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Fragment of Memories  作者: 詩空
第一章 リーザリア・エルフェルド
13/55

2-4 おやすみなさい

今回は試験的に複数の視点が混ざってます。




「そんなに難しく考えないで、トアちゃん。これはただの忠告。私が貴女の事を見てて思った事を言っただけ何だから、大丈夫だよ」


 まさか、良かれと思って忠告したことでこんなにもトアちゃんが混乱するなんて思わなかった。


 私自身はトアちゃんの事情を知らないし、わからないけれど、それでも一瞬だけ見えたこの娘の悩みを知ってしまったら、これだけは言わなければいけないって思っただけだったのに。


 ああ、もう何言っても聞こえてないー……。どうしよう、これじゃあどっちにしろ怒られそう。


 ――あーもういいや。どっちにしろ怒られるのなら、この記憶は消してしまった方が良いかもしれない。その程度の細工ならちょちょいと出来るし、こうなったら案外その方が上手く纏まるかもしれない。


 よし、決めた。トアちゃんには悪い事をしてしまうだろうけれど、やってしまおうか。

 今なら、クリアちゃんもシズクちゃんも食べるのに夢中になっててこっちには気付かない筈だけど、一応念には念をって事で細工だけはしておこう。


 ――うん、それじゃあ始めようか。



「トアちゃん」


 それは、未だに私が混乱から抜け出しきれずに頭を抱えていた時だった。


 さっきから何度も話しかけられていたのはわかっていたけれど、それに反応を返すことができないほどに混乱してしまっていたために、その全てを無視してしまっていたのだけれど。その声だけは何故か無視することが出来なくて、シャーリーの顔を窺ってみる。


 すると、シャーリーの顔はどこか覚悟を決めたような表情で、私の事を見つめていた。


「どうしたの……? シャーリー」

「ごめんね、トアちゃん。今からすることは何時かちょっとだけ貴女を傷つけるかもしれないけど、目が覚めた頃には全部忘れてしまってるはずだから」


 その言葉が終わると同時に、シャーリーの顔が徐々に近づいてきた。

 何でシャーリーはこんなに近づいて来てるんだろう、私の顔に何かついてるのかな。


 ……いや、ちょっと待って。本当に待って。近い近い近い近い!! 何でこんなに近づいてくるの!?


 内心でもの凄く焦っている私の事を気にすることもなく、そのまま更に近づいてきたシャーリーはそのまま私に……?


「おやすみなさい。大丈夫、悪い夢は見ないから」


 最後にシャーリーにされたことを認識しきる前に、私の意識は闇に落ちていき、完全に意識が落ちきる寸前、とても優しい声が聞こえた気がした。



「二人とも、ちょっといいかしら」


 とても美味しい晩御飯に少し嫉妬しつつもクリアさんと大体同時に食べ終えて、デザートの果物に手を付け始めたとき、唐突にシャーリーさんに話しかけられた。


 ついさっきまで、私たちよりも早々に食べ終えていたお姉ちゃんと話していたから、まだ食べているこっちには話しかけてはこないだろうなぁって思っていたけれど、そうでもなかったみたい。


 どうしたんだろう。そういえば、お姉ちゃんも静かになったような……


「まだ食べている途中なのにごめんなさいね。トアちゃんが疲れたのか眠っちゃったみたいで、お部屋まで運ぶから少し離れるの。食べ終えたらお皿はそのままにしておいてね、後で片づけておくから」

「わかりました。でも、お姉ちゃんは大丈夫なんですか? その、『ログアウトしなくてもって?』……はい」


 流石に気付くよね。この人は、他のNPCと違って私たちプレイヤーの事とかをよく知っているみたいだし。


「大丈夫。一時間も目を覚まさなかったら、強制ログアウトされるようになっているから。だから安心して、シズクちゃん」

「そう、ですか。お姉ちゃんをお願いします」

「ええ、任せて」


 そうして、シャーリーさんはお姉ちゃんを抱き上げて食堂から歩き去っていった。


 確か、お姉ちゃんの部屋は206号室にしたんだったっけ。何かに気を取られてたようだから鍵は私が持ってるから、後で置きに行くついでに様子を見に行こう。


 だけど、まさかお姉ちゃんがそこまで疲れてたなんて。全然気が付かなかったな、最後の森探索が祟っちゃったのかな。


 んー、やっぱり多少の仕返しがあったとはいえ、わざと言葉の意味を取り違えたふりをしたのは失敗だったかなぁ。もう少しだけ穏便に済ませればよかったかもしれないね。結論としては、お姉ちゃんの試験クエストが早く終われたんだから後悔はしてないけどさ。


 っと、果物も食べ終わっちゃった。もうそろそろ眠る準備した方が良いかな、時間も時間だしね。


「私たちも行きましょっか、クリアさん」

「そうですね、もう遅いですし。それで、明日は何時集合なんでしょうか?」

「へ?」


 クリアさんも食べ終えているのを確認して、二人で部屋に向かい始めたところで、明日について聞かれた。


 明日の集合? ……あー、そっか。クリアさんはNPCだから、メッセージとか遅れないのかな。あれ、でもフレンドにはなれた? んだし、ボイスチャットは無理でもメッセージのやり取りくらいは出来そうだけど。


 試しに送ってみよう。えーっと、内容は簡単に『届いてますか?』でいっか。


 送信しますっと。どうかなー。


「ひゃ」


 と、試しにメッセージを送ったすぐに、クリアさんから可愛い反応が返ってきた。この反応から察するに、これの存在は知らなかったって事なのかな。


「こ、これは何なんですか?」

「メッセージって言う……なんて言うのかな、魔法みたいなものですかね。送れたという事は、クリアさんにも使えると思うんですけど」

「どうやるんです?」


 どうやるって……どうやるんだろう? 私たちはメニューを開くなりして簡単に出来るけれど、NPCの人たちってそれは出来るのかな。……出来なさそうだよね。


 あっ、そうだ。もしかしたらフレンドとかのシステムが、私たちとNPCでは根本から違う可能性もあるのか。だとしたら、これでいけるかも。


「そうですねー。例えばですけれど、クリアさんの親しい人とか、親交のある人の事を頭に思い浮かべてください。その状態で連絡しようとしてみたらどうですか?」

「わかりました、やってみます。思い浮かべるのは、シズクさんで良いですよね」


 そうしてクリアさんが集中し始めたとき、何か回線がつながるような感覚がした。


 これって、もしかするとボイスチャットの回線が繋がったのかな。でも、そうだとしたら何で繋がったんだろう。まさかとは思うけど、連絡のイメージにしたせい?


 手紙を送るイメージにすれば良かったのかな。でも、結果オーライ? かな。


 えっと、それじゃあ少しクリアさんから離れて。次にこっちからも接続の許可を出して応答っと――


『クリアさん、聞こえてますかー?』

「ひゃああ!!?」

「あうっ!? キーンって来たぁ……」


 いたた……。耳にキーンって来るのはあるけど、頭の中がキーンってするなんて経験は初めてだよ。出来ればもう経験したくないけどさ、クリアさんが慣れるまでは続きそうな気がする。


 とにかく、こっちから回線を切ってクリアさんの近くまで戻ろう。


「す、すいません! 唐突に頭の中に声が響いたのに驚いてしまって」

「大丈夫ですよ、いきなりだったら驚くのも無理ないですし。これから慣らしていきましょう」

「はい」


 そういえば、どうしてこんな話になったんだっけ。


 確か、明日の予定について話してて、メッセージとかで連絡取れないかって試しに送ったのが始まりか。だいぶ脱線しちゃったかな。


「それでですね。明日はこれらのどっちかを使って連絡しますから、それまでは好きにしていいと思いますよ。用事が他にあるのなら断っても、お姉ちゃんは怒りませんから」

「わかりました。では、また明日ですね。おやすみなさい、シズク」

「はい、おやすみなさい」


 話していたら、いつの間にか部屋の前に着いていたみたい。


 挨拶を交わしつつ、クリアさんが部屋に入っていくのを確認してから、私はお姉ちゃんに割り当てられた部屋へと入っていった。


「お邪魔します、って言うのもなんだかむず痒いかな」


 何も言わずに入るのも失礼だし、たまにはこういうのも良いよね。

 お姉ちゃんはーっと……。うん、ちゃんと寝てる。このまま寝続けてれば、自動的にログアウトするんだったよね。起きる様子もないし、大丈夫かな。


 それじゃあ後は鍵を置いて――置いて大丈夫なの?


 テーブルに置いてても消えないって保証もないし、置いてたとしてもまだ所有権は私にあるんだから、離れたと同時に戻ってこないとも限らない。んーっと、だとするなら……そうだね。


「やっぱり、鍵は明日お姉ちゃんに渡しておこう。それじゃあ、おやすみ」


 私も自分の部屋に戻ろう。もうすぐ12時過ぎちゃうし、もう寝る準備しないと。


 最後にもう一度だけ寝顔を覗き込んでから部屋を出て、隣の自分の部屋である207号室へと入り、備え付けのソファに座る。


 いやー、疲れたね。


「思ってたよりも、長い間やってたなぁ」


 思わず呟いてしまうほどに今日は濃い一日だったし、まさか初日からこんなに長い時間やってしまうなんて、自分でも思わなかった。


 何より、お姉ちゃんがここまで楽しんでるとは思わなかった。少し前までのお姉ちゃんだったらあんまり楽しめなかったんだろうけど、これもあの人のおかげなのかな。ちょっとだけ悔しいけど、仕方ないか。


 あ、お茶がある。飲んでみようかな。えーっと、お湯は……これかな? ケトルみたいな形してるけど、どうなってるんだろう、これ。見た限りだとお湯を沸かせるような機能は付いてないんだけど。


 ん? このアタッチメントは……そっか、魔法か。


 魔法って、思ってた以上に万能なんだ。このアタッチメントに何らかの魔法を付与して、内部の水を温めるって機能があるみたいだし、今気づいたけどこの建物の明かりも全部魔法で賄ってるみたい。電球とかじゃないし。

 よく見てみれば入り口のドア近くにスイッチみたいなのがあるから、たぶんそれが起点になって明かりを灯す魔法の道具――ああ、言い難いな。魔道具でいっか――が作動する仕掛けになってるんだろう。


 しかも、これはもしかすると空気中にあるのだろう魔法を使うための素――マナって言ったっけ。ちなみに魔法は自分のMPを使って発動するけれど、MPそのものは結局のところ空気中のマナを取り込んだものって感じらしいね――を吸収して動力にでもしてるのかもしれないね。ケトルに付いてたアタッチメントみたいなのも見えないし。


 ま、こんなこと考えても意味ないか。この世界についての知識なんて無いし、また今度にしよう。体系が全然違う技術って興味もあるしね。

 とりあえず、このお茶飲んだらログアウトして寝よう。明日寝坊しそうだけどなー。


 ハーブティーなのかな、緑茶とか紅茶とは匂いが全然違うけど。でも、インスタントでこの美味しさって、なんだかへこむ。


「あ、そういえば」


 ふと思い出したけど、あの人もかなりのゲーム好きだったような……。もしかしたら、あの人もこのゲームやってるのかな。


 あの人には、この世界では出来れば会いたくないなぁ。



えー、第7回単語解説コーナー(笑)みたいになりつつある例のコーナーです。今回はあります。


ボイスチャット:頭の中で会話するような機能。NPCとも行うことは可能だが、混乱させる可能性はとても高い。メッセージも似たようなもの。実際に声に出した事も相手に伝えることが出来る。


魔道具:魔法が込められたアタッチメントが取り付けられた便利な道具。魔法が扱えない人でも自由に使うことができるが、アタッチメントに込められたマナが尽きると使えなくなる。なお、大気のマナを取り込んで作動するタイプの魔道具も存在する。


マナ:大気中に存在する、魔法にかかわる元素。MPはこれを体内に取り込み、変換されたエネルギーのようなもので、実際は同じものである。マナを取り込める容量の上限は成長するが、それは人によって異なる。



それでは、今回はここまでです。次話は同じく、早くとも二~三日後になるんじゃないかと思います。


ついでに、シャーリーがトアのどこに何をしたのかはご想像にお任せします。それでは。


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