3/5
裏路地の支配者
声に出した言葉が、冷え切ったコンクリートの壁に反射して消える。
振り返った俺の視界に入ってきたのは、やはり、あの交差点で見つめてきた影だった。薄暗い路地裏の光の中で、そいつの姿がようやくはっきりと形を成していく。
人間と同じ形をしている。だが、何かが決定的に違っていた。
そいつの肌は異様に白く、何よりも、その瞳は夜の街の明かりを吸い込むように、怪しく濁った光を放っている。
俺の『本能』が、かつてないほどの最大警戒のサインを脳内に打ち鳴らした。体の細胞が一つ残らず「戦え、さもなくば逃げろ」と叫んでいる。
「君が、今回の『適合者』か。」
影が、低く、くぐもった声で呟いた。その言葉の意味は分からない。ただ、そいつが確実に俺を狙ってここに来たことだけは理解できた。
逃げ道は塞がれている。背後は行き止まりの壁だ。
「……何の用だ。」
俺は拳を握りしめ、一歩前に踏み出した。恐怖を抑え込むように、自分の本能の力を信じて、その化け物と真っ向から対峙する。




