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第四十二話・鍛冶精錬と帰路

クラフトに剣を作ってもらえる事になった俺達は

金の羊毛亭からクラフト武具店に再び移動していた。

店内のさらに奥に通され、鍛冶の工房に辿り着く。

「あーつーいー……ごめん、あたしパス……

悪いけど店のほうで待ってるねー」

工房に入った瞬間ミルクはそういって店のほうに戻ってしまった。

鍛冶の工房というものに初めて足を踏み入れたが

燃え盛る炉に赤々と照らされて物凄く暑い。

外の太陽も唯でさえ熱いと言うのに。

「ミルクがギブするのも無理ねえか……」

「……」

ヴァイスは顔色一つ変えず鍛冶場の入り口付近で佇んでいる。

「おい、はじめるぞ坊主」

「あ、はい!」

剣を作る為にクラフトの様々な指示を聞くこととなった。

彼は先ず俺の腕の長さと手の大きさを目盛の付いた紐で何度も計っては

一枚の羊皮紙に記録した。

「腕の大きさはこんなもんか……

次は一通り型と技を見せてみろ」

現在使っている剣で一通りの型をやって見せるよう言われた。

「突く細剣長剣、折る大剣の使い方とも

砕く鈍器の使い方とも違うな……

斬る事が入った独特な型だな……おい坊主」

クラフトは一塊の粘土を俺に渡した。

「グリップの型を取るからそいつを軽く握れ」

言われたとおりにして渡す。

随分本格的だ。

型を見たり腕や手の長さを測るのはバランス調整。

グリップの重要さは竹刀でも細かい違いがあるのでよく分かる。

「ちょっと今使っている剣を見せてみろ」

俺は背負っていた鞘と剣を渡した。

「ふむ……鞘は最も普及している機工式だな」

武具を眼にしている時のクラフトは真剣そのものだ。

俺の今使っている大剣の鞘の構造は二枚貝

形はしいて言うなら爪きりによく似ている。

大剣は日本刀のように引き抜こうとすればつっかえる。

背負っているのならなお更だ。

鞘の横側から引き払うよう抜き放つしかないのだ。

鞘の左右は抜き払うのにあわせて発条仕掛けで開閉する覆いが付いている。

使用しない時はカチリと嵌るまできちんと納刀して留め金をかける必要がある。

柄を鞘に固定すればひとりでに鞘奔ることは無い。

剣が巨大で重い分扱いを間違えれば大怪我することは分かりきっているので

納刀抜刀時には十分注意を払う必要がある。

その辺りを修行時に叩き込まれたのをふと思い出した。

「材質はマリウスの剣腕……重心は手元調子か。

手堅いが余り面白みは無いな」

持った時剣の重心が先端に来るか手元に来るか……

これはぶっちゃけると好みだ。

人によって違うし使い手の数だけ正解がある。

手元に重心が有る剣は手元調子と呼ばれ

振りやすく操作性や技の正確性に優れる。

剣先に重心が有るものは切先調子と呼ばれ

速度が乗りやすく技も豪快になるが

手元調子とは反対に正確性や操作性が犠牲になり

剣先が流れたりぶれたりしやすくなる。

俺の好みは先端に重心がある切先調子だ。

多少じゃじゃ馬でも当たればデカい方が好きだ。

「俺は本当は切先調子が好みなんすけどね」

「そりゃ量産品じゃ細かい重心の調整までは利かないだろうよ

沢山の怪物の殻を叩き割って来たようだな」

「随分しごかれましたから」

「きっちり手入れはされているようだが

使い方がまだまだ荒いな……傷みや細かい刃こぼれが目立ちやがる」

使い方が荒いかあ……

ううむ、言われてしまった……

もっと精進しないと駄目だな。

「マリウスの大剣は最初に大剣に触れるとするなら悪い品物じゃねえが……

今の坊主くらいの腕だとそろそろ不足を感じてくる頃合だ」

「なんとなく思い当たる節が……」

「そこからが俺の腕の見せ所だな。

ちゃんと坊主の手に馴染む良い一品を作ってやる。

ああ、そうだ、ちょっといいか?」

一体なんだろう?

「坊主が今使ってるマリウスの大剣、素材をバラして使いたいんだよ。

こいつの魔法耐性は中々魅力だしな……

ドミンの大顎と組み合わせればさらに魔法耐性を高められそうなんだ。

加工賃をちょっとおまけしてやるから引き取らせちゃくれねえかい?」

「あ、いいっすよ」

ただ売ったり処分するには少し忍びないと思っていたのだ。

苦楽と修行を共にした剣が新しい剣の素材となるのなら否は無い。

「よっしゃ、決まりだな……ああ、代わりの剣は貸してやるから心配するな。

この仕事は気合を入れてやりたいからな……

最低でも一週間、出来次第で長くて二週間は掛かりきりになる。

三日後の午前中に微調整をやるからまた来い」

「わかりました」

二週間か……長いなあ。

その間バスター活動は出来ないってことだろ?

どうしてようかなあ……

そうだ、冷穴の転移について詳しく調べなくちゃならない。

最近バスター活動や修行にばかり熱心で

帰る手段を探る事を失念していた。

帰るための鍵は冷孔転移にある。

実際に二度冷孔転移をしてきた今なら分かるが

こういう離れた場所に一瞬で転移できる技術があるのなら

それを詳しく調べたり理解してアレンジすれば元の日本に帰れるはずだ。

こればかりは魔法が苦手とか言っていられない。

街中の冷孔は転移先が決まっているし

それに日本まで転移するとなるとどのくらい魔力が必要か検討が付かないのも不味い。

遠すぎて大量に魔力が要るようなら

どの道大冷穴はあけなくちゃならない羽目になりそうだが……

今居る此処は王都だしミルクやヴァイスなら

そういう資料の有る場所くらい把握しているだろう。

いやまて、資料を漁ろうにもその前にこの世界の文字が分からないと不味いか?

となると俺はミルクに文字を習う方が先決だな……約束もした事だし。

ああ、でも二人がバスター活動をやりたいって言ったらどうしようかなあ……

俺はそんな事をグルグルと考えていた。

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