいるんだよ」

「ああ、そっか。昨日キョウはいなかったし、知らないよね」


 丁度良いや、昨日の事も併せて一緒に説明してしまおうか。面倒だから、簡潔にで良いよね。


 クリアには聞き取れないように、耳元まで顔を近づけてから、


「えっと、昨日の夜シズクと観光しにログインしてたらなんか暗くなってるクリアを見つけて、話を聞いたら事故で武器屋を解雇されたらしくて、それで一緒に冒険しようって話になって、そこからギルド行ってクリアの試験クエストを受けて、氷結の森外周部に行ってクエスト達成してきた」


 と、一気に説明したところ。

 なんかキョウのキャパシティが限界に達したらしく、再び固まった。


 あれ? なんか変な話をしたかな、私。


「ああ、うん。色々と言いたいことが多いが、これだけは言わせろ。――だったら連絡の一つくらいよこせよ!! 呼んでくれれば手伝ったってのに」

「呼んでも良かったの?」

「当たり前だ。昨日別れる前にも言ったろ、昨日一日と今日の午前の時間は二人に空けてるって。その時間だったら俺もログインしてたし」


 確かにそう言ってたっけ。


 もし手伝ってもらってたら、もっと早く終わってたのかな。

 ……あー、うん。あの彷徨ってた時間を思い出しちゃった。あそこまで自分に運が無いとは思わなかったし、キョウがいても結局大差なかったかもしれない。


 いや、でも私ってそんなに運無かったっけ。


「違うこと考えてそうだけど、まぁ、理解してるみたいだから良いか。てか、クエスト終わってるのなら予定変更するか。二人もまだ初期防具みたいだし」

「その前にちょっといいですか、キョウさん」

「どうした?」

「あのですね、キョウさんとクリアさんの自己紹介ぐらいは済ませた方が良いんじゃないかって思うんですが」


 そういえば、二人は実質初対面みたいなものだっけ。完全に忘れてた。


「なるほど、んじゃあ俺から。俺はキョウ、二人の幼馴染だな。よろしく」

「私はクリアです。つい昨日、トアに誘われてギルドに登録しました。こちらこそよろしくお願いします」


 なんか簡潔だね、確かにそんな話すこともないだろうけどさ。


「よし、それじゃあ行くか」

「どこに行くの? 別な所に行くつもりだったみたいだけど」


 私のクエストは終わってるから森に行く気はないだろうし、さっきまだ防具がとか言ってた気がするから……目的地は防具屋?


 そういえば夜は観光とか色々してたから、結局防具は後回しにしてたというか、そこまで考えが至ってなかったというか。何となく考えて無かった。一応、適当にお店探して買おうとは思ってたんだけど。


「予想は付いてるだろ。まぁ、始まってからもうすぐ一日経つし、もう開けてるやつは開けてると思うから少し探すことになるけどな」


 予想は付いてるってことは防具屋で間違いなさそうなんだけど、少し探すってどこに行くんだろう。

 始まってから、開ける、この二つから考えるとプレイヤーが関係してるんだろうけど、お店でも開いてるんだろうか。でもそうなら早すぎないかな、どれだけやってるのさ。


「見つかっても転売の可能性もあるから、正直NPC店舗で買った方が良いんだろうけどさ」


 転売って、ここでもそんなことする人いるのか。楽して稼ぎたいってのはわからないでもないけど、そんなやり方してまで稼ぐのはどうかと思うんだけどなぁ。


 そうして当てもなくお店を探し始めたけど、キョウが探してるらしいプレイヤーのお店は全然見つからない。やっぱり早すぎたんじゃないかと思う。それか、探すところ間違えてるんじゃないのかな。NPCの防具屋もこの辺りにはないし。


「あの、トア。何を探しているんですか?」

「防具屋を探してるんだけど、ちょっと見つからなくて。この街はやっぱり広いよ」

「そうですね、慣れないうちはあまり裏路地には入らないほうが良いですよ。あまりにも複雑になってるせいか、毎年何人も行方不明になってるって噂にもなってますから。それと、防具屋ならおススメのお店がありますけど」


 やっぱり、そんなに複雑になってるんだ、この街。行方不明の噂が出るまでとは思ってもいなかったけど、最初に感じたイメージは間違っていなかったわけだね。嬉しくないけど。


 ん? ちょっと待って。最初の方のインパクトが大きすぎてスルーしたけど、おススメのお店があるって言ったよね、この人。あんまりにもさらっと言われたせいでわかんなかった。


「おススメのお店って、どこにあるんです?」

「ここからならだいぶ近い筈ですよ。確か……こっちですね」


 話を聞いてなかったキョウの襟首をシズクが引っ掴んで引きずりつつ、昨日と同じようにクリアの後に着いて行く。


 東南の通りに入って少ししてからまた路地に入っていったけど、昨日と違ってあんまり路地の深い所までは入っていく様子はない。あんまり深い所にあってもお客が来ないのなら、防具屋とかは意味が無いか。キリムさんのとこも大通りからはそんなに離れてなかったし。

 キリムさんのところも、早く建て直せるといいね。


「ああ、ここです。ここなら金属・皮・布それぞれで、私たちのレベルからすると良いものが売ってますよ」


 そうしてたどり着いたのは、NPC店舗の防具屋だった。名前は――『フィラザード』?

 どんな意味なのか気になるけど、店名を気にしても特に意味は無いか。


「なんか知らんうちに決められてたけど、まぁいいか。見つかんなかったし、ここはここで悪くなさそうだ。……でも、あいつ始まったらすぐにでも店開けるって言ってたよな」


 なんかぼそぼそ言ってるけど、キョウも文句はないようだから問題ないね。じゃあ中に入ってしまおう、そこまで時間かける気もないし。


 えっと、入り口は……引き戸みたいなここかな。入り口がわかりにくいのはお店としては如何なものかと思うけど、これも個性? ってことで良いかな。うん、考えなくてもいいよね。


「いらっしゃいませー」


 それで、さっそく店内に入ったわけだけど。


 武器屋よりも何というか……地味。武器と比べたら仕方ないのかもしれないけど、なんか地味だね。その代わり店舗面積はかなり広いみたいだけどまぁ、入り口が引き戸になってるのも納得というか。

 各種類の防具を扱ってるせいか、物が多すぎて一つ一つの通路が狭い。横になってもすれ違うので精一杯って位には狭いね。大丈夫なのだろうか、このお店。


「おお、思ってたよりも品ぞろえ豊富だな。外観の広さは伊達じゃないってことか」

「そうですねー、これなら掘り出し物もありそうです。キョウさんはどんな防具使うんですか?」

「俺か? 俺は基本的には金属系の軽鎧と籠手と、皮系装備を幾つか合わせてたかな」

「キョウさんのくせに意外と合理的ですね」

「おう、馬鹿にしてんのかシズク」


 キョウは馬鹿ではないもんね。

 重量とか、行動制限とか考えた上だとキョウの場合は、確かにその組み合わせが良いだろうし。


 私の場合は下手に防御力を上げたりするよりも、足の速さを生かした方が良いだろうから、行動の阻害になりやすい金属の鎧系は却下。皮も物によっては邪魔になりやすい部分もあるだろうから、グローブとかの一部を除いて却下。


 すると、消去法でいくと布系の防具がメインになるか。……布系の防具ってどんなのがあるんだろう、なんか想像つかない。




えっと、今回の単語解説コーナーは番外編です。以前に出したものの追加解説になります。


NPC:WoRの世界に生きる人々。自分の意思で行動を決定し、生きている。また、プレイヤーが使っている機能は、もともとNPCも使うことができる物である。今現在使えるかは、人による。


すいません、少し体調崩してたせいか、短いわりに投稿まで少し時間がかかってしまいました。

今もまだ回復しきってはいないので次話も遅れるかもしれませんが、出来るだけ早めの投稿が出来ればと思います。


次話の投稿予定は2~4日ほどを予定しますが、先の通り少し遅れるかもしれません。


それでは、今回はここまでです。

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