17話 依頼
ハナとタルフが鉱石での実験を始めた頃、ケイシ家では主人のソウ=ケイシが頭を抱えていたのだ。
「お父さん、どうしたの?
何か仕事で大変な事があったの?」
娘のミクが心配そうに、ソウの顔を覗き込んだのだ。
「ああ、すまない。
ちょっと心配事があってね。
実は、この国の王のお妃様が病に倒れてね。
王室付きの薬師達でも治す事が出来ないらしいんだ。
だから、街の薬師にもおふれが出てね。
どうにか治す策が無いかと考えているんだよ。」
「王室付きの薬師達でも無理なら、難しいんじゃないの?」
話を聞いていた、マーサがお茶を入れながら話に入ってきたのだ。
「そうなんだが・・・なんとかならないだろうかと思ってね。」
「あの・・・お妃様の症状を聞かせてもらっても良いですか?
私にも何かお手伝いできる事があればと・・・」
マーサのお茶の手伝いをしていたハナも気になったようで、ソウに話しかけたのだ。
「ああ、ハナの世界ではもしかしたらわかることかもしれないね。」
ソウはわかっている限りのお妃様の病状を話したのだ。
お妃様は少し前までは、とてもお元気で特に病気がちではなかった。
しかし、二週間ほど前から食欲が落ち、めまいやふらつきで起き上がることも困難になったらしいのだ。
王室付きの薬師達に見てもらったのだが、治す事や原因すらわからない状況という。
その為、薬師の資格を持つ者であれば、城でお妃様を見てほしいと、王様からの特別な依頼があったのだった。
「そう言うわけで、正直、実際にお妃様を見ないと何もわからないわけだよ。」
「確かにそうですね。
お話だけでは、よくわかりませんよね。
では、城に行かれてみては?
王様のご希望でもあるのですから。」
ハナがそう言うと、ソウは困ったような顔をして話を続けたのだ、
「そこなんだよ。
病気の人がいれば、何処でもすぐに駆けつけてあげたい気持ちは同じなんだが・・・王妃様と言うのがね。
実は、王様にもお会いするかもしれないと思うと、緊張して何も出来ない気がするのだよ。
ただの街の薬師の私なんかが、出しゃばって行く場所では無いのではとね。
この国には優秀な薬師が沢山いるだろうし・・・
王妃様の事はとても心配なのに、そんな事を考えてしまうんだよ。」
「普段のソウ様でいらっしゃれば良いのですよ。
病気の方には、上も下もないのですから。
それに、王室付きの薬師より、色々な患者を見ているソウ様の方が、何か気づく事があるかもしれませんよ。
私も、蔵に病気についての書物がありますので、色々調べてみますから。」
マーサはハナを見て頷くと、呆れた顔でソウを見て話したのだ。
「ハナ、助手としてこの人と一緒に行ってあげて。
もう、本当に気が弱いんだから。
お妃様の病を治す事が出来たら、すごい出世をするかもしれないでしょう?
王室付きの薬師でもわからなかったのだから、ダメで元々でしょう?」
「でも・・・私が行ってもよろしいのですか?」
「少し変装はしてもらうけど、一緒に行くのは問題ないはずよ。
ハナ、頼むわ!」
マーサはそう言って、ハナ肩を叩いたのだ。
「はは、ハナが来てくれるなら、心強いよ。
頼んだよ。」
ソウもそう言うと、少しだけほっとした顔に見えたのだ。
ハナはすぐに蔵に向かうと、ウトウトと昼寝中のタルフを叩き起こしたのだ。
「タルフ、大変ですよ。
起きてください!」
「ハナかい?
ちょうど気持ちよく寝てたのに。
いったい、何なんだい?」
猫の姿のタルフは大きな欠伸をすると、前足を伸ばしたのだ。
ハナはそんなタルフを素早く抱き抱えて、椅子に座らせたのだ。
「相談があります。」
ハナはタルフの目の前に座ると、そう言ってニコリとしたのだった。




