第三十八話・クラフト武具店
俺達は王都クルーゼのクラフト武具店で
良さそうな防具や武具が無いかを見ていた。
「そういえばミルク、そんな神官服だけでよく戦えるなあ……」
ふとミルクの方を眺めて気になった事を尋ねてみた。
ミルクが着ているのは七芒星の紋章の入った
白くてゆったりとしたローブだけで
鎧の類は身につけていない。
「あー、これ?でもまこの神官服一応スペルクロスだしねー」
そういってミルクは服の袖をひらひらさせた。
「スペルクロス?」
「防御結界や守護の魔法を刺繍した服の事よ。
刻む魔法と核の種類や質によっては
ハンパな皮鎧や金属鎧よりも防御効果は高いわ」
「へぇ……」
「ほら、ボタンや留め具が分割した核になってるでしょ?」
なるほど、所々の飾りやボタンに使われている宝石は
カッティングした怪物の核だったのか……
「飛ぶのに邪魔になるからあまり重い防具をつけるわけにも行かないし」
確かに金属鎧を纏ってしまえば重すぎて飛ぶのに邪魔になるだろう。
「いいなぁ……この軽鎧
太陽の熱を吸ってクソ暑くなるんだよなあ……」
「まあスペルクロスにも欠点はあるんだけどね」
「欠点?」
「値段が嵩むのよ……
これ斬撃、刺突、衝撃に対する『対物』の結界のみを付加した
神官服仕立てのスペルクロスで一番普及してる奴だけど……
一着で金貨三十枚が吹っ飛ぶわね。
素材を上等にして付加されてる魔法の質と量が増えれば増えるほど
物凄い勢いで値段が上がっていくの」
「高けぇ……今俺がつけてる大剣と防具纏めて買えちゃうじゃん」
「しかも怪物の攻撃をある程度受けてスペルクロスの魔力が切れれば
只の布とガラス玉に戻っちゃうしね。
そうなると街でリチャージして貰わないと……それにもお金かかるし。
魔道具や魔法武器防具全般に言えることだけど金食い虫ね」
「そう何もかも上手くいかねえわなあ」
「あ、でもヴァイスさんと雪平が前衛頑張ってくれてるお陰で
今のところリチャージに行く必要はなさそうねー。
お陰で結構懐が暖まってありがたいわ。
その辺感謝してるわよ?」
そういってミルクは微笑んだ。
感謝されて悪い気はしない。
ミルクのスペルクロスの残存魔力が減っているという事は
後衛に攻撃が届いている……
つまり彼女をちゃんと守れていないことになる。
前衛の役割は果たせている用で安心した。
「そりゃよかったぜ」
「……雪平」
防具や武具を見ていたヴァイスが戻ってきて俺を呼び止めた。
「ん?どしたんだアニキ?」
「ひとまず、此処に来た目的を果たしに行くぞ」
「ああ、そういえば此処に武器を作りに来たんだっけ……」
俺とヴァイスはカウンターまで移動して
武器の作成の話を店番らしき人間族のお姉さんに話したのだが……
「すみません、武器の作成が出来るお父さんが出払っているんです……
なので今すぐというわけには……」
そう言ってポニーテールのお姉さんは頭を下げた。
「ありゃ……外出中かよ」
どうやら武器を作れる人が居ないらしい。
「ふむ……では何時戻る?」
「それもちょっと……随分気難しい人なので……」
「店の様相こそ変われど随分昔にこんな事があった気がするぞ……」
そう言ってヴァイスは手で額を押さえて天を仰いだ。
「はい……?ええと……お客さん初めてですよね?
何時かうちの店に来たことがありましたか?」
「ん、ああ、いや……何でもない。
少し他の武器屋の事と混同しただけだ。
こちらの話だ、気にしないでくれ」
「はあ……」
不思議そうに尋ねる店員にヴァイスはそう答えた。
「……店主が居ないので有れば仕方が無い。
もう少し店内の品を見せてもらう事にしよう」
そうヴァイスは俺達に促した。
「まあ、居ないんじゃ仕方ないよな」
でもアニキが何か勘違いすることなんて珍しいなあ。




