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第四十九話・大冷孔の怪物の伝承

帰還の方法を探るためさらに積まれた本を読んでいく。

ガイアの極光、自由転移に冷孔転移。

ヒントになりそうなものはいくつか有ったが

まだどうにも纏まりが付かない。

「ふむふむ――基本的に転移に必要な魔力量は質量と距離に比例する。

例外として太い地脈の出力と空間の安定が強固の場合ではその限りではない……」

ガイアとパラダイムの間の距離はどれ位有るか分からないが……

本に書かれている冷孔の大きさと毎時平均の魔力量や

転移に必要な基本魔力量の式や数字を

頬をつねって眠気を叩き出しながら見る。

「やっぱりうすうす予感してたけど中冷孔程度の魔力だと

ガイアまで辿り着けそうにないな……」

ため息を付きながら俺は本を山に戻した。

本の内容によれば中冷孔、小冷孔からだと

パラダイムのどこに転移するにしても必ず中継を挟む必要がある。

大冷孔のある神都、王都、帝都からだと十分な魔力の出力があるため

理論的には地脈の繋がっている場所なら一飛びで目的地までに行けるらしい。

転移距離限界を記した箇所にそう書かれている。

「魔力切れで転移失敗は避けないとな」

しかし、現実問題として開放済み大冷孔の魔力を全て転移に使う事は出来ない。

アカウントは王族とかの物だろうし現在大都市になっている。

怪物避けの結界、土壌の改良、生活に必要な魔力などなど。

生活と安全を保障するため沢山の人が既に大冷孔の魔力に頼っている。

ガイアに行くためには手の付いていない新たな大冷孔を開ける必要がありそうだ。

「魔力は大冷孔を開ければそれでいいとして問題は術だな。

ガイアの極光が恐らく地球行きの地脈だと仮に考えてみる……

自然発生して地脈の安定した奴に都合良く乗れれば良いんだけど

それを待っていたら何百年掛かるかわかんねえな……」

なんとか極光を人為的に発生させられる方法は無いものか……

多分、無いだろうから……

「大冷孔を開いたら自分でトライアル&エラーしてみないと駄目かもなこりゃ」

無論、もっと転移術関連の知識が要るが……

「ん……?」

スフレが選んでいった地脈、冷穴転移関連書物の中に

一冊だけ関連の無さそうなタイトルの本が有った。

タイトルは「大冷孔の怪物」

「スフレが間違って置いて行ったのかな?」

ページを捲っていくとこっちの方は冷孔転移や地脈とは余り関わりが無い。

そのタイトルどおり内容は大冷孔に巣食っていた怪物のヌシの記述についてが多い。

「勉強ばかりで疲れたし息抜きにこっちも読んで見るか。

大冷孔の怪物は何れ戦う事になりそうだし」

初代教皇コールドロン、ロンド・クルーゼ建国王、帝王ジャガードの

偉業については数多くの歴史書、物語、歌曲や舞台に記されており

有名な説話なので本書では割愛するとの前置きから始まっている。

物理攻撃の全く効かない上酸の体液を持ち雲の魔法を行使して

人間族に多大な被害を齎した最悪のスライムの王ソラリス。

羽ばたきの煽りと強力な風の魔法は容易く柔らかい鳥人の翼を圧し折り

何千もの鳥人族を墜死させてきた巨大な魔鳥ハルノイン=タウゼント。

その爪牙は魔法の掛かった鎧を容易く引き裂き

俊敏な動きと大地を抉り飛ばす強力な土の魔法で

ジャングルの恐怖として長らく獣人族に恐れられた合成魔獣ドラン・ビター。

それらの大冷孔の怪物の脅威と使用魔法などについて詳しく書かれている。

また、それらの素材から作られた武具は王家や帝族、教会の秘宝とされ

残った素材から作られた物も名の有る名家の家宝となっているらしい。

「うわぁ……どいつもこいつもしんどそうだ……」

さらにページを捲り進めていくと大冷孔を開いたパーティーメンバーの記述に移る。

大抵のパーティメンバーは大貴族の仲間入りや教会の要職についたらしい。

そして鳥人族の聖者、人間族の勇者、獣人族の英雄三人のパーティに共通して

ヴァイスという名前で銀髪紫眼の剣士が居た。

彼だけは地位を蹴って再び怪物退治の旅に赴いたと書かれている。

歴史の偶然とはいえ同名の剣士が開放に協力するとは

奇妙な一致であるとの著者の言葉が続いた。

学者達の説では怪物と戦う使命を帯びた剣士一族が居るとか

隠されているが大冷孔のアカウント争いが起きて伝説の剣士の名を借りて

事実の隠蔽を図り、後世の二人は実在しない

架空の人物であるという陰謀論のような説もあるが

三人の偉人が一様に彼が戻ってきた時の為に

地位の椅子を開けていた事から陰謀説は疑わしい。

最後にはもしこのような剣士一族が居るとすれば

地位の椅子は現在でも残されているため子孫が現存するとすれば

三つの国の地位の兼任する大貴族になるだろう。

ヴァイスを詐称するものも居たには居たが

各都に残されたバスターカードに何の反応も出なかった。

子孫であればバスターカードに記録されている魔力波長に反応があるはずである。

かの家に伝わっているはずの大冷孔の怪物から造られた武具も

持って居なかったので認められることはなかった。

未だヴァイスという名を継承する剣士一族の行方は不明である。

彼の一族の武名にあやかってヴァイスという名前をつけることが

一時期子供を持つ親の間で流行った、そんな事が書かれている。

「……ヴァイスのアニキも謎な人だよなあ」

この記述とこれまでの行動を見る限り

ヴァイスのアニキは胡散臭い偽者とは違う、多分本当の子孫だ。

彼は帰る為に大冷孔を開けていると言っていたが。

本当はどういう理由で怪物と戦い、冷孔を開けようとしているのだろうか。

彼の一族の使命とはなんなんだろう?

ミルクが教会を中から変える為に大冷孔を開けるというのは分かりやすい。

この世界だと大冷孔を開けることは非常に巨大な権力と権勢を得る事に繋がる。

問いかけてもヴァイスの性格上、答えてくれるとはあんまり思えないけど。

「もうこんな時間か……」

気が付けばかなり時間がたっている。

何冊も読みなれぬ本を読めば当然だ。

「此処に居たか……遅くなった」

ヴァイスのアニキがようやく話を終えたらしい。

とりあえず、資料を当たるのは今日はこの辺りになりそうだ。

・分かる人にだけわかればいいかな程度のチラ裏・

此処でのスライムはドラクエ基準の固体スライムでは無く

TRPGの液体スライムです。

魔獣の方は某神喰いゲーの黒ポンデライオンを土属性にした感じかも。

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