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【資本主義無双】異世界が太平洋に出現したが、狂った転生商社マンとマッハ1のウサギ村長が地球の超大国を丸ごと買い叩く  作者: 月神世一


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EP 14

命令違反(『失敗』からの脱却)

『——坂上1尉! 聞こえているのか! すぐに攻撃を再開しろ!』

ヘルメットのインカムから響く内調・狗飼の怒声が、信長の鼓膜を不快に叩く。

対象キャルルの治癒能力、そしてあの獣人リバロンの戦闘力は、我が国の安全保障に対する重大な脅威だ! これより空爆の座標を送る。貴官らはレーザー誘導を行え! 村の連中ごと、一帯を焼け野原にするんだ!』

それは、あまりにも冷酷で『合理的』な判断だった。

未知の脅威であり、他国(アメリカや中国)に奪われる前に、自国の圧倒的な火力で消し飛ばす。

東京の安全な地下室にいる官僚たちにとって、それは地図上のシミを消すだけの簡単な作業だ。

「小隊長……」

副官の隊員が、血の気の引いた顔で信長を見た。

彼らも通信の内容を聞いている。空爆が始まれば、この村の老人や子供たちも、先ほど自分たちを庇おうとした自警団の若者たちも、全員が炭の塊になる。

『おい、坂上! 返事をしろ! これは官邸からの絶対命令だ! 貴官の父親(真一司令官)も、制圧の許可を出しているんだぞ!』

狗飼の切り札。

父・真一の威光が、信長に重くのしかかる。

(……親父も、これを良しとするのか?)

信長は、泥だらけの拳を強く握りしめた。

自衛官としての絶対の掟。シビリアンコントロール(文民統制)。

政府の命令に背くことは、反逆罪であり、今までの人生のすべてを捨てることを意味する。

だが、信長は前を向いた。

彼の視線の先では、激しい消耗で膝をつき、口から血を流しながらも、倒れた傭兵に治癒の光を注ぎ続けるキャルルがいた。

「もう……誰も死んじゃ、だーめ……」

彼女は、自分が空爆の目標にされていることなど露知らず、ただひたすらに命を紡いでいる。

(あれが、脅威だと?)

信長の中で、何かが音を立てて弾けた。

彼のバイブル『ガリア戦記』の一節が、脳裏を閃光のように駆け抜ける。

『ローマの元老院は何も知らない。前線の泥と血を知る者だけが、歴史の真実を作るのだ』

(親父。あんたが地図マクロを見てチェスを打つなら、俺はミクロを這いずり回る駒として、俺の真実を貫かせてもらうぜ)

信長は、インカムのマイクに手を当てた。

「……こちら坂上1尉。特命分析官殿に申し上げます」

『おお、やっと返事をしたか。座標データを――』

「あんたの目は、安全な地下室のタバコの煙で濁りきってる」

『……は?』

狗飼の声が、素っ頓狂に裏返った。

「馬鹿たれ(ここは戦場)。パソコンの画面モニターじゃねえ。あの女も、獣人も、そして村の連中も……誰一人として『略奪』なんてしちゃいねえ。あいつらは、自分の居場所を守るために必死に戦ってるだけだ」

『き、貴様! 何を言っているか分かっているのか! これは国家の――』

「国家が間違えるなら、現場が正す。……それが、俺の『武士道』だ」

信長は、ヘルメットから通信用のインカムユニットを強引に引き剥がした。

『待て! 坂上! 貴様、命令違反で軍法会議――』

ガツンッ!!

信長は、ユニットを地面に叩きつけ、その上から愛用のマチェット(山刀)の柄で全力で粉砕した。

バキィッと電子基板が砕け散り、狗飼のヒステリックな声が完全に途絶える。

「……」

沈黙するレンジャー部隊。

上官の明確な『反逆』を前に、隊員たちは息を呑んでいた。

信長はゆっくりと立ち上がり、部下たちを振り返った。

その目は、かつてなく澄み切っていた。

「聞いたな、お前ら。俺はたった今、官邸の命令を蹴り飛ばした。俺のキャリアはこれで終わりだ」

信長は、マチェットの刃にこびりついた泥を拭いながら、獰猛な笑みを浮かべる。

「だが、胸を張って言える。俺たちは今、正しい側にいる。民間人を焼き払うシステム(機械)じゃなく、人間としてな」

信長はアサルトライフルを天に向けた。

「これより、本小隊は日本政府の指揮下を離脱する! 我々の新たな任務は……あのバカみたいに優しいウサギと、この村を守り抜くことだ!」

その宣言に、一瞬の静寂があった。

しかし次の瞬間。

「……了解アイ・サーッ!!」

副官が、誰よりも早く敬礼し、叫んだ。

それに続くように、レンジャー隊員全員が次々とライフルを構え直し、力強い雄叫びを上げた。

彼らもまた、命令という名の鎖から解き放たれ、本来の『自衛官としての誇り』を取り戻したのだ。

日本という国家の『合理的な失敗』は、今、現場の武士たちによって完全に断ち切られた。

「よし! 野郎ども、フォーメーション・デルタ! あのイカれた執事の背中を援護しろ!」

信長が前線へ駆け出す。

リバロンがネクタイ剣を振るうその隣へ、陸上自衛隊の精鋭たちが肩を並べた。

「……おや。日本軍の皆様は、自国の命令に背くのですか?」

死蟲機を斬り捨てたリバロンが、横目で信長を見て微笑んだ。

「日本の侍は、主君が間違えた時は腹を切ってでも諫めるんだよ。……背中はお留守だぜ、執事殿」

「それは頼もしい。では、少々暴れさせていただきましょう」

異世界の完璧な執事と、地球の陸戦の申し子。

近代兵器と魔法武術が、ポポロ村を守るために完全に融合した瞬間だった。

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