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【資本主義無双】異世界が太平洋に出現したが、狂った転生商社マンとマッハ1のウサギ村長が地球の超大国を丸ごと買い叩く  作者: 月神世一


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第三章 魂の買収と魔王の遊戯編

覇権の後の静寂と、老狸の影

ポポロ村は、空前のバブルに沸いていた。

「いらっしゃいませーっ! ポポロ名物、月見大根の煮込みおでんだよー!」

キャルルの元気な声が、活気あふれる広場に響き渡る。

かつてはルナミスとレオンハートの緩衝地帯にすぎなかった小さな村は、今や世界で唯一の『絶対中立・独立経済特区』として、大陸中から商人と富が集まるメガロポリスの様相を呈し始めていた。

大国たちは軍事力を失い、国家予算の首根っこを政宗のファンドに握られている。

手出しはできない。ご機嫌を取るために、こぞってポポロ村へ投資し、技術や物資を献上してくるのだ。

「……ふん。平和なこった」

執務室の窓際。

政宗は、赤マルを吹かしながら、眼下の賑わいを見下ろしていた。

魔導端末の画面には、世界中の金融ネットワークから毎秒吸い上げられる、天文学的な「手数料マージン」の数字が踊っている。

「完璧だ。軍隊(暴力)はガオガオンの雷が縛り、経済(国庫)は俺の算盤が縛る。……もはや、この村を脅かすリスクは地球上にも異世界にも存在しねえ」

政宗のロジックは、完璧だった。

国家や組織という「システム」で動く限り、誰も彼の資本主義ルールからは逃れられない。

しかし。

彼が信奉するその【誤った信念】を、暗い愉悦と共に嘲笑う男がいた。

地球・日本。霞が関の地下深く。

「……先生。各国の軍は完全に沈黙しています。我が国の経済も、ポポロ村のファンドに生殺与奪の権を握られたままです」

内調の狗飼が、胃薬を水で流し込みながら報告する。

「ハッハッハ! 良い眺めじゃのう、狗飼! 世界の超大国が、たった一人の日本の若造に首輪をつけられ、キャンキャンと尻尾を振っておるわ!」

与党幹事長・若林幸隆は、最高級の『ピース』を燻らせながら、腹を抱えて笑っていた。

「……先生。笑い事ではありません。このままでは——」

「焦るな、狗飼。……力武政宗の作った城は、確かに『システム』としては完璧じゃ」

若林の目が、ギャンブラーのそれに変わる。

盤上の理屈ルールを全て理解した上で、盤面そのものをひっくり返す、老狸の眼光。

「軍事力(国家の暴力)を使えば、竜に焼かれる。経済で挑めば、あの男の算盤に絡め取られる」

若林は、チェス盤の上で『キング』の駒を指で弾き飛ばした。

「ならば、国家に属さない『狂人』を使えばいいだけの話じゃ」

狗飼が息を呑む。

「狂人……まさか、テロリストですか!?」

「国益も、金も、命すら惜しまない連中じゃよ。……中東と異世界の裏社会を繋いで、すでに『無国籍の暗殺教団』を村の周辺に放った」

若林の口元が、三日月の形に歪む。

「正規軍の攻撃には竜の雷が落ちるが、狂信者による『個人的な通り魔』や『テロ』なら、竜の法の網の目をすり抜けられる。……さあ、見せてみろ力武政宗。貴様のドス黒い算盤は、金も理屈も通じない『純粋な悪意』を前に、どう弾き直すんじゃ?」

その日の深夜。

ポポロ村、境界線の監視塔。

「ふぁぁ……平和だなぁ。今日も異常なーし」

元自衛官の警備隊員が、欠伸をしながら魔導ライフルを肩に担ぎ直した。

その時だった。

スッ……。

音もなく、隊員の背後の『影』が不自然に盛り上がった。

気配はゼロ。魔力センサーにも、熱源探知にも一切の反応がない。

「……ん? なんか今、寒気が——」

隊員が振り返ろうとした瞬間。

暗闇の中から、ぬらりと伸びた『黒い刃』が、彼の首筋を音もなく切り裂こうとした。

ギィィィンッ!!!!

火花が散った。

黒い刃を間一髪で弾き飛ばしたのは、凄まじい速度で投擲された一枚の『名刺』だった。

「——何奴」

監視塔の階段から、完璧にアイロンがけされた燕尾服の男——リバロンが、冷たい人狼の目を光らせて現れた。

彼の手には、ティーカップが握られている。その水面が、微かに波立っていた。

「……チッ」

影から現れた襲撃者は、舌打ちをすると、一瞬にして再び暗闇へと溶け込み、森の奥へと姿を消した。

「……リ、リバロンさん! 今のは……!?」

へたり込む隊員に、リバロンは険しい表情で夜の森を見つめた。

「……ルナミスの正規軍でも、レオンハートの獣人でもありません。軍の規律ルールを持たない、純粋な『殺意』だけの存在」

リバロンは、懐から通信機を取り出し、深夜の執務室に繋いだ。

「力武様、おやすみのところ申し訳ありません」

『……なんだ執事。こんな夜更けに』

「村に『ネズミ』が入り込みました。……それも、金や交渉が一切通じない、最も厄介な種類のネズミです」

資本と法によって構築された完璧な平和システム

その強固な城壁の足元から、論理の通じない『見えない毒』が、静かにポポロ村を侵食し始めていた。

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