第四十五話・魔法学院探訪
一夜明け、俺達は王都クルーゼの魔法学院に向かう事になった。
「悪いなつき合わせちゃって」
「何、気にするな」
「まあ、私も適当に何か読ませてもらうつもりだからねー。
他の系統の魔法書を読むのも刺激になっていいかもしれないし。
そういえばヴァイスさん、どうして魔法学院に顔が利くの?」
「何度か怪物の核や素材の回収依頼を受けたことがあってな……
それに幾らか出資や寄付も行った」
「そういう訳ね」
暫く王都の道を歩くと、しっかりした鉄棒を組み格子にした鉄門扉が見えてきた。
どうやら此処が魔法学院らしい。
「伝統と格式あるクルーゼ魔法学院にどのようなご用件で?」
門番に呼び止められたヴァイスは慣れた手つきで
バスターカードを取り出して門番に見せる。
俺達もそれに習う。
「書庫の閲覧許可を貰いたいのだが……
すまないが職員に取り次いでもらえないか?」
「バスターの方々ですね……照会して参りますので少々お待ちください」
待たされる事数分。
緑のローブを着たやせた中年男性が門の所まで走って来た。
どうやらこの学院の教員らしい。
彼は門扉越しに頭を下げた。
「お、お待たせしました……
ヴァイス様には何時もお世話になっております。
本日は書庫の閲覧とのことでしたが……そちらのお二人は?」
「パーティの連れだ。調べ物をしたいらしくてな……
二人も一緒に学院と書庫に入る許可を頂きたいのだが……」
「一般書庫の方なら問題ないですが禁書庫や上級魔法書庫となると少々……」
「ああ、一般書庫の方だけで大丈夫だ」
「でしたら話は早いですな。
それと……ヴァイス様のお時間に余裕はおありですか?」
「特に差し迫った予定は無いが……」
「学院長が貴方に是非お会いしたいとの言伝を承っているのですが……」
「俺にか……ふむ……少々時間が掛かりそうだ。
先に二人は書庫の方に行っていてくれないか?」
「いいぜ」
「わかった、私も構わないわよ」
話がまとまったようだ。
「では彼等に腕輪を」
緑ローブの教員に言われた門番から俺達に簡素な緑の腕輪が渡された。
「これは?」
そう尋ねると門番の人が答えてくれる。
「学院の通行章です。
立ち入り禁止の場所以外はこれで入れるようになります。
客員用の物なのでお帰りになる際は返却をお忘れなきよう」
「なるほど、わかりました」
鉄の門扉が横にスライドして開き、俺達を通してくれる。
刈り込まれた芝生生い茂る中庭は学校の校庭のくらい広い。
そして蒼いローブの生徒らしき魔法使いの卵達が沢山居た。
左側の方では講師らしき魔法使いが大きな白い石版に対して
術式の説明らしき文章を書き綴っている。
様々な種族の少年少女が青空の下、それを自前の羊皮紙に向かってペンを走らせる。
中庭の左側の方では魔法の実習を行っているようだ。
周囲に被害が行かないように結界が張られたと思しき場所に
大きな怪物が何体も居てちょっとびっくりした。
その中の一体に見覚えがある……マリウスか?
一列に等間隔に並べられて一切動かない所を見ると……
どうやら甲殻に詰め物をしたり鉄芯を通した剥製を練習用ターゲットにしているようだ。
なるほど、魔法耐性の高い怪物の甲殻なら練習にはうってつけだろう。
蒼いローブの魔法学院生徒はその標的に向かって順番に
詠唱をしたり身振り手振りをしたり杖を向けたりして
炎、氷、雷、風などの様々な属性の攻撃魔法を練習している。
まだまだ魔力の練りが甘いのか大概の場合
甲殻の表面で霧散して小揺るぎもしないが……
中庭を通り過ぎ、俺達は学院の本棟に入った。
「一般魔法書庫は学院正面から
右の通路を通って階段を上り二階突き当たりになります。
お探しの本の事については司書にお尋ねください」
「わかりました、ありがとうございます」
「ヴァイス様はこちらの学園長室へ……」
「というわけだ……また後でな……」
「またねー」
学院長室へ向かうヴァイスと教員と一旦別れて
俺とミルクは魔法書庫へ向かった。
そういえば此処の学院長がヴァイスに用事って言ってたけど
一体なんだろうなあ。
お偉いさんの話とか長くなりそうだし……
まあ、帰ってきたらヴァイスに聞けばいいか。
さて、上手く転移関連の書物が見つかるといいんだが……




