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第三十一話・魔法修行・中編

今俺は魔法を習得すべく修行をしている。

最初はヴァイスの指示通り詠唱し魔法を使ってみようとしたのだが……

炎の弾が掌から出るはずなのに、出たのは煙だけ。

しかもそれだけでヘトヘトに疲れ果ててしまった。

ヴァイスが言うには、魔力と生命力の区別が出来ていないらしい。

そのため、今俺は地面に座って瞑想の練習をしているのだが……

……動かないのは苦手だ。

心が落ち着きすぎると途端に眠たくなってしまうのだ。

姿勢を正して座禅を組み、手を組んで眼を閉じる。

その姿勢をキープしながら、魔力と生命力の区別を付けようと集中する。

……一発で区別が付くような天才なら俺はこんなことはしていない。

生憎と俺は凡人だ。

座っていれば皮膚が痒くなったり雑多な体の感覚の方が気になったり……

まるで周囲が騒音と雑音だらけになってしまったようだ。

活気ある町の喧騒や人の足音、生活音。

足の上を通り過ぎる虫が這う感覚。

さえずる小鳥の声。

魔法の練習の為に美しい旋律を唄うミルクの歌。

気になるもの、注意を引くものに加えて

普段気にも留めていないものが一気に世界に出現したようだ。

魔力と生命力を区別しようとする度に

そういう雑念が沸き起こって必ず俺の注意をそらすのだ。

……腹が減ってきた……いかん、集中だ集中……

こんな雑念だらけだと魔力と生命力の区別なんか付かない。

心を無にするのだ……

「うう~む……」

今度は心を静めようとする努力の方に気が行ってしまう……

かといって気を抜けば只それは弛緩しているだけになる。

眠たさや怠けたい気持ちやダルい気持ちに振り回されているのに過ぎない。

それは単に我を忘れているだけだ。

無我の境地、超集中力の世界とは程遠い。

瞑想向いてないのかなあ……

ううん、体を限界まで動かしたほうが

まだ余計な考えが抜け落ちて良いような……

「お!そうだ……」

そういう体を限界まで動かした時の感覚……

疲労を突き抜けて、集中の世界に入った時の事を思い出そう……

それを只座りながらやるだけだ。

そっちの方が俺には合っているはずだ。

思い出せ、俺……

そういう試みを始めて何時間経っただろうか……

やがて、周囲の雑音が薄れていく。

体を温める日差し……腕をなでる風……

街の喧騒もミルクの歌も傍に静かに立っているヴァイスの気配も……

だんだんと薄くなっていく。

眠りに落ちる前の感覚とは違う……

《……夢……教え……》

「……!!」

まただ、以前冷孔の前で倒れた時に見た真っ黒な夢のなかで聞いた声。

ジジッ……と言う電気のようなノイズが入ってはっきりと聞き取れないが……

この低く響く声には覚えがある。

《……生命……波……》

そう、冷たい気配と共に……

「んんっ!!」

俺は首を振った。

いかんいかん……眠りかけていたのか……?

眼を擦り何気なく目を開けると……

世界の様相の微かな変化に気が付いた。

「……そうか!!」

自分なりに魔力と生命力を区別する方法が見えた気がする。

魔力は……なんと言うか、冷たいのだ。

自分の語彙と感覚で無理に言葉にするとするならだけど……

生命力は反対に熱い。

滾る血潮、脈打つ胸……生命あるものには熱がある。

この感覚が正しいかどうかは分からないが……

俺の自分なりの区別だとそうなのだ。

魔力、生命力共にあやふやで形が無く……

まるで薄い霧や水に浸かっているような……

それがだんだんと全ての物質にしみこんでいくような感覚を覚える。

かといって生命力と魔力は完全に相反する存在なわけではない。

たとえるなら……ぬるま湯の状態。

熱湯と冷水を混ぜたらぬるま湯になるように……

熱い生命力と冷たい魔力が混在している状態が自然なのだ。

俺は何とか世界に偏在し、混在している魔力と生命力を選り分けようとする。

形の無いものだから手で動かす訳には行かない。

何とか意思と気合の力を総動員して冷たい粒と熱い粒を分ける……

そんなイメージを空気と空間、そして俺の体内に叩きつけて……

「……ふむ、何か掴んだか雪平」

傍らに黙って立っていたヴァイスが静かに呟いた。

「え?」

「先ほどと比べて魔力と生命力、そして精神力の区別が出来ている」

「な……なんとか……」

どうやらこれで正解らしい。

「よし、もう一度やってみろ」

「おう!!」

立ち上がって瞑想を止め、改めて訓練場の大岩に向かって向き直る。

まだ恥ずかしいが淀まず詠唱を唱える。

意思と気合を叩きつけて熱い生命の力と、冷たい魔力を

世界と自分から選り分ける……

「……熱き炎よ、我が内外に満ちる魔力よ集いて敵を討つ矢と成せ……炎弾!!」

冷たい魔力のうねりが属性を帯びて物理的現象に変化する……

手からライターの火くらいのちっちゃい火玉がポンと出て、地面に落ちた。

今度は疲労は殆ど無いに等しい。

「……ちょっとは進歩した……かな?」

「……魔力と生命力と精神力の区別は出来ているが……

きちんと練れている魔力がまだまだ少ないな……」

「たは~……まだまだ道のりは厳しそうだぜ……」

やはり、一筋縄では行きそうに無い。

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