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■竜之介覚醒?

「う……」


 意識が回復した竜之介が目覚めると、周りは薄暗く風景事態が全く見えていなかった。


――俺は死んだのか? しかし、織田さんには気をつけてなんて言っておいて、自分が落ちるとは、本当に情けないな。


 竜之介がそう諦めかけた時、誰がか自身に呼びかける声が聞こえてきた。


黒「……い」


黒「……おい」


黒「おいっ!! こらっ!!」


赤「そこの貴方、もっと丁寧に話し掛けれないのですか? 礼儀を知らない人ですね……」


黒「なんだお前? なんかその口調を聞くと何かを思い出しそうでやたらムカつくぜ!!」


赤「私も貴方の言い方を聞いてると、何故か物凄く気分が悪くなりますね」


黒「何だと!? こらあっ!!」


赤「ほう、私とやりますか、いいでしょう、相手になりますよ!!」


 竜之介が上を見上げると、黒と赤の光りを放つ人魂が互いに激しくぶつかりあっていた。


「……何だ、あれ?」


 黒い人魂が竜之介の視線に気付くとゆらゆらと近づいてきた。


黒「おお!! お前、やっと気付いたか?」


 竜之介は何が何だか理解できぬまま、その人魂を呆然と見ていた。


黒「どうやら、ここはお前の体の中らしいな。」


「え?何の冗談ですか?」


 竜之介は立ち上がり、すたすた歩き出す。


黒「いやいやいや、待ちな、本当の事だって!!」


 すると今度は赤い人魂が竜之介に話し掛けた。


赤「どうやら、私達は何かの拍子に貴方の中に勝手に入ってしまったようです」


「俺の中に……入った?」


 今起こっている事が全く理解出来ない竜之介であったが、とりあえずその人魂達に挨拶をする事にした。


「俺は風間竜之介っていいます。ところであなた達は一体何者なんですか?」


黒「俺様かっ!? ふははははッ!! 聞いて驚くなよ!! 俺様は……俺様はなああああっ!!」


赤「これはこれは失礼、挨拶が遅れました、私は……」


「ふむふむ。」


 竜之介はその次の言葉を待つ。


黒「俺様は……ありゃ? 誰だっけ?」


赤「これは一体どうした事でしょう? 何故か思い出せません」


 竜之介はその意味不明な回答にがくっと頭を垂れた。


黒「……分からん。俺様は誰なんだ?」


赤「……悔しながら、私もです」


「えっ?」


黒「ただ俺様は……誰かのためにどこぞの敵と戦っていたような、いなかったような」


「もしかして凄い人とか?」


黒「さぁ、分からん。が、いくさは三度の飯より好きだった気がする」


黒「それ以上に女も大好きだけどな。わははははは!!」


赤「本当に品がない人の様ですね。だが、私も同じく一人の兵だった気がします……」


「そうですか。」


黒「で、竜之介とやら、お前はどうしてこんな事になったんだ?」


 謎の人物と体の中で会話し続けるという不思議なコミュニケーションをとりながら、竜之介は今に至るまでを説明した。


黒「あ? ……棋将武隊の入隊試験に落っこちただと?かーっ、情けないヤツだなお前ッ!!」


 竜之介は黒い人魂に一喝された。


黒「む? 棋将武隊? 何処かで聞き覚えがあるような、無いような?」


赤「私も同じような気持ちです……もどかしいな」


 暫く間が空いてから、黒い人魂が大きい声で叫んだ。


黒「よし!! 俺様がもう一度その入隊試験とやらを受けてきてやろうじゃねえかっ!!」


「いやいや、俺はもう落ちてるから!!」


黒「ああ? 実力を見せれば問題なかろうが?」


「いや、本当結構ですから、俺もう起きますっ!!」


 そう言った次の瞬間、竜之介より先に黒い人魂が目の前から姿を消した。


――あれっ? あの黒い人魂はどこに行った?。


 竜之介がそう思った瞬間、突然黒い人魂の声が頭上から響いた。


黒「おお、これはっ!!」


 竜之介が自分の手を動かしながら叫ぶ。


――ちょっと待て、これって!!。


黒「はははは!! どうやら俺とお前、入れ替わったみたいだな!!」


――え? 嘘ッ!!。


赤「人の体を乗っ取るとはなて卑劣な奴だ。いますぐ竜之介殿に戻しなさいッ!!」


黒「はん!! 嫌なこった!! さぁ、さっさと戻って試験に合格してるぜッ!! お前は安心して泥舟に乗った気持ちでいろ!!」


――それって沈むんじゃあ……。


黒「冗談だよ!! わはははははッ!!!」


赤「竜之介殿、残念ですが、私達にはどうする事も出来ないみたいですね」


 元気よく立ち上がると竜之介は石段を物凄い勢いで上がっていく。試験会場へと逆戻りをしている途中で、さっきの音々とばったり出くわした。


「あれ?君は確か……? どうしたなり? 忘れ物でもしたなりか?」


――いや、違うんです! 今の竜之介は僕じゃなくて、ああ!! ややこしい!!。


「いや、そうじゃねえよ、さっきの試験、ありゃあ無しだ。もう一度やらせてもらうぜッ!!」


 先程ここに居たもの静かな竜之介は一変し、ぶっきらぼうに話す。


「え? あ? なし夫君は何を言ってるなりか?」


 音々がキョトンとした顔で言った時、竜之介は音々をぐっと抱き寄せていた。


「……おめぇは俺の傍で何が起こるかよーく見ときゃいいんだよ!!」


 竜之介の自信に満ち溢れた表情を見た音々は胸の奥が熱くなった。


「あ、はっ、はいっ!! 分かったなり!!」


 音々は耳が一気にかーっと真っ赤になった後、くたっとその場に座りこんでしまった。


――それ、俺じゃないんですけどね!!。


 入隊試験に落ちた竜之介が再び戻って来たのを見た他の受験者が一斉に罵声を浴びせ始めた。


「おい、あれ見ろよ!! さっき失格したヤツじゃねーか!!」

  

「何ノコノコ戻ってきてるんだよ!!」


「お前、用済みなんだよ!! さっさと帰れ!!」


 その罵声に対して、竜之介は怪訝そうな顔をしながら、力強く足を前に踏み出した。


「お前ら雑魚がガタガタ言ってんじゃねええよ!!」


 その一喝で、周りがしんと静まり返った。そして、二次試験を受けようとしている者の襟足をむんずと掴む。


「おい、お前、邪魔だ!! さっさと、そこをどけろッ!!」


「うわっ!! お前何を!!」


 受験者を竜之介は軽々と片手で投げ飛ばした。


「なっ、なんなんだあいつ? 顔付きがさっきと全然違うぞ?」


 この騒動に瑠理が気付き、慌てて音々の元に駆け寄ってきた。


「音々さん、どうしたんですか? しっかりしてください!!」


 瑠理が話し掛けると、音々はぽーっとした表情でぽつりと言う。


「いや、あの子、さっきと全然違うなり……カッコ良すぎなりよ」


 この一騒動で、他の試験管も集まり始め、壁際では姫野が腕を組みながら竜之介を見ていた。普段は部屋で大人しくしている桜子でさえ、二階の窓から様子を伺っている。


――うわわーっ、みんなが見ている!! どうしよう!!。


「俺に全部任せときなっ!!」


 竜之介は定位置に着くと、その地面の感触を確かめながら不敵に笑った後、戦具に手をやり竜之介が持っている鍔を取り出す。


「ん?」


 そこで竜之介はもうひとつの黒い鍔に気づいた。


「この鍔、なんだかとても懐かしい気がする。こりゃあ確か鍔って奴だろ?俺様はこっちを使わせて貰うぜ?」


――あ、この人、鍔が分かるのか!!。


赤「竜之介殿、私もこれに見覚えがあります」


 ニ人共この鍔を知っているって事は、本当に棋将武隊に居た人だったのかも!! 竜之介はそう確信した。


「で、この水晶が……ああ、召還戦具か。何だか色々思い出してきたぜえっ!!」


――この様子だと、もうすぐ名前も思い出すんじゃないのかな?。 


「おい竜之介、悪いが俺様は今、自分の精霊の名前を思い出せれねえ!!」


「お前は精霊を呼べたんだろ? 名前はなんていうんだ?」


「あ……ハルって言います!!」


「そうか、分かった!! ハルとやらさっさと出て来いッ!!」


 竜之介の声が試験会場に大きく響く。その瞬間、水晶から先程より物凄い旋風と光を放ちながらハルが出現した。


*なんじゃ!!もう、用もないというのに何故また召還なんか……*


 現れたハルを見て誰もが唖然とする。何よりもハルが自分を見て一番驚いた。


*あ、ああ……これ、これじゃ!! これが本当の私なのじゃっ!!*


 竜之介の傍らには先程の少女では無く、立派な女として成長したハルが現れたからだ。


 ハルは、可愛いか、綺麗かで天秤に掛ければ、綺麗の方に傾く美貌で、前髪は風の渦を思わす様にくるくるとウェーブ掛かっており、肩を少し越えた艶のある黒髪が気品さを一層際立たせていた。


 更にハル着ている巫女服は、その美しい容姿にとても良く似合っていた。


 ハルは最初、自分の姿を見て驚いていたが、すぐに何かを察し訝しそうに竜之介の方を見た。


*……お主、先程の竜之介じゃなかろう? 何者だ?*


 一目で別人である事をハルは見抜く。


「ハル、俺はここだ!! その人に俺の体を乗っ取られてしまったんだ!!」


 事情を竜之介が説明すると、黒い人魂の人物が不満そうな声を頭上から漏らす。


「ちぇっ!! 乗っ取りとか、穏やかじゃねえなあ」


赤「ま、実際その通りなのですけどね」


「お前らなぁ、俺の頭の中でがたがた喚くなよ? 煩くてかなわねえや」


 竜之介が頭をぼりぼり掻きながらぼやいた。


*ふむ……なんだか面白い事になっているのう。そういう事か*


 ハルは事の自体をすぐに理解した。


*お主はわしをさぞ、満足させてくれるのじゃろうな?*


 悪戯っぽくハルは笑った。


「野暮な事を聞くなよ……こいつでは本来の力を引き出す事は出来まい。だが、この俺様は別だぜ?」


*ほぅ、大した自信だの。よし、その力をわしに見せてみい!!*


「そうこなくっちゃ!!」


「んじゃ、そろそろいくぜええっ!! 抜刀……獄龍っ!!」


 竜之介の掛け声で獄龍の鍔の根元から怪しい光を放ちながら、黒剣の姿が徐々に現れ始めた。


「あ、あの剣……!!」


「おぃ、あれって、まさか!!」


「う、嘘だろっ!!」


 周りがどよめき始めた。


「ごっ、獄龍……長信さんの鍔じゃないか!!」


――長信? あれ? 俺はこの名をどこかで……。


「な、なんでアイツが持ってるんだ!?」


 獄龍の出現を桜子が見た瞬間、桜子の顔が急に強張り思わずその身をテラスから乗り出した。


「お、お嬢様ッ、危ないっ!!」


 慌てて女中が桜子の体を支える。


「……な、長信っ!!」


 竜之介に向け桜子は二階から苦痛の表情で手を伸ばした。


「けっ、こんなもんで驚いてんじゃあねえよ雑魚共。ハル、リンクだっけな? やるぜ?」


*あい、分かった!!*


 ハルが獄龍にそっと触れ融合すると、一気に5つの刻印が剣に表れた。その異常な光景を見た観衆が一気にどよめいた。


「みっ、見ろよ!! あいつの剣!!」


「刻印が……5つもあるぞッ!!」


「あ、あいつLV5だ……化け物かああッ!?」


 それを見ていた音々が声を大にして叫ぶ。


「嘘!! あっ、あの子、凄いなりッ!!」


「やっ、やっと私の王子様を見つけたなりよっ!!」


 両手を組み合わせ、音々は驚喜した。


「おもしれえ、何故かわからんが、俺の闇がびんびんに増幅してきやがる。竜之介とか言ったか、不思議な奴だ!! 気に入ったぜ!!」


 獄龍の周りに黒い渦が取り巻く。


「さーて、お立会いッ!! お前らぁ、避けていないと大怪我するぜぇええ!!」


 体を捻りながら竜之介は獄龍を大きく振り上げた。


「獄龍ぅう……陣破ごくりゅうじんぱあああっ!!」


「どぉおおおりゃあああああああっ!!」


 試念柱に向けて、力任せに獄龍を一気に振り下ろす。


 黒と白の渦は大きなうねりを見せながら試念柱に激突し、壁に大きな風穴を空け、試念柱は跡形もなく消えて無くなってしまった。


 その瞬間、周りの空気が一変する。


「ふうっ、ちぃとばかりやり過ぎちまったか?」


 獄龍を肩に担ぎ、竜之介はにかっと笑った。


*まぁまぁかの。わしも半分しか力をだしておらんからな。良い余興じゃった。また面白そうな所で、わしを呼ぶがいい*


 ハルは満足そうな顔をしながら水晶に戻っていくのであった。


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