第五十五話・武器完成
クラフトに武器の作成を依頼してから二週間が経過した。
その間にも様々な事があった事を思い返す。
途中でクラフトと大太刀の事について話し合いながら
武器の調整作業に行ったりもした。
俺は調整の無い空いた時間は魔法学院の図書館で
更に冷穴転移や地脈について調べた。
覚えた剣技や魔法の方も自主的な反復練習は欠かしていない。
基礎的な練習は体にはキツイけれど打ち込んでいる時は
募る故郷への郷愁や現状への不安は忘れられる。
努力で身につけた強さや力は火に掛けた湯のようなもので
熱するのを止めれば冷めていく。
サボっている時間が長ければ長いほど……
手から零れ落ちる砂のように体は鈍り知識も技も薄れていく。
努力した結果が無情に時に晒されて弱まる事が時折ひどく切なくも思えるが
変わらないものなんか無い、物事の道理、自然の道行きだ。
だが空しい努力であろうとも
今時の流れと怠惰な気持ちに押し負けて、歩みを止める事は出来ない。
その間もヴァイスは必要な道具を買い集めたり
中冷孔に関する情報収集をする。
ミルクはミルクで教会や聖堂に赴いたり
自らの詩歌魔法に磨きを掛ける。
補助魔法のほうも実戦でいけそうという言葉を聞けたのが頼もしい。
彼女のスペルクロスを仕立て直して更に強化したとも聞いた。
三人で集まっているときは訓練や王都内で行える魔法や戦いの練習。
泊まっている宿でヴァイスが調べてきた怪物の情報を元に
連携や戦術の再確認と作戦会議を行ったりもした。
そんな事をしていてあっという間に時間が過ぎ去っていった。
そして今日は終に武器の受け取りの日だ。
俺の武器の受け取りにヴァイスとミルクの二人も付き添ってくれた。
クラフト武具店の中ではクラフトさんが満足げで得意げな表情で
俺達を出迎えてくれた。
「待たせたな坊主、お待ちかねの代物が出来たぜ」
クラフトが自信満々で覆い布を取り払った時
白銀の輝きが俺の眼に飛び込んできた。
「おおお……これだよ、俺が求めてたのは……」
「ほう……」
「これが雪平の剣?変わった形ね」
ほぼ俺の注文通りだ……
無機質な銀灰色の金属甲殻は加工され、迫力のある威容へと生まれ変わった。
柄込みで俺の身長の半分以上を軽く超える。
刃紋はスマートな直刃。ちゃんと血溝も彫られている。
刃は肉厚で刃の下部の幅は広い。
普通の日本刀の幅は二センチ位だがこれは倍はある。
大剣の威圧感が半端じゃない。
これならばどんな怪物でも叩き斬れそうだ……
「鞘もかっけえなあ……」
「形が特徴的だったから刀身に合わせたり
抜刀のための開閉機構を付けるのに苦労したぜ」
装飾はシンプルだが飾らない渋い良さがある。
鞘の方は左肩から右腰に大太刀を背負う形となっている。
「ちょっと此処で構えさせて貰ってもいいかな?」
「ああ、そいつは坊主の剣だ」
持って構えてみると驚くほどに軽く感じ、非常に馴染む。
実際に重量が減じているわけではない。
俺が使いやすい用に設計されている。
そして戦闘態勢に入った一番負担が軽くなるよう
バランスが調整されているのだ。
大太刀で重量はあることが分かる。
身長や体重、手の大きさが違う他人が持てば
多分合わないから重く感じる事だろう。
「これすっごく良い感じだよ。
完璧なオーダーメイドってここまで違うんだなあ。
滅茶苦茶使いやすそうで最高だぜ!!」
「へへ、そうだろそうだろ。
いやー、坊主が細かく注文するから結構苦労したぜ。
だけどこっちも張り合いのある仕事だった。
研ぎや修理の時は遠慮なく此処に持ち込んでくれよ。
また坊主の知ってる鬼人族っぽい剣の製法やら
なんやらについて詳しく聞きてえしな」
「もちろん、俺でよければ……」
クラフトさんとそう言う事を話して居た時にミルクが反応した。
「雪平、記憶がもどったの?」
こちらを訝しげに眺めるミルクにそう突っ込まれた。
「鬼人族っぽい剣がどうこうとか言ってたけど」
しまった、そういえば記憶喪失と言う事にしているんだった。
「え、いや、その……
剣の事については覚えてたんだ……
向こうでも剣を振ってた事はよく覚えてる」
「ふーん……」
大分怪しんでいたがミルクはそれ以上追求はしてこなかった。
如何にか納得してくれたようだ……
うう、心臓によくねえなあ。
このままだといつかボロが出そうで怖い……




