第四話・似合いの武器
俺はヴァイスに連れられて町の武器屋に入った。
「本当は各種武器の専門店でオーダーメイドしてもらうのが一番いいが……」
「買って貰えるだけで十分にありがたいよ」
店内に入ると様々な武器が置いてある。
そのどれもが一般的にイメージする武器より大きく、重そうだ。
持ち上げられるか疑問に思うほど大きなハンマーや両手剣。
長物は長い柄の先端に斧の付いたポールアックスや大薙刀に似た武器。
少しでも俺の今までやって来たことに近いのを探そうと
見つけた常識的なサイズの剣もなんだか違う。
まるで剣というよりは非常に頑丈そうなごついひし形の針や杭……
ヴァイスの使っている武器にちょっと似ている。
「人相手ならここまでのごつさも頑丈さも重さもいらねえな……
切れ味なんか二の次三の次……
折れないこと曲がらないことを大事にして
体重と加重を利用して相手に突き入れる武器だわこりゃ」
本当に人相手を想定していないことがはっきり伺える。
「お前はそれは止めておいた方がいい」
ヴァイスに言われちょっと傷つく。
「……お前が使うべきなのはこいつだな」
そうヴァイスが指を刺したのは馬鹿げたサイズの片刃の大剣だった。
先ず最初に頭をよぎったフレーズは斬馬刀。
本当にアニメかゲームに出てくるような武器だ。
剣の幅も厚みも尋常じゃない。
長さは一メートル強くらいか?
剣の横幅は思い切り広げた親指と人差し指の幅くらい。
厚みは一センチ近い金属の塊……
「……こんなん振り回したら直ぐ筋も手首も何もかも逝きそうだな」
脱臼や筋の断裂の故障の恐怖が頭をよぎる。
スポーツをやっている人なら理解できると思うが
体に付いた怪我の故障は癖になる。
ヴァイスが呆れたように呟く。
「……何の為に教会や治癒の魔法が有ると思ってるんだ」
「はい?」
多分俺は間抜けな顔をしていたんだと思う。
「ちょ、ちょちょちょっとまて、直るのかよ!?
体の奥に付いた傷や筋の断裂って後引くし基本的に完全にはなおらねえんだぞ!?」
「何処の常識かは知らないがそれは捨てた方がいいな。
病とか手足を怪物に喰われたり腐ってしまった場合ならともかく
治癒の魔法や霊薬を使えば怪我なら繋がっている限り大体直る。
前より強靭になるくらいだ」
「直んの?完全に?」
「怪物との戦いで千切れた手足を繋げてる所くらいみたこともある。
復調しなかったという話は聞かない。
戦いで死んだという話なら飽きるほど聞くが」
流石はファンタジーだぜ……
元の世界に帰ったらスポーツ医学とか医者関連がひっくり返るな……
でも故障を気にせず訓練やトレーニングが出来るなんて……
格闘家やスポーツ選手の夢が此処に有るなあ。
「そんなことより、その剣を持ってみろ」
「……こうか?」
腰に力を入れて剣を持ち上げようと踏ん張る。
何とか持ち上げることはギリギリできた。
ぐっ……想像していた以上に遥かに重てぇ……
一度筋トレのときにバーベルの重りを抜いた鉄の棒を持ったときよりも重い……
重量何キロあるんだよこれ……
確か竹刀の重さの最低は480グラムでそれ以下だと
試合の時の計量で弾かれたから……
しかしその竹刀でも長いこと振ってると重たく感じるんだぞ……
手がプルプルする、手首がイカレそうだ……
「ふむ……」
「はぁ……はぁ……剣ってさ……
同じ重さでも握りのフィット感や剣先か鍔元かどっちかに重芯があるかで
大分重さの感じ方が変わるよな」
「ああ、それはあるな……自分の手に馴染むかどうかは重要だ。
だがそれは自分の剣をオーダーメードして貰う時の楽しみに取っておけ。
先ずはその剣に慣れる事から始めないとな」
「振り回されてるようじゃお話にならないもんな……
「そうだ、振り回されるんじゃない、振り回すんだ。先ずはそこからだな。
だがその剣はお前に似合いだ」
言われて見ればなんとなくこのクソ重たい剣は他人の気がしない。
「とにかく豪快かつ大胆に、細かいことを考えず力の限り振り回し、その重さで叩き斬れ。
細かなテクニックや立ち回りは追々覚えていけば良い。
その剣ならば分厚い筋肉や硬い鱗や皮、甲羅を持つ怪物も当たれば只では済まん。
自在に使えるようになったとき初めてその重みが頼れる相棒となる」
今まで慣れ親しんだ剣を捨てる事に抵抗はあったが……
それでも、此処は異世界。
郷に入っては郷に従えという言葉もある。
「……やってやるさ、一日も早くな」
「分かっているとは思うが十分扱いには気をつけろよ。
まかり間違って落としたり人に当たったりしたら大事になる。
担いで持って歩くだけで十分修行になる」
確かにその通りだ。間違いなく体力が付くだろう。
気を張ってなきゃな……
「肩に担ぐで背負う為のベルトも要るな。
次はそれに合わせた鎧もいる。
こっちは時間を掛けて選ぶぞ。命に直結することだからな」
次は防具屋か……バスターへの道は遠そうだが弱音は言ってられねえな。




