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Fragment of Memories  作者: 詩空
第一章 リーザリア・エルフェルド
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2-2 試験クエスト追加と夜の森の戦闘


「――おねーちゃん?」


 後ろから聞こえてきたその声に、私の背筋に一筋の悪寒が走った。



 ――あ、流石に今回のはヤバいかもしれない。



 そんな考えが頭を過ぎり、慌てて振り向いて声の発生元を確認してみると、いつの間にか離れた位置にとても良い笑顔をし浮かべているシズクが立っていた。その代わり、目は全くと言っていいほど笑ってはいなかったけれど。


 怒ってる、確実にこれは怒ってる。あれか、シズクの意見を聞かずに勝手に決めちゃったことかな? でも、それ位でシズクが怒る訳ないし……。だけど、それ以外に理由も思いつかない。


「あー……その、ごめんね、シズク。勝手に色々と決めちゃって」

「んーん、それは別に構わないんだけどさ。私を無視するのは、ちょーっとどうかと思うんだ」

「へ?」

「あ、やっぱり気付いてなかったんだ。酷いなー、私も話に混ざってたんだけどなー」


 すると今度は、さっきまでの目の笑っていない笑顔を途端にむくれ顔に変えて、不満さを表に出して抗議してきた。


「何度も話しかけてたのに、全部無視しちゃうんだもん」


 シズクが言っていた事が本当なのか、クリアに確認するように顔を向けると遠慮がちに頷かれたから、きっとその通りなのだろう。


 これは、久しぶりにやってしまった。


 今までも一つの事に集中しすぎると、たまに周りの音がまるで耳に入らなくなることがあったけど、今回は本当に久しぶりにやってしまった。


 どうやってシズクのご機嫌を取ろうか、シズクを説得しないといけないかなとか色々と悩んでいると、その本人から思わぬ助け船が飛んできた。


「――まぁ、さっきのお姉ちゃんは凄く真剣だったもんね、仕方ないよ。それじゃあさっそくギルドに行こうよ、時間はまだあるとはいえ無駄には出来ないし!」

「本当にごめん。そうだね、行こっか。ほら、クリアも」


 思わず、その飛んできたシズクの好意に甘えてしまった。

 いや、改めて考えてみると、これは狼狽(うろた)えてた私を見て()さ晴らしが済んだから切り上げたってところかな。この程度で済んで良かったというべきか、何というか。

 シズクは一度拗ねると長いから、これなら助かった方か。



 ――あれ。もしかしたら、シズクに遊ばれたのかもしれない。


 シズクも私の悪癖は全部知ってるはずだし、いくら最近出てなかったからとは言え覚えてない訳は無いし……考えたところでわかりはしないか。


 でも、まぁ。もしそうだったとしたら、それはそれで仕方ないか。




「こんばんは、ギルドへようこそ。本日はどういったご用件でしょうか。……ってトアさんじゃないですか! もう達成されたんですか?」

「いえ、目的地の手前に着いたばっかりで、クエストはまだ終わってませんよ。今回用があるのはこちらの人です」


 ギルドに到着してすぐにカウンターに向かうと、今受付を担当していた人はリソアさんだった。まだ短い時間しか話してないけど、この人なら信用できるから丁度良かったかな。


「そちらの方は冒険者……ではないようですね。クエストを依頼してきた訳でも無さそうですし。という事は、ギルドに登録をしに来たという所でしょうか」

「はい」

「わかりました。それでは、幾つか記入するものがありますので、こちらへどうぞ」


 そうしてリソアさんはクリアを奥の個室へと案内していき、受付カウンター前には私とシズクの二人が取り残されたけど、シズクはシズクで近くにある掲示板に向かってしまった。


 時間が時間だからかギルド内では数人の職員が書類仕事をしているだけで、ロビーには他のプレイヤーやNPCの人たちの姿は見えない。というよりも隣接してる酒場の方に集まってるんだろうな、ここからでも威勢のいい喧騒が聞こえてくるし。


 隣の喧騒を聞きながら二人を待っていると、どことなく手持ち無沙汰になったのでロビー内を観察してみる事にした。よく考えてみればシズクとキョウの付き添いで軽く見回した以外は、最初に居たあの個室くらいしか詳しく見てなかったし。


 という事で。改めてロビーを眺めてみると、何となく規模の大きな郵便局を連想させるような内装になっていた。大きさは大体教室4~5部屋分だろうか。

 今いる受付カウンターはL字の形になっていて、職員が働いている向こう側は室内の4分の1くらいの広さがある。こちら側のすぐ近くの壁面には幾つかの掲示板が取り付けてあり、それぞれクエストボード、ギルドからのお知らせ、王城からのお知らせ、モンスター活性化による危険地帯のお知らせなどの用途別に分けられている。


 なんというか、凄く地域密着型なんだね、ギルドって。


 ちなみにシズクは、その中のクエストボードを覗いてる様子。


 他にも、入り口付近には待合所のようにソファが設置されていて、その反対側にはおそらく隣の酒場に繋がっているだろう扉も確認できるし、カウンター横には二階に続く階段も見受けられる。カウンター付近にも個室に繋がってるらしき扉も幾つか確認できるし。

 でも一つだけ疑問なのは、外観から予想してた屋内の広さよりも、実際に見た屋内の広さの方が遥かに大きいっていう事。一階に他の個室もあるから尚更に。


 そういえば、キリムさんのお店も外観よりよっぽど広い内装だったっけ。武器に圧倒されてたから、違和感も何も感じる間もなかったや。

 何か特殊な建築方法でもあるのかな。もしくは、何らかの方法を使って空間そのものを拡張してるのか。どっちだろう、個人的には空間そのものを拡張してたらいいなぁって感じだけど。


「お待たせしました~。クリアさんの記入事項は終わりましたので、これから試験クエストを発行したいと思います」


 ひとしきり屋内を眺め終わったところで、クリアを連れてリソアさんがこちらに戻ってきていた。


 あれ? なんだかクリアが疲れ切ったような顔してるけど、どうしたんだろう。大丈夫かな。


「大丈夫ですよ、トア。ちょっと色々と聞かれただけですから」

「そう?」

「はい」


 大丈夫だって言ってるのにあまり心配しすぎても駄目だし、ここはクリアを信じよう。だけど少しは気にしておかないとね、涼しくなってきてた時間とはいえそれなりの時間外でずっと何もせずにいたんだから。


 ――って、そうだ。クリアは夜ご飯食べたのかな。後で聞いてみよう。


「話を戻させてもらいますねー。えっと、クリアさんはトアさんとこれからパーティを組んでいくという事、トアさんがまだ試験クエストを終えられていないとの事から今回は選ばさせていただきました。クリアさんの試験クエストはこちらになります」


 言葉と共にクリアに手渡された紙を覗いてみる。



 ・ギルド試験クエスト

 依頼者:ギルド受付・リソア

 内容:氷結の森外周部に棲む『ボア』のドロップアイテムであるボアの牙を2本集めて来てください。

 目的地を同じにしておきましたので、幾らかの無駄は省けると思います。頑張ってくださいね。



 紙の内容はクエストについてだった。


 目的地が同じなのはきっと、書いてある通りにリソアさんが気を使ってくれたからなんだろう。確かに、これなら面倒も省けるし。


「という事ですので、よろしくお願いします。幸いクリアさんも氷結の森手前のポータルは開いているらしいので、今すぐにでもクエストに行けますよ」

「あれ、そうだったんですか?」

「ええ。幾つか前の仕事のときに付近で用事がありまして、その流れで登録したんです」

「へー、一体何のお仕事だったんです――『はいはい、話はそれまでにしようね。二人とも行くよ』――はーい」


 このまま話を続けたら時間もそうだけど、リソアさんたちの仕事の邪魔になっちゃうだろうし、クリアにご飯食べたかどうかも早く聞きたいし。


「それじゃあ行こっか、お姉ちゃんたちのクエストを終わらせに!」


 え?


「そうですね。もし終えられなかったとしても、今夜の宿代を手に入れれば十分ですし」


 あれ? 確実に話が噛み合ってない気がする、しかも致命的な何かが。

 食い違っている何かを確かめようと頭を巡らせていると、シズクに手を取られて引きずられ始めていた。なんで。


「どうしたの、早く行くんでしょ?」

「いや、そうだけど。――ん?」


 引きずられたままギルドから出て、広場のポータルに向かい始めたところで私はようやく気付いた。


 えっと、これってまさか――


「まさか、今から向かうの……?」

「そうじゃないの? 私たちはそのつもりだったんだけど」


 私はただ邪魔したら悪いから外に出ようって意味で言ったのに、なんでこうなったの?


「って、待って待って! クリアの武器は!?」

「大丈夫です、トア。私は武器が(しょう)に合わないので、これで戦いますから」


 そう言ってクリアは、自らの拳を握りしめて静かに宣言した。いや、拳は拳でも手甲(てっこう)とか……って聞く耳持たないですか、そうですか。



 こんなの嘘だぁー……



                 ・

                 ・

                 ・


 ……回想終了。


 あぁ、うん。本当にどうしてこうなったんだろう。いくら思い返してみても、全く原因がわからない。わからないったらわからない。


 でもこうなったのはもう仕方ないし、前向きに行こう。


 とりあえず、さっきの襲撃でボアの牙の二本目が手に入ったから、残りはグリーンジェルを数匹倒すだけなんだけど……。まったくと言っていいほどグリーンジェルの姿が見えない。

 ボア以外にもミニゴブリンだったり、ウルフ、ビッグバットとかならよく見るんだけど、本当にグリーンジェルだけがどうしても見つからないのはなんでだろう。


 あ、今シズクが装備してる長剣は、最初に倒したボアがドロップしたブロンズソード。最初の方は普通に大剣を使ってたんだけど、あまりにも振り(にく)くて持ち替えたらしい。


「お姉ちゃんのクエストに必要なのはグリーンジェルだったよね?」

「そうだけど、全然出てこないね」


 あまりにもグリーンジェルが出てこないせいで、いい加減に焦れ始めた頃。クリアが口を挿んできた。


「グリーンジェルですか、でしたら探し方が違いますよ。グリーンジェルの活動時間は基本的に日が昇っている頃なので、夜ではこういった大きめの石をひっくり返してみれば……このように、高い確率で見つかります」


 クリアが言うように石をひっくり返した場所を見ると、そこには緑色のドロドロした物体が確かに存在していた。


 なるほど、これは盲点だった。道理でいくら探しても見つからない訳か。

 見つけ方もわかった事だし早速探していこう、テンポよくね。


「ありがとうクリア。クリアのおかげで、思ってたよりも早く終わりそうだよ」

「いえ、この程度なら一般的な知識の範疇ですよ」

「それでも、ね。あぁそうだ、クリアはちゃんと晩御飯は食べたの?」


 さっきは結局、噛み合わなかった会話で色々と流されちゃったせいで聞けなかったしさ。

 残りを探す間に聞いてしまった方が手間も省けるだろうし、何より今聞いとかないとまた流されて聞きそびれそう。


「晩御飯、ですか。そういえば、お昼から何も食べてませんでしたね」

「お昼も食べてなかったんですか!?」

「ええ、まぁ。事務仕事が忙しかったもので、お昼休みが潰れてしまったんです。全て無駄になってしまいましたが、はい……」


 晩御飯は食べてないだろうとは思ってたけど、まさかお昼も食べてなかったなんて――じゃない! あの事を思い出させる気なんて無かったのに、まさかそこから連想するなんて。


 ああ、もうまた泣きそうになってる。何とか話を逸らさないと。


「ね、ねぇクリア、戻ったら何か食べたいものとか無い? あまりにも高いのは無理だけど、そうじゃなければ買ってあげられるから」


 これなら違和感なく逸らせるはず――あ、丁度いい位の潜んでそうな石発見。ここはどうかな。


 む、居ない。次に行こう。


「食べたいもの……。でしたら、この後付き合ってもらえますか?」

「私は良いけどっ、シズクはどう?」


 あぁ、ビッグバットだ。えーっと、この石当ててダメージって入るのかな。たとえ入らなくても、撃ち落とせれば上々か。


 羽をよーく狙ってー――よし、狙い通りに命中。


 撃ち落とせはしたけど、ダメージは入ってないみたいだね。何かスキルが必要なのか、それとも石そのものにダメージ判定が無いのか、それとも石のダメージが小さすぎて入ってないように見えるのか……どれだろうか。

 まぁ今は良いか、そんなの。とりあえず後はシズクに任せよう。


「私も良いよー。で、どこに行くんですか?」

「それは後でのお楽しみという事で、今は秘密です。外れでは無いことは保証しますから、安心してください」


 なるほど、だったら楽しみにさせてもらおう。


 って今度はミニゴブリンの群れか、どうしようかな。昼頃のように圧倒出来れば良いんだろうけど、あの後から幾度か試したけど出来なかったしなぁ。どうやって動いたのか、自分がやった事なのにわからないよ。

 でも一人でやる訳でも無いし、問題は無いか。


「それじゃあクリアおススメのお店は楽しみにしておいて、今はこの群れを倒しちゃおうか」

「そうだね、っと。……あーもう、やっぱりこれだと軽すぎるー!!」

「ブロンズソードは、最初に試しに振ってもらった鉄の剣よりも軽いですし。あの大剣と比べられたら可哀そうです、よっ」

「だよね。せいっ」


 話しながらも倒していけば、残りは五匹。変にばらけてるから、一息に倒すのは厳しいな。


 立ち位置的に外側の三匹は二人に任せるとして、中央の二匹は私がやろう。たぶんアーツを含めば行けるはず。この辺りのはレベルが高いからか、六撃くらい必要だし。


「それじゃあ外側三匹はお願いね、二人とも」

「うん、任せて―」


 よし、まずは手前の方から倒そうか。

 そうして斬りかかる為に飛び出し、一気に懐に飛び込んで一撃。そして、怯んだ隙に続けてアーツを打ち込む。これで一匹。


 次は斬りかかってきたもう一匹の攻撃を避けて、普通に一撃を入れ……ようと思ったけど、首を落としたらどうなるんだろう。試してみようか。

 という事で首に一撃を入れて落とすと、たったの一回の攻撃で倒せた。


 これは良い事がわかったかもしれないと内心で密かに喜んでいたら、後ろから奇声が聞こえてきて慌てて振り向くと、丁度クリアに蹴り飛ばされたミニゴブリンの姿が目に入ってきた。


「ちゃんと倒したか確認せず、物思いに耽るのは感心しませんよ。トア」

「ごめんねクリア。それと、ありがとう」


 どうやら、一番最初に倒したと思ってた一匹が倒しきれていなかったらしい。


 しくじったかぁ。『クロス』の威力からして、普通の一撃とアーツを一回打ち込めば倒せると思ったんだけど。

 でも、今回の失敗は次に生かせばいいんだ。まぁ、同じような事が起きないようにするのが一番最善なんだけどね。


「いえ、反省しているのならいいんです。次からは気を付けてください」

「うん、大丈夫。もう同じ失敗はしないから」

「あ、話は終わった? じゃあ次を探そうよ」

「そうですね。では、行きましょうか」


 じゃあ、失敗を次に生かしつつ、気を取り直してグリーンジェルの捜索を再開しようか。探し方を教えて貰っても、思ってた以上に見つからないけど。


 何でか、私がいくら石をひっくり返しても全然出てこないし。


第6回でしたっけ、の単語解説コーナーはお休みです。


それと今回は報告がありまして、書き溜めていたのが今回で尽きましたので次話からは書き上げ次第の投稿となります。


後ですね、出来る限り短時間で読みやすいように短めに区切って投稿していたんですが、もっと長めにした方が良いんでしょうか。ちょっとよくわからないのですが、どうなのでしょう。


では、今回はここまでです。

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