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交錯する意志
対峙する時間が、永遠のようにも、一瞬のようにも感じられた。
目の前の「影」は、俺の問いかけに対してただ不敵な笑みを浮かべるだけだった。言葉を交わすつもりはないらしい。
その時、そいつの足元から黒い霧のようなものが立ち上り、路地裏の空間全体を包み込み始めた。
「くっ……!」
空気が重くなる。呼吸が苦しい。だが、俺の『本能』は、この絶望的な状況でも冷徹に作動していた。相手の右肩のわずかな傾き、重心の移動。次にそいつがどう動くかが、線画のように脳内に描き出される。
影が、一歩を踏み出した。
普通の人間の目には、まるで瞬間移動したかのように映るだろう。しかし、完全に研ぎ澄まされた俺の視界には、その軌跡がはっきりと見えていた。
俺は全力で体を横に投げ出した。直後、さっきまで俺がいた場所のコンクリートの壁が、音を立てて激しく削り取られる。
「避けたか。やはり、面白い。」
影の言葉に、俺は床に手をつきながら冷や汗を流した。本能がなければ、今ので確実に終わっていた。




